改訂新版 世界大百科事典 「エクイテス」の意味・わかりやすい解説
エクイテス
equites[ラテン]
古代ローマで騎兵,また騎士身分の人をいう。equesの複数形。共和政期の制度では特定額以上の財産を持つ市民(おもに貴族)を騎兵,他の市民を歩兵に登録して軍団を編成した。騎兵は歩兵の上位を占め,民会では優先投票権を得た。前4~前3世紀になると,軍団騎兵の戦力は低下し,平民の騎兵で増強しても実効は得られなかったため,実戦には同盟者の騎兵をあて,制度上の特権と地位を保った。この名目的騎兵として新興の富裕市民,特に海外交易や徴税請負で巨富を得た平民が登録され,前2世紀,元老院議員身分の形成を機に騎士身分が成立した。政権から除外された大資産家の騎士たちはグラックス兄弟の改革以降,元老院支配の対抗勢力をなし,スラの弾圧を被る。帝政期には元首が富裕市民を騎士に登録した。騎士身分は軍団将校,各種の財務管理職から穀物供給長官,エジプト総督,親衛隊長まで元首所管の職を占めて元首権力を支え,やがて元老院議員身分をしのいで帝国統治機構を担った。
→騎士
執筆者:鈴木 一州
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報