(読み)カンナギ

デジタル大辞泉 「巫」の意味・読み・例文・類語

かん‐なぎ【×巫/×覡】

《「神和かんなぎ」の意。「かむなぎ」とも表記》神に仕えて、神楽を奏して神意を慰め、また、神降ろしなどをする人。男を「おかんなぎ(覡)」、女を「めかんなぎ(巫)」という。令制では神祇官の所管に五人が置かれ、古代社会の司祭者の遺風を存した。こうなぎ。みこ。いちこ
[類語]霊媒占い師易者八卦見手相見陰陽師巫女みこ巫女ふじょ市子いたこゆた口寄せシャーマン

ふ【巫】[漢字項目]

人名用漢字] [音]フ(慣) [訓]かんなぎ
神霊と交わる呪術師。シャーマン。みこ。「巫覡ふげき巫蠱ふこ巫祝巫術巫女ふじょ
[難読]巫山戯ふざけ巫女みこ

きね【×巫/巫覡】

神に仕える人。神官や巫女みこ
「あしひきの山のさかきはときはなる影に栄ゆる神の―かな」〈拾遺・神楽歌〉

こう‐なぎ〔かう‐〕【×巫/×覡】

かんなぎ」の音変化。

かみ‐なぎ【×巫/×覡】

かんなぎ」に同じ。

かむ‐なぎ【×巫/×覡】

かんなぎ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「巫」の意味・読み・例文・類語

かん‐なぎ【巫・覡】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「かんなき」。「かむなぎ」とも表記 ) 神に仕え、神楽(かぐら)を奏して神意をなぐさめたり、神おろしをしたりする人。通常は、女性がなる。みこ。こうなぎ。かみなぎ。神子(かんこ)。かん。
    1. 巫〈七十一番職人歌合〉
      巫〈七十一番職人歌合〉
    2. [初出の実例]「巫覡(カムナキ)等遂に神語(こと)に詐託(あさむ)きて曰く」(出典:日本書紀(720)皇極三年七月(図書寮本訓))
    3. 「陰陽師、かむなぎよびて、恋せじといふ祓(はらへ)の具してなむいきける」(出典:伊勢物語(10C前)六五)

かみ‐なぎ【巫】

  1. 〘 名詞 〙かんなぎ(巫)
    1. [初出の実例]「卜者(カミナギ)に託(くる)ひて言はく『其の産める二つの石は、是れ我が子なり』といふ〈真福寺本訓釈 卜者 可三那支〉」(出典:日本霊異記(810‐824)下)

こう‐なぎかう‥【巫・覡】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かんなぎ(巫)」の変化した語 ) 神に仕え、神楽を奏して、神意をうかがったり、神おろしをしたりする人。
    1. [初出の実例]「かうなぎをば、御車の口の方に乗せたり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)後悔の大将)

かん【巫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かむ」と表記 ) =かんなぎ(巫)
    1. [初出の実例]「くら人しそくをさして、御かむあひそひてこれをみちびく」(出典:東宮年中行事(12C後か)六月)

ふ【巫】

  1. 〘 名詞 〙 みこ。かんなぎ。
    1. [初出の実例]「儒仏老荘巫書、皆此例也」(出典:自然真営道(1753頃か)大序)
    2. [その他の文献]〔礼記‐礼運〕

かむ‐なぎ【巫】

  1. 〘 名詞 〙かんなぎ(巫)

かむ【巫】

  1. 〘 名詞 〙かん(巫)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「巫」の読み・字形・画数・意味


7画

[字音]
[字訓] みこ・かんなぎ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[その他]

[字形] 会意
工+両手(左右の手)。工は神につかえるときに操る呪具。神をもとめることを左右といい、左は工を操る形。左右を重ねた形は(尋)、神の所在を尋ねる意。神隠れの隠の旧字は隱、呪具の工を以て神の形を隠した。左・・隱は、みな工の形を含む。その工を左右の手で奉ずる形は巫、神につかえ、神意をたしかめる者をいう。〔説文〕五上に「するなり。女の能く無形に事(つか)へ、を以てなり。人の兩(りゃうしう)もてふ形に象る。工とを同じうす。古(いにしへ)巫咸、初めて巫と作(な)る」といい、無・(舞)との声の関係を以て説く。春秋期の楚の巫臣、字(あざな)は子靈(霊)といい、靈は雨乞いする巫の意。卜文・金文の巫の字形に作り、工を縦横に組み合わせた形。卜辞にを祀ることを卜する例があり、巫祖を祀るものであろう。〔山海経、大荒西経〕に十巫の名がみえ、巫はみなその伝統を伝えた。のち女巫を巫といい、男巫を覡(げき)という。

[訓義]
1. みこ、かんなぎ、女巫。
2. 巫医、シャーマン。
3. 誣(ふ)と通じ、みだりがわしい。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕巫 加无奈(かむなぎ)〔和名抄〕巫 加无奈(かむなぎ)〔名義抄〕巫 カミナリ(ギ)・タカシ・ヲムナカムナギ

[部首]
〔説文〕に覡をその部に属し、〔玉〕になお靈など二字を加える。覡はまた(撃)に作る。

[声系]
〔説文〕に巫声として誣を収める。〔説文〕三上に「加なり」とあり、加言・架言の意。〔説文通訓定声〕に「憑(ひようきよ)架、以て人を謗(そし)るなり」という。

[語系]
巫・無・miuaは同声。無はの初文。無は袖に呪飾をつけて舞う人の正面形。下に両足(舛(せん))を加えてとなる。はもと雲舞、雨乞いのときに行われた。

[熟語]
巫医・巫嫗・巫雲・巫・巫媼巫鬼巫覡巫蠱・巫鼓・巫降・巫史・巫師巫児・巫呪・巫祝・巫術・巫女・巫婆・巫風巫歩
[下接語]
医巫・傴巫・巫・覡巫・史巫・女巫・神巫・鍼巫・僧巫・俗巫・村巫・暴巫・老巫

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「巫」の意味・わかりやすい解説


かんなぎ

覡とも書く。神祭りに仕え、あるいは託宣を受け、また神と人とのなかをとりもつ人をいう。「かんなぎ」の語義は、「神和(なぎ)の義也(なり)。神慮をなごむる意也」(『和訓栞(わくんのしおり)』)という。また、女を巫(ふ)といい、男を覡(げき)という(『伊呂波(いろは)字類抄』)。わが国では古くから女の巫が多く神祭りに仕えた。平安時代の『延喜式(えんぎしき)』巻9によると、「神祇(じんぎ)官の西院に坐(ま)す御巫(みかんなぎ)等の祭る神二十三座」と記されており、それらは御巫、座摩(いがすり)の巫、御門(みかど)の巫、生嶋(いくしま)の巫などが祭るとある。一方、男の覡は少なかったようである。

[沼部春友]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「巫」の解説

漢字の一つ。読みは「かんなぎ、フ」。心霊と交わる呪術師(シャーマン)や神に仕える人(神官や巫女)などのことを表す。三重県松阪市の夫婦が「巫」の字を使った子供の出生届を市が不受理にしたことに不服を申し立て、2014年8月、出世届けを受理するよう命じた司法判断が確定した。それを受け、法務省では15年1月7日付で戸籍法施行規則を改正し、「巫」が人名用語として認められることとなった。今回の改正により、人名に使える漢字は計2998字となった。

(2015-1-8)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巫」の意味・わかりやすい解説



wu

中国のシャーマン。日本の巫女 (みこ) に相当する。舞を舞って神をおろし,祈って神意をうかがった。中国では先秦時代からその存在が知られ,漢代になると,女性で神がかりになる者を巫と呼び,男性のそれを覡 (げき) と呼ぶようになった。この神おろし,神がかりの行事は中国道教史においてかなり大きな役割を果している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【シャマニズム】より

…ほかに〈沙門〉を意味するサンスクリットの〈シュラマナśramana〉やパーリ語の〈サマナsamana〉からの借用語であるとか,ペルシア語の〈シェメンshemen〉(偶像,祠)からの転化語であるとする説もある。中国では〈巫(ふ)〉(女性)および〈覡(げき)〉(男性)の語を用いる。
[特質]
 シャーマンが他の呪術・宗教的職能者と異なる点は,超自然的存在とのかかわり方における〈直接性〉にある。…

【中国文学】より


【古代(西周および春秋戦国時代――前11~前3世紀末)】
 中国文学の源流は二つある。一つは史官の文学,他は巫(ふ)の文学である。文字(漢字)が作り出されたのはごく古く,前20世紀以前だと思われる。…

※「巫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android