ガラクトース(読み)がらくとーす(英語表記)galactose

翻訳|galactose

精選版 日本国語大辞典 「ガラクトース」の意味・読み・例文・類語

ガラクトース

〘名〙 (galactose) 単糖類一つ化学式 C6H12O6 白色の結晶状物質。ぶどう糖と結合して乳糖の形で存在するほか、多糖類や糖脂類などの成分として広く存在する。

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デジタル大辞泉 「ガラクトース」の意味・読み・例文・類語

ガラクトース(galactose)

単糖類の一。無色の結晶で、水によく溶ける。生物界に広く分布し、エネルギー源になるほか、糖脂質乳糖分の構成成分として重要。分子式C6H12O6

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化学辞典 第2版 「ガラクトース」の解説

ガラクトース
ガラクトース
galactose

C6H12O6(180.16).セレブロースともいう.重要なアルドヘキソースの一種.D-ガラクトースはまれに遊離状態で天然に存在するが,一般には,二糖類のラクトースをはじめ,多くのオリゴ糖類(ラフィノーススタキオースメリビオースなど),多糖類(ガラクタン),配糖体,糖脂質(ガラクトリピド,セレブロシド),糖タンパク質などの構成成分として存在する.通常,ラクトースを酸で加水分解し,副生するD-グルコースを酵母で発酵させて除き,D-ガラクトースを得るが,D-リキソースからのシアノヒドリン合成,そのほかにより,化学的にも合成される.生体内では,D-ガラクトースをD-グルコースが,それらのリン酸エステルを経て相互変換することが知られている.水中での組成は,α-D-ピラノース30%,β-D-ピラノース64%,α-D-フラノース2.5%,β-D-フラノース3.5%,直鎖アルデヒド0.02% となる.α-D-体は融点167 ℃(一水和物118~120 ℃).+150.7→80.2°(水).β-D-体は融点143~145 ℃.+52.8→80.2°(水).水に易溶,アルコール類に難溶.弱い甘味を示す.還元糖としての一般的な性質を示す.L-ガラクトースは寒天などの海草多糖類にD-体とともに含まれている.DL-ガラクトースを得たのち,D-ガラクトースだけを適応酵母で発酵させて除き,L-ガラクトースを得る.融点163~165 ℃.-78°(水).[CAS 26566-61-0][CAS 59-23-4:D-体][CAS 15572-79-9:L-体]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガラクトース」の意味・わかりやすい解説

ガラクトース
がらくとーす
galactose

アルドヘキソース(六炭糖)の一種で、自然界には遊離の状態で存在することはほとんどない。白色の粉末で甘い。D型とL型がある。D-ガラクトースは広く生物界に分布し、ラクトース(乳糖)、寒天、ガラクトマンナンや細菌細胞壁の多糖および糖タンパク質、糖脂質などに含まれる。L-ガラクトースは分布が狭く、寒天やある種のウニ卵の表面のゼリーカタツムリの粘液の中の多糖などに含まれている。したがって、一般にはD-ガラクトースを単にガラクトースとよぶ。

 D-ガラクトースはラクトースを酸で加水分解すると得られる。すなわち、加水分解物を濃縮して冷蔵庫中に放置すれば、D-ガラクトースの結晶が生ずる。生理的に重要な糖の一つで、ラクトースの構成成分であるばかりでなく、脳や神経組織に多量に分布する糖脂質など、これを構成成分とする化合物は広く存在する。たとえば、ABO式の血液型を決定しているのは、赤血球表面の糖タンパク質や糖脂質である。B型の赤血球の場合、血液型の糖鎖の端はガラクトースである。このガラクトースをα(アルファ)-ガラクトシダーゼという酵素で切り離してしまうと、赤血球はB型の性質を失い、O型の性質を示すようになる。

 生体内に取り込まれたガラクトースは、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼという酵素の働きでUDPウリジン二リン酸)-ガラクトースになり、いろいろと利用される。この酵素が遺伝的に欠けていると、ガラクトースが利用されずに血液中に蓄積され、知能の低下などを引き起こす。この疾患をガラクトース血症とよぶ。

[村松 喬]

 D型はD-グルコースとともに乳糖の構成成分である。また脳に含まれる糖脂質(セレブロシドやガングリオシド)やそのほか細胞膜構成糖タンパク質の成分でもある。人間の体内でグルコースから合成されるが、乳幼児では脳成分合成のため、ミルク中の乳糖の形で供給される。体内でグルコースに変わり、カロリー源として利用される。植物や微生物の細胞壁や細胞膜の構成多糖類中にも含まれるが、このときL型とD型が存在する。

[不破英次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガラクトース」の意味・わかりやすい解説

ガラクトース
galactose

アルドヘキソースの一種。生理的には重要な糖であるが,天然にはD,L体の両方とも遊離の状態で存在することはまれ。 (1) D体 乳中の糖分ラクトースの主成分で,天然に広く存在する糖。特に動物では脳や神経組織にある糖脂質の重要な構成成分。寒天またはラクトースから分離精製する。無水物は柱状晶で融点 167℃,1水物は針状晶で融点 118~120℃。水によく溶けて旋光性をもち,しかも変旋光を示す。生体内ではリン酸によりガラクトース,グルコースの相互変換が可能。 (2) L体 生体には,まれに存在するのみである。寒天などの加水分解や,化学合成で得られるD,L体混合物に,ガラクトース適応酵母を作用させ,D体を発酵分解して得られる。

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百科事典マイペディア 「ガラクトース」の意味・わかりやすい解説

ガラクトース

化学式はC6H12O6。代表的なアルドヘキソースの一種。自然界には遊離して存在することは少ないが,乳糖,ラフィノース,スタキオースなどの少糖類や,ガラクタンなどの多糖類,その他配糖体,糖脂質の形で存在する。ふつう乳糖の加水分解で得られる。(図)
→関連項目

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栄養・生化学辞典 「ガラクトース」の解説

ガラクトース

 C6H12O6 (mw180.16).

 乳糖の成分.重合した高分子物質はガラクタンとよばれ,寒天やアラビアゴムなどに存在.

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改訂新版 世界大百科事典 「ガラクトース」の意味・わかりやすい解説

ガラクトース
galactose

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世界大百科事典(旧版)内のガラクトースの言及

【炭水化物】より

…少糖は単糖が2~20個程度,多糖はさらにそれ以上結合したものである。単糖の例としてはブドウ糖(グルコース),ガラクトース,また少糖の例としてはグルコースが2分子結合した麦芽糖(マルトース),グルコースと果糖(フルクトース)が結合したショ糖(砂糖),グルコースとガラクトースが結合した乳糖(ラクトース)をあげることができる。多糖にはデンプングリコーゲンセルロースなどがある。…

※「ガラクトース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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