ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エスニシティ」の意味・わかりやすい解説
エスニシティ
ethnicity
エスニシティの異なる個人または集団が支配的文化に吸収される同化は,強制や誘導によることもあれば,自発的になされる場合もある。強制的な同化としては,近代初期のイギリスにおいて,イングランド人がケルト人の住むウェールズやスコットランド,アイルランドで土着の言語や宗教を禁じた例がある。タイやインドネシアでは中国系の民族集団が合法的に支配的文化への適応を誘導されてきた。アメリカ合衆国ではヨーロッパからの移民数百万人が 2~3世代のうちに多かれ少なかれ自発的に同化した。同化と異なり,複数の民族が混じり合い,統合されることもある。メキシコではスペインの文化とラテンアメリカインディアン(インディオ)の文化が数世紀にわたって接触するうちに,徐々に融合していった。
対立する集団の衝突や分離主義が日常化することもある。ユーゴスラビアは第1次世界大戦後,既存のエスニシティの境界を無視して建国され,多くの民族集団がある日を境に,一国のなかでの共存を強いられた。1990年代初頭に国を一つにまとめていた共産主義体制が崩壊すると,さまざまな集団間の敵意が激化して全面戦争に発展し,ユーゴスラビアは複数の国家に分裂した。(→エスニック・アイデンティティ,民族)
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