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シャーマン(巫者)が超越霊の憑依(ひようい)をうけて自我喪失の形で発する言葉,またはそうした呪儀を行う宗教職能者をさす。日本のシャーマンは,神社に所属する巫女(みこ)のように神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依(神がかり)によって神託を述べる神社巫女と,民間にあって神仏の憑霊によるかあるいは死霊(ホトケ)の憑依をうけ,その意向を宣告する口寄せ巫女の2種に類別される。かつては前者の活躍が目だったが,神道教説の体系化にともない神社祭祀から巫祝的要素を排除する傾向がたかまるにつれ,神社巫女の形骸化がすすみ,託宣の機能は消滅した。ただわずかに大元神楽の託太夫や,葉山信仰のノリワラや憑(よ)り人などに面影をのこすのみである。これに対し死霊の憑依する民間巫女は,なお活発に機能し,地域住民の信仰的要求にこたえている。それらはいたこ,イチコ,アズサ(梓巫女),アガタ,オカミン,オカミサマ,オナカマ,ワカ,マンチ,ホウニンなど地域ごとに名称を異にしているが,もっとも盛んなのは青森県を中心に本州北東部に分布するイタコと,沖縄を中心とする南島にみるゆたである。口寄せには神霊ののりうつるカミオロシと死霊の憑依するホトケオロシがあり,前者を神口(かみくち),後者を死口(しにくち)という。ほかに生死不明の霊魂の憑く生口(いきくち)もまれにみられるが,もっとも多くは死口寄せである。東北地方のイタコは,死後100日以内の死者を新ボトケといい,それ以前の死霊を古ボトケと称し,両者の口寄せ方式に相違がみられる。新口寄せでは死霊がイタコに乗りうつり,遺族とか親戚知友の一人一人に語りかける。これに対し古口寄せでは依頼者が自分の家や近親の死者を次々と呼び出し,それとの対話をこころみる。もっとも深刻なのは新ボトケの口寄せで,多くは葬式の当夜,初七日,五七日,四十九日で,1回のみではおさまらず2回にわたって行われることもあり,それを〈二度の梓〉というのは,かつて梓弓を使って神がかりしたころの遺風を示している。幼逝者,事故死者など怨念を現世にのこしたまま急死したものに対しては,特別に手のこんだナナクラオロシとか〈舟っこ流し〉〈ハナ寄せ〉の方式をとることがある。沖縄などのゆたは新古の区別がないが死霊の口寄せのマブイアカシに対し生霊を招き寄せるマブイグミの巫儀がみられる。
→シャマニズム →巫女 →尸童(よりまし)
執筆者:桜井 徳太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
巫女(みこ)が、人々の求めに応じて神霊の尸童(よりまし)となって神意をことばで伝えること。あるいはこの行為を行う巫女のこと。生霊を寄せるのを生口(いきくち)、死霊を呼び出すものを死口(しにくち)、吉凶禍福を判断し、示すものを神口(かみくち)といい、鼓・琴・弓あるいは数珠(じゅず)などを手にして、音を鳴らしながら神霊の降霊を待つ。生口、死口、神口によって多少の変化はあるが、問口(といくち)といって、依頼者が問いかけ、それに対して口寄せさせて答えるものと、一人称で語りかけるものとがある。
口寄せをする者を東北地方ではイタコ、オカミン、関東地方では梓(あずさ)ミコ、南西諸島ではユタ、カンカカリヤーなどとよんでいる。イタコのイタもユタと同じく、「言う」という行為を意味することばで、口寄せの行動を表すものである。東北地方では盲目の女性が多いが、一般には盲目とは限らない。一定の修行をし、神憑(つ)けが行われ、特定の神仏を守護神としてもっている者と、突然神がかり状態になって憑霊(ひょうれい)する者とがいる。東北地方では春秋の彼岸、盆などに口寄せを行って、死者を祀(まつ)ることが多いが、沖縄のユタなどは、日を定めず依頼することが多い。口寄せとはいわないが、神口と同じ行為が各地の神社祭儀にみられることは、憑霊現象として注意してゆかねばならぬ問題である。たとえば福島市松川町の羽山神の神託などはその一例である。本来は日を定めて神意を伺うことが必要であり、口寄せはその一形態といえよう。
[鎌田久子]
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