東北地方の津軽・南部地域で活躍する巫女の名称。多くは盲目の女性で,初潮前の少女期に師匠を決め弟子入りする。修業期間には,経文,大祓の祈禱,筮竹(ぜいちく)による占いなどを習得し,一種の神婚であるカミ憑ケの儀式により自らの守護神・仏を感得し,独立する。イタコはホトケ(死霊)の口寄せをすることに特徴があり,下北半島恐山,津軽半島の五所川原市の旧金木町川倉の地蔵盆や地蔵講はイタコマチと称されて多くのイタコが集まる。また,春秋にはオシラアソバセと称し,村の旧家筋にまつられているオシラサマを両手に持ち,オシラ祭文を語りながら舞わせる。それが終わると村占い,各家別の占いが行われる。各家でまつる氏神も春秋2度の祭りの日にイタコを招きカミオロシを行う。病気祈禱ではその原因になっている霊の種類を占い,オッパライと称してそれを祓うことが行われる。猫・蛇・馬などが複雑に描かれた津軽地方独特の小絵馬はこのためのもので,イタコ絵馬と称されている。
→おしら信仰
執筆者:佐野 賢治
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東北地方北部に広く分布する口寄せを業とする巫女(みこ)。盲目の女性が多い。一定の修行をして、神憑(かみつ)けが行われ、特定の神仏を守護神としてもっている。家々の求めに応じて、春の彼岸、盆に死者供養(くよう)の口寄せを行ったり、家の神のオシラサマをアソバセルといって、祭文(さいもん)を語ってオシラサマを祀(まつ)ったりする。いまも下北半島恐山(おそれざん)の地蔵講や、津軽半島金木(かなぎ)町川倉の地蔵盆には、近在のいたこが集まり、数珠(じゅず)を手にして口寄せを行っている。語義は、語るという行動から、アイヌ語のイタク(語る)という動詞に東北地方の愛称コが付されたものという説、新仏の戒名を板に書き付けて祀るので板コだという説など諸説がある。今日では天台系の寺で養成しているところもある。
[鎌田久子]
『「巫女考」(『定本柳田国男集9』所収・1962・筑摩書房)』
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…村の草分け的な旧家にまつられていることが多いが,イタコなどの宗教者が所有していることもある。オシラという語源やその神格がなんであるか明らかでないが,中世末にすでにまつられていたことが確認されている。祭祀集団は,家ごと,同族的集団,地縁的集団,信者(講)集団などに分類できるが,古態は家屋敷・同族をまつり手とする神であったと考えられる。…
…シャーマン(巫者)が超越霊の憑依(ひようい)をうけて自我喪失の形で発する言葉,またはそうした呪儀を行う宗教職能者をさす。日本のシャーマンは,神社に所属する巫女(みこ)のように神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依(神がかり)によって神託を述べる神社巫女と,民間にあって神仏の憑霊によるかあるいは死霊(ホトケ)の憑依をうけ,その意向を宣告する口寄せ巫女の2種に類別される。かつては前者の活躍がめだったが,神道教説の体系化にともない神社祭祀から巫祝的要素を排除する傾向がたかまるにつれ,神社巫女の形骸化がすすみ,託宣の機能は消滅した。…
…シャマニズムとは通常,トランスのような異常心理状態において超自然的存在(神霊,精霊,死霊など)と直接に接触・交流し,この間に予言,託宣,卜占,治病,祭儀などを行う人物(シャーマン)を中心とする呪術・宗教的形態である。〈シャーマン〉の語はツングース系諸族において呪術師を意味する〈サマンšaman,saman〉に由来するとする説が有力である。ほかに〈沙門〉を意味するサンスクリットの〈シュラマナśramana〉やパーリ語の〈サマナsamana〉からの借用語であるとか,ペルシア語の〈シェメンshemen〉(偶像,祠)からの転化語であるとする説もある。…
…シャーマンの役割は,地域により,またシャーマンの型によって種々の差異がみられるが,卜占や予言などのほかに悪霊に憑(つ)かれた病人をなおしたり,死霊との交通による死者託宣をも行う。 古代ギリシアでは,公的生活も,私的生活も,重要な決定はすべて神託中心に営まれ,特にデルフォイのアポロンの神託は,ソクラテスの哲学的活動の源泉となり,彼自身の思索と行動に密接な関係をもっていたことで知られている。古代イスラエルの預言者たちも,神の言葉をすべて一人称の言葉で語るシャーマンであり,神の〈私〉と預言者の〈私〉とは,彼の語る言葉のなかで切り離しがたく結合している。…
…日本の花木を代表するツバキは,ツバキ科の中でも観賞植物として最も広く利用され,親しまれている。常緑高木で,冬から春にかけて開花する。中国名は山茶,海石榴。 木は高さ18m,太さ(直径)50cmに達するものもあって,長命である。枝は無毛。葉は楕円形または長楕円形,長さ6~12cm,幅3~7cmで,縁に上向きの細かい鋸歯があり,表面は緑色で光沢がある。花は枝先の芽の苞葉腋(ほうようえき)に普通1個つき,柄がない。…
…神霊・死霊をはじめもろもろの精霊の憑依をうけて,その意思を人々に託宣する呪術宗教者。男女を区別して前者を覡,後者を巫と記す。《和名抄》に巫を加牟奈岐(かむなき),覡を乎乃古加牟奈岐(おのこかむなき)としているところをみると本来,巫女がもとであったことがわかる。各地域で活躍する巫女にはそれぞれ地域ごとの呼称が非常に多い。また語源についても神の子を意味する〈みかんこ〉の転としたり,貴人の子を敬って称する語としたり,神と人との間に介在して神意を人々に伝達する役がらから神そのものとみられたとする説などあって定かでない。…
※「いたこ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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