ドイツの思想家。人智学の創始者。クラリェベック(現在ユーゴスラビア領)に生まれ,ウィーン工科大学に学ぶ。1883年から97年,キュルシュナー国民文学叢書のために《ゲーテ自然科学著作集》全5巻を編纂する中で,ゲーテの有機体思想,とくに形態学に深い解釈を加え,新しいゲーテ研究の道を開いた。1902年神智学協会ドイツ支部設立に当たり,書記長に選ばれたが,以後新しい総合文化の必要を説き,その基礎となるべき人間観や宇宙観を,(1)霊性のヒエラルヒー,(2)輪廻転生,(3)存在界の三区分(物質界,生命界,霊界),(4)死後の世界の存在等の観点から多面的に論究した。彼は,すべての人間の中には,特定の修行を通して高次の認識を獲得する能力がまどろんでいるが,この認識の上に立てばこれらの問題を近代自然科学と同じ厳密さで探究できると主張し,この行法を《いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか》(1904-05)の中で提示する一方,《神智学》(1904)と《神秘学概論》(1909)の中で,以上の諸問題に近代的な認識批判の立場にとっても受け入れられるような表現を与えようと努めた。彼の影響は宗教,芸術,教育,医療,農法等の分野にも及んだが,とくにキリスト者共同体運動,新しい運動芸術であるオイリュトミーEurhythmie,自由ワルドルフ学校,類似療法医学,有機農法などが有名である。また個人ではシュワイツァー,ユング,ヘッセ,P.クレー,カロッサ,B.ワルターらにその影響が見られる。
執筆者:高橋 巌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
スイスの数学者。ベルンのウッツェンスドルフの生まれ。1814年まで農業に従事、のちにイフェルテンのペスタロッチ教育研究所に入り、あるときは生徒として、あるときは教師として、ペスタロッチの改革的な理想の実践に努めた。1818年、高等な数学を学ぶためにハイデルベルクに行き、微積分・代数学をシュバインFerdinand Schweins(1780―1856)に学ぶとともに、独学でフランス風の幾何学を修得した。1821年ベルリン大学に学び、教師の資格を得て、1825年ベルリンの工業学校教師となり、1834年F・H・A・フンボルトの推挙でベルリン大学の数学助教授となり、教授に昇進しないままベルリンで没した。
彼の主たる業績は、19世紀における総合幾何学の代表的著作ともみられる『幾何学的図形の相互間の関係の体系的展開』(1832)である。優れた直観力をもち、解析を拒否しながら、美しい幾何理論、射影幾何学の発展に貢献した。1834年プロイセンの科学アカデミー会員に選ばれた。
[小松醇郎 2018年8月21日]
ドイツの哲学者、教育思想家。ウィーン工科大学、ウィーン大学で哲学、心理学、医学などを学んだ。またワイマールでゲーテを研究(1890~1897)し、自然科学的思考法と精神的直観の統合を追究、主著『自由の哲学』(1894)を生むことになった。1902年以来「人智(じんち)学」Anthroposophieを唱えた。その後、ドルナッハに精神科学教授のためゲーテアヌム(研究・教育機関)を設立し、さらに、シュトゥットガルトにバルドルフ煙草(たばこ)工場の付属学校として、子供の内的生命と自発性を尊重した最初のバルドルフ学校を設立した(1919)。教育上の主著としては『精神科学の立場から見た子どもの教育』(1907)、『教育の基礎としての一般人間学』(1919)があげられる。自由バルドルフ学校は世界各地に設立されている。
[舟山俊明 2015年2月17日]
『新田義之編『ルドルフ・シュタイナー著作全集31 教育と芸術』(1986・人智学出版社)』▽『子安美知子著『ミュンヘンの小学生』(中公新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…その基礎は,非調和比が射影的性質であることや,射影幾何学の双対性を見いだしたJ.V.ポンスレによって築かれた。これを継承して,シュタイナーJ.Steiner(1796‐1863)は二次曲線や二次曲面も射影的に扱えることを示し,A.F.メービウスやJ.プリュッカーは座標を導入して射影幾何学を解析幾何学として建設し,またシュタウトK.G.C.von Staudt(1798‐1867)はデザルグの定理を基としてそれを総合幾何学として建設した。
[非ユークリッド幾何学]
ユークリッドがあげた5個の公準のうち,第5番目のものは〈1直線が2直線と交わり,同じ側の内角の和が2直角より小ならば,2直線は限りなく延長するとその側で交わる〉と述べられている。…
…他方,29年には《建設雑誌》をも刊行し始め,51年まで30巻を編集した。これらの雑誌に才能ある青年学者たちの寄稿を私心なく呼びかけ,N.H.アーベル,C.G.J.ヤコビ,シュタイナーJacob Steiner(1796‐1863)らの才能を世に認知させる役割を果たした。フンボルトF.W.H.A.von Humboldt(1769‐1859)と共同して,プロイセン改革期の科学振興に尽力し,ベルリン科学アカデミーほか,数多くの各国科学アカデミー会員に選出された。…
…その基礎は,非調和比が射影的性質であることや,射影幾何学の双対性を見いだしたJ.V.ポンスレによって築かれた。これを継承して,シュタイナーJ.Steiner(1796‐1863)は二次曲線や二次曲面も射影的に扱えることを示し,A.F.メービウスやJ.プリュッカーは座標を導入して射影幾何学を解析幾何学として建設し,またシュタウトK.G.C.von Staudt(1798‐1867)はデザルグの定理を基としてそれを総合幾何学として建設した。
[非ユークリッド幾何学]
ユークリッドがあげた5個の公準のうち,第5番目のものは〈1直線が2直線と交わり,同じ側の内角の和が2直角より小ならば,2直線は限りなく延長するとその側で交わる〉と述べられている。…
…他方,29年には《建設雑誌》をも刊行し始め,51年まで30巻を編集した。これらの雑誌に才能ある青年学者たちの寄稿を私心なく呼びかけ,N.H.アーベル,C.G.J.ヤコビ,シュタイナーJacob Steiner(1796‐1863)らの才能を世に認知させる役割を果たした。フンボルトF.W.H.A.von Humboldt(1769‐1859)と共同して,プロイセン改革期の科学振興に尽力し,ベルリン科学アカデミーほか,数多くの各国科学アカデミー会員に選出された。…
…イギリスではW.W.ウェストコットがオカルト結社〈黄金の暁教団〉を組織し,D.フォーチュン,クローリー,S.L.M.メーザーズのような魔術師を傘下から生み出し,また詩人W.B.イェーツに霊感を与えた。一方,ブラバツキー夫人の神智学協会から分離したシュタイナーは,ドイツ・オーストリアを中心に人智学協会を創立,20世紀オカルティズムの一大潮流を形成した。イギリス・オカルティズムの一部はクローリーらのアメリカ移住以後合衆国に根づき,亡命アルメニア人の導師グルジェフの霊的行法とともに,とりわけ1960年代以降新大陸の若い世代に刺激を与え,音楽,ドラッグ文化,ヨーガ,自然食運動,タントリズムなどと習合して,新たな局面を迎えている。…
…ヨーロッパ思想史の底流にある秘教的esotericな立場を表す用語として,16世紀のころから使われ(フィラレテスEugenius Philalethesの著書《アントロポソフィア・テオマギカ》1650参照),19世紀になると,人類学者トロクスラーIgnaz Paul Vital Troxler(1780‐1866)やヘルバルト派の哲学者ツィンマーマンRobert von Zimmermann(1824‐98)は一般の学術用語としても用いるようになった。しかし今日では主としてシュタイナーの提唱した立場を意味している。彼によれば,物質文明が一面的に発達し過ぎた今日こそ,秘教内容を公開する必要があるが,人智学は人類学と神智学,もしくは科学と霊界認識を仲介することでこの要求にこたえ,すべての人間の内にまどろんでいる高次の認識能力を開発して,個人の自己実現と社会の進歩のために役立つ方法を提示しようとする。…
…科学の分野においては,大陸移動説を提案したウェゲナーがこれを否定したが,オカルティズムの視点から超古代文明の存在を教義化しつつあった神智学者ブラバツキーが関心を示し,アメリカ西海岸の先住民族の古記録にレムリアが言及されていることを理由に,この仮想大陸はインド洋ではなく太平洋に実在したと主張した。さらに神智学協会ドイツ支部の会長であったシュタイナーは,アトランティス以前に存在した一大文明地域だったとする説を唱えた。次いでインドに駐留したイギリスの軍人チャーチワードJames Churchward(1852‐1936)が同地で古代の碑板を発見し,5万年前に高度な文明を誇ったムーと呼ばれる大陸が太平洋上にあったことを解読して,仮説であったレムリアを古代伝承に従ってムーと呼び直した。…
…こうした思考は,自然への回帰,反都市,反資本という〈反近代〉の姿勢と結びつき,神智学,神秘主義の風潮とも部分的に重なっている。芸術と宗教の一体性を求めたR.シュタイナーの人智学は新たな人間学の発見であった。総じてワイマール文化は全体知を希求する人間学にとっての肥沃な土壌になっていたといえよう。…
※「シュタイナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新