日本大百科全書(ニッポニカ) 「コリヤーク」の意味・わかりやすい解説
コリヤーク(民族)
こりやーく
Коряк/Koryak
ロシア連邦、シベリアのチュコト(チュコトカ)半島南部とカムチャツカ半島北部に居住する少数民族。人口は8942(1989)で、1930年以降コリヤーク自治管区を形成している。言語は古アジア諸語に属するコリヤーク語。人種はシベリア人種に属し、顔は平板でモンゴロイド的だが身長は高い。コリヤークはその生業の違いによってトナカイコリヤークと海岸コリヤークとに大別される。前者はトナカイ飼養をおもな生業とし、トナカイぞりと犬ぞりを使って遊牧の生活を送る。住居は、基部が円筒形で上部が円錐(えんすい)形の、トナカイの毛皮を用いたテントである。後者は海岸や河口に定住して漁労と海獣狩猟をおもな生業とし、移動には犬ぞりを使う。冬は大きな半地下式の木造家屋に近親数家族がともに住み、夏になると家族ごとに高床式の木造家屋かテントに移る。トナカイコリヤークと海岸コリヤークは頻繁に交易を行って相互補完的な関係にある。また、双方とも漁労と狩猟を行う。干し魚は重要な食糧であり、毛皮獣は貴重な現金収入源である。社会の基本単位は家族で、血縁や婚姻による親族集団も形成されたが、氏族組織はできなかった。出自は父系が重視されたが概して双系的で、夫方居住婚が行われたが、離婚すると子供は母親に引き取られた。彼らの信仰で重要なのは春秋の祭りである。トナカイコリヤークは春には放牧の、秋にはトナカイ集めの祭りを行い、海岸コリヤークは春にボート祭、秋にアザラシ祭やクジラ祭などの感謝祭を行う。祭りにはかならず犬ぞりの競争などが行われ、有名なイヌの供儀が行われる。また双方に熊(くま)送りやオオカミ崇拝がみられた。
[佐々木史郎]
コリヤーク(ロシアの地名)
こりやーく
Коряк/Koryak
ロシア連邦カムチャツカ州に属する自治管区。コリヤーク自治管区Корякский автономный округ/Koryakskiy avtonomnïy okrugという。また同自治管区に住むコリヤーク人をも意味する。自治管区は1930年創設されたが、1977年までは民族管区といった。面積30万1500平方キロメートル、人口2万5300(2003推計)。行政中心地はパラナ。
ロシア連邦極東に位置するカムチャツカ半島北半と大陸の一部およびカラギンスキー島からなる。西はオホーツク海、東はベーリング海に面する。全体に山がちの地形(最高地点は2562メートル)。貧弱な植生のツンドラ(永久凍土帯)か、または森林ツンドラに覆われている。平均気温は1月零下26℃~零下24℃、7月10℃~14℃。年降水量は300~700ミリメートル。1989年国勢調査によれば、民族構成はロシア人(62%)、コリヤーク人(16.4%)が主である。
おもな産業は、漁業、トナカイ・毛皮獣の飼育、狩猟、褐炭の採掘。
[上野俊彦]