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コンプトン効果 コンプトンこうかCompton effect

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

コンプトン効果
コンプトンこうか
Compton effect

物質によって散乱されたX線のなかに,入射Xと同じ波長をもつもののほか,入射X線より長い波長のX線が含まれる現象。 1923年 A.H.コンプトンが発見した。入射するX 線が波ではなく粒子 (→光子 ) であり,波長が長くなるのは光子と電子の衝突に起因すると考えるとこの現象を説明できる。波長 λ の光子は hc/λ のエネルギーと h/λ の運動量をもつと考える。 hプランク定数c は真空中の光速度である。この光子が静止している電子に衝突し,電子は入射X 線の方向と θ の角をなす方向にはね飛ばされるものとし,古典力学エネルギー保存則および運動量保存則を用いて入射光子と散乱光子の波長の差を計算すると,(h/mc)(1- cos θ) で与えられる ( m は電子の質量) 。 hcm に既知の値を代入すると,この式は実験事実ときわめてよく一致する。 h/mc は電子のコンプトン波長と呼ばれる。また,散乱強度を θ の関数として示すと,クライン=仁科の式によってこの現象がみごとに説明される。コンプトン効果は,光が波動性のほかに粒子性をもたなければならないことを示した重要な現象の1つである。この現象を発見した功績により,27年コンプトンにノーベル物理学賞が授与された。

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百科事典マイペディアの解説

コンプトン効果【コンプトンこうか】

コンプトン散乱とも。X線が物質によって散乱されると,入射X線と同波長のもの以外に,波長が入射X線より長いほうにずれたものが含まれる現象。1923年A.H.コンプトンが発見し光量子仮説(光子)を用いて機構を説明,その有力な実験的根拠を与えた。
→関連項目X線散乱ボーテ

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法則の辞典の解説

コンプトン効果【Compton effect】

X線や γ 線などの高エネルギーの電磁波が電子に衝突,散乱の結果,もとの電磁波の波長よりもいくぶん長波長の成分が出現する現象をいう.この波長変化は,θ を散乱角,m を電子の静止質量とすると次の式で与えられる.

入射光子のエネルギーを Ep,散乱光子のエネルギーを Ep′ としたときには次のような式となる.

これとは別に高エネルギーの電子によって光子がエネルギーを得て短波長(高エネルギー)となって散乱される場合もあり,これは逆コンプトン効果*と呼ばれている.

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世界大百科事典 第2版の解説

コンプトンこうか【コンプトン効果 Compton effect】

X線が自由電子に当たって進路を曲げられる(散乱される。X線散乱という)とき,曲り角(散乱角)によって決まるわずかの値だけ波長が延びる現象。原子に束縛された電子でも,原子の外側にあるものについては束縛の影響はほとんど現れないので,同様にこの効果が観測される。1921年にA.H.コンプトンが実験により発見し,24年の末までには光が量子からなるという見方に対する最初の確固たる実験的証拠として受け入れられるようになった。

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大辞林 第三版の解説

コンプトンこうか【コンプトン効果】

X 線が物質中で散乱されると、散乱された X 線の一部にもとの X 線よりも波長の長いものが現れる現象。 X 線の光子と電子の粒子的な衝突の結果と考えることができ、光の粒子性を示す重要な実験的証拠。理論的には、ディラックの相対論的な電子論を用いて仁科-クラインが計算し、実験とよく一致することを示した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

コンプトン効果
こんぷとんこうか
Compton effect

電子によって散乱されたX線の波長が長波長側に変化する現象。コンプトン効果は、入射X線の波長や散乱体の種類によらない一方、散乱角度が大きいほど、また振動数の変化としては入射エネルギーが大きいほど、顕著に現れる。この効果は、1922年コンプトンによって物質によるX線の散乱でみいだされ、物質中の電子による光子の散乱として理解された。コンプトン効果は、光の粒子性(当時の光量子仮説)に対する直接的な実験的根拠を与えた。光子のエネルギーが、電子の静止エネルギーに比して十分小さいときの散乱は、トムソン散乱といわれ、散乱の度合い(全断面積)は入射エネルギーによらない。コンプトン効果は、光子と荷電粒子の間の相互作用による散乱過程であるから、電子に限らず陽子など他の荷電粒子の場合にも現れるが、効果は荷電粒子の質量が大きいほど小さいので、電子の場合がもっとも顕著に現れる。電磁場の量子である光子(フォトン)が振動数ν(エネルギーはνにプランク定数hを乗じた値)で静止している電子に入射し、角度θの方向に散乱されて振動数ν'になった場合、特殊相対性理論によるエネルギーと運動量の保存則を適用すると、ν'がνとθの関数として与えられ、ν'はνより小さい。振動数と波長の積が光速cとなる関係によって、波長がλよりλ'に増大する変化量は2λcsin2(θ/2)となる。ここで、λcは電子のコンプトン波長とよばれ、電子の質量をmとするとき
  λch/mc=2.4×10-12m
である。[玉垣良三・植松恒夫]
『朝永振一郎著『量子力学1』第2版(1977・みすず書房) ▽原康夫著『岩波基礎物理シリーズ5 量子力学』(1994・岩波書店)』

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世界大百科事典内のコンプトン効果の言及

【X線】より

… 一方,X線の発見およびその研究は物理学の進歩に大きな波及効果を及ぼした。例えば,X線の発見に刺激を受けたA.H.ベクレルは,蛍光物質の中にはX線を放射するものがあるのではないかと考え,種々の物質を用いての実験を行ったが,1896年ウラン塩からX線とは異なる放射線が出ていることを発見しているし,また1922年,A.H.コンプトンによる散乱X線のコンプトン効果の発見は,電磁波(光)の粒子性の直接の証拠となったものとして有名である。
[基本的性質]
 X線の最大の特徴は,物質を透過する力(透過能という)が大きく,物質に吸収されにくいことである。…

※「コンプトン効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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