シュメール語(読み)シュメールゴ(その他表記)Sumerian

翻訳|Sumerian

デジタル大辞泉 「シュメール語」の意味・読み・例文・類語

シュメール‐ご【シュメール語】

シュメール人によって、前18世紀ごろまで用いられた言語

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精選版 日本国語大辞典 「シュメール語」の意味・読み・例文・類語

シュメール‐ご【シュメール語】

  1. 〘 名詞 〙 南メソポタミア最古の文明民族であるシュメール人によって、紀元前一八世紀頃まで話された言語。楔形文字で書かれ、文化語としては紀元直前まで使用された。系統は不明。

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改訂新版 世界大百科事典 「シュメール語」の意味・わかりやすい解説

シュメール語 (シュメールご)
Sumerian

古代メソポタミア南部で使用されたシュメール人の言語。前3100年ころから前50年ころまでの文献が発見されている。シュメール語が現用語であったのはおそらくウル第3王朝までで,それ以後は徐々に死語化するが,一種の文化語として古代オリエントで長く使用された。シュメール語の系統は今のところ不明で,孤立した言語である。構造的には典型的な膠着語であり,接頭辞,接中辞,接尾辞などの接辞が発達し,文法関係を示す。屈折語に見られる母音交替とか語順による文法関係の表示は認められない。文法的には有生クラスanimate class(人間,神を含むクラス)と無生クラスinanimate class(動物,無生物,抽象概念を含むクラス)の対立存在する。例えば与格dativeは有生クラスにのみ許され,無生クラスには認められないし,複数構成も有生クラスにのみ許される。動詞は継続相durativeと瞬間相punctiveのアスペクトの対立を基礎とする。言語変化では母音同化現象がきわめて特徴的である。シュメール語は一般にエメ・ギルeme-girと呼ばれる標準語ないし文語と,エメ・サルeme-salと呼ばれる女性語ないし口語に区別される。エメ・サルと呼ばれる語詞は大部分がエメ・ギルの音声的に変化した形を示している。エメ・ギル,エメ・サルのほぼ完全な対照表が,アッカド語訳を付して残されている。

 バビロン第1王朝時代に入って,シュメール語を文化語として学習するために膨大な語彙表,文法テキスト,シュメール語・アッカド語対訳資料その他が作成された。その一部がアッシュールバニパル王の図書館からも発見されたため,シュメール語はアッシリア語を通して二次的に解読されたと考えられている。シュメール語について一般に〈解読〉という言葉が使用されないのはそのためである。シュメール語研究の基礎はペーベルArno Poebelの《シュメール語文法概要》(1923)によって確立され,ファルケンシュタインAdam Falkensteinによって継承された。ダイメルAnton Deimelの《シュメール語辞典》4巻は1928-33年に刊行され,ランズバーガーBenno Landsbergerによって37年に開始された《シュメール語辞典資料》の出版も,現在までに14巻を数えている。
シュメール
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百科事典マイペディア 「シュメール語」の意味・わかりやすい解説

シュメール語【シュメールご】

メソポタミア最古の文明民族シュメール人の言語で死語。語族は不明。膠着語(こうちゃくご)的性格が強い。最古の記録は前3000年ごろ。アッカド語に代わられ死語となったが,楔形(くさびがた)文字法および多くの文化語彙(ごい)がアッカド語に借用された。シュメール語,エラム語,フルリ語,ハッティ語およびウラルトゥ語はまとめて〈古代小アジア諸言語〉と称されている。→シュメール
→関連項目粘土板文書

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュメール語」の意味・わかりやすい解説

シュメール語
シュメールご
Sumerian language

スメリア語ともいう。南メソポタミアに話されていた言語。前 3000年頃を中心に栄え,前 2000年にはアッカド語に取って代られたものの,書き言葉としては紀元前後まで用いられた。系統関係は未詳。文法構造は膠着語的で,接頭辞,接中辞,接尾辞が豊富である。楔形文字を使用。いくつかの方言の存在が知られている。

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世界大百科事典(旧版)内のシュメール語の言及

【アッシリア学】より

…シュメール遺跡およびメソポタミアの本格的な発掘は,第1次世界大戦後,イギリス,ドイツ,フランス,アメリカ,イラクによって行われることになる。シュメール語は系統不明な孤立言語であるが,出土した粘土板の中に含まれるシュメール語・アッカド語対訳の語彙表,対訳文学テキスト,対訳文法書などを拠り所として解読された。アッカド語はアッシリア語にきわめて近いセム語である。…

【楔形文字】より

…上記3系列の中で,シュメール系楔形文字は高度のシュメール文明を背景にして3000年近く古代オリエント全域で使用され,歴史的に最も重要な役割を果たした。シュメール語の表記に使用された文字数は約600程度である。この文字体系をシュメール人から借用して表記された言語には,セム系のアッカド語(またはバビロニア語),アッシリア語,エブラ語,系統不明なエラム語,カッシート語,系統的に親縁性が立証されつつあるフルリ語と古代アルメニアのウラルトゥ語,インド・ヨーロッパ語族系の言語である小アジアのヒッタイト語,パラ語,ルウィ語およびヒッタイト王国の原住民の言語であったハッティ語などがあり,エジプトのアマルナ,シリアのウガリト,イスラエルその他からも多数のシュメール系楔形文書が発見され,国際的に広く通用していたことがわかる。…

【メソポタミア】より


[シュメール・アッカド時代]
 前4千年紀中葉のウルク期には,シュメール北部にも多くの村落遺跡が見いだされ,ウルク期前半にすでにニップール,アダブなどがほぼ都市的規模の面積に達していた。後期には南部のウルクが大発展を遂げ,巨大な神殿などが相次いで成立し,ウルク最末期には最古のシュメール語粘土書板も現れている。これ以後,前24世紀中葉までメソポタミア最南部でシュメール都市国家時代が続く。…

※「シュメール語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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