精選版 日本国語大辞典 「ガラパゴス諸島」の意味・読み・例文・類語
ガラパゴス‐しょとう ‥ショタウ【ガラパゴス諸島】
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南アメリカ、エクアドルの海岸の西方900キロメートルから1200キロメートルの赤道直下の太平洋上に散らばる諸島。正称はコロンColón諸島といい、コロン諸島州としてエクアドルの一州をなす。イサベラ島、サンタ・クルス島、フェルナンディナ島、サン・サルバドル島、およびサン・クリストバル島の五つの大きな島を中心に30の島々と無数の岩礁からなる。フェルナンディナ島を除く主要4島にのみ住民がいる。面積7844平方キロメートル、人口1万8555(2001)。ナスカプレートとココスプレートの境界をなすカーネギー海嶺(かいれい)上にある玄武岩質岩石からなる火山島で、最近もっとも活動的なラ・クンブレ火山(フェルナンディナ島)をはじめ大小無数の火山がある。1535年に発見されて以来、海賊の隠れ場所や捕鯨船の基地であったが、1830年エクアドル領となった。ダーウィンが動植物および地質の観察から進化論についての基礎的アイデアを得た島として有名である。サン・クリストバル島に行政中心都市プエルト・バケリソPuerto Baquerizoがある。1978年に世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産。2001年登録地域を拡張)。
[松本栄次]
赤道直下に位置するガラパゴス諸島の季節、気候、動植物相は海流の影響によって特徴づけられる。1年のうち6~12月は、南東の貿易風によって南から流れてくるペルー海流(フンボルト海流)の続流である低温の南赤道海流がガラパゴス諸島を洗い、海岸は霧に包まれるが、内陸は乾燥している。1~5月には貿易風は弱まり、パナマ湾から流れてくる海水の温度は比較的高くなる。ときには異常高温で、塩分濃度が低くなるエルニーニョ現象が起こり、温暖で雨が多くなる。ただし、エルニーニョ現象の勢力は、年により大きく変動する。ガラパゴス諸島に影響を与えている第二の海流にはクロムウェル海流とよばれる赤道潜流がある。これは海面下を流れる寒流で、ガラパゴス諸島の西部で海表面に上昇してくる。このため、フェルナンディナ島周辺やイサベラ島西岸は気温が低く、また海産生物は豊富になっている。
ガラパゴス諸島の生物相は、動物相に特異なものがみられるが、植生は乾燥のため貧弱である。裸子植物、ユリ科、リュウゼツラン科、ヤシ科を欠き、キク科、トウダイグサ科、サボテン科の種類が多く、これらのなかに固有種(キク科の木本植物スカレシア属の14種など)がみられる。ここでは動物相について述べる。
[新妻昭夫]
イギリスの博物学者ダーウィンは、22歳の冬に軍艦ビーグル号に乗り込んで世界周航の旅に出た。4年目の1835年9月にガラパゴス諸島を訪れた彼は、この地方の副知事ロースンから、「カメはそれぞれの島ごとに異なっているので、見ればどの島のものか断言できる」という話を聞いた。甲らの形状に差異があるだけでなく、肉の味までも違うという。ダーウィンはこのとき初めて、各島間で生物が微妙に異なることに気づき、やがて『種の起原』(1859)にたどり着くべき進化論のヒントを得たといわれている。ちなみに、ガラパゴスとはスペイン語でカメの意味である。
このとき以来、ガラパゴス諸島は進化論の舞台として有名となり、その特異な動物相が注目されてきた。ゾウガメとともに進化論のモデルとなったのがダーウィンフィンチ類である。この小鳥は近縁な13種に分類され、嘴(くちばし)の形状がすこしずつ異なる。南アメリカから移住してきた祖先が適応放散してそれぞれの生態的地位につき、採餌(さいじ)習性をそれぞれ違えたのである。この小鳥類の進化については、『ダーウィンフィンチ』の著作で知られるD・ラックの有名な研究がある。ダーウィンフィンチ類のなかでとくに風変わりな習性をもつのは、サボテンの刺(とげ)を道具に使って樹木の穴の中の虫をとらえるキツツキフィンチであろう。
ガラパゴス諸島の特徴的な動物を列挙すると、まず爬虫(はちゅう)類としては、前述のゾウガメ14~15種類のほかに、ウミイグアナとリクイグアナ、ヨウガンイグアナ、ガラパゴスヘビ、およびほかの地域にも広く分布するヤモリがいる。陸鳥類としては、ダーウィンフィンチが卓越しているが、ほかにマネシツグミ類、ガラパゴスバト、ガラパゴスノスリが有名である。海鳥は豊富であるが、特異的なものとしてガラパゴスペンギンと翼が退化したコバネウがあげられる。陸生哺乳(ほにゅう)類はきわめて貧弱で、コメネズミ類Nesoryzomysしかいない。海生哺乳類としてガラパゴスアシカがいる。捕食者がいないので、ガラパゴス諸島の動物は概して無防備で、人間を恐れない。なお、淡水魚と両生類はまったく生息しない。
ガラパゴス諸島の動物相は、そのほとんどが南アメリカ大陸に近縁種がいる。かつてはガラパゴス諸島と南アメリカの間に陸橋があったとする説もあったが、現在はほぼ否定されている。流木などに乗り海流によって漂着した祖先種が、この諸島で独特の進化を遂げたのであろう。ただ一つの例外は、陸生の貝類トマテリデス・チャサメンシスTomatellides chathamensisで、ポリネシア系と考えられている。1964年にサンタ・クルス島のアカデミー湾にダーウィン研究所が設立され、進化論の舞台であるガラパゴス諸島の動植物の研究と保護の中心となっている。
[新妻昭夫]
『伊藤秀三著『ガラパゴス諸島――進化論のふるさと』(中公新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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