改訂新版 世界大百科事典 「サティヤーグラハ」の意味・わかりやすい解説
サティヤーグラハ
satyāgraha
〈真理(サティヤ)の把捉(アーグラハ)〉の意で,インド独立の父といわれるM.K.ガンディーの政治闘争の理念。ガンディーは,1893年南アフリカにインド人商社の顧問弁護士として赴いた(1914まで)が,同地での厳しい人種差別政策に抗して,インド人移民の基本的人権を確立する闘争を指導した。そのなかで彼は,この闘争は正義の闘争であり,究極の真実をつかみ,この世から悪をなくすことを目的とする,そして,この目的のためには,暴力という〈非真実〉に暴力で対抗することなく,自らを厳しく律することができなければならないとした。サティヤーグラハは,指紋登録を強制する新アジア人法への反対運動から本格的に展開され,大きな成果を収めたが,これは,いかなる弾圧にも非暴力で抵抗するという,のちのインド独立運動にたいするガンディーの指導原理の基礎となった。
執筆者:宮元 啓一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報