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ジャータカ Jātaka

翻訳|Jātaka

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ジャータカ
Jātaka

仏教説話集。 jātakaとは「生れたものに関する」の意で「本生話」「本生譚」とも訳す。インドに古くからある業報輪廻思想を仏陀にあてはめたもの。現世で悟る以前,仏陀が六道菩薩としてさまざまな姿,形をとって善行を行う様を述べる。 (1) 現在世の物語,(2) 過去世の物語,(3) 過去と現在のつながりを説く3部門から成る。成立年代は明確ではないが,前2世紀にはこれを題材にした彫刻が出現している。説話数は 547 (パーリ語聖典) 。早くから各国語に翻訳されて西方諸国に広まり,『千一夜物語』『イソップ物語』『グリム童話』などに影響を与え,また日本の『今昔物語集』にも類話がみられる。

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百科事典マイペディアの解説

ジャータカ

本生話(ほんじょうわ),本生経前生譚(ぜんしょうたん)とも。古代インドの説話,また聖典の一種となった説話集で,釈迦(しゃか)の前生の生涯,その中での善行・功徳(くどく)を述べた物語が内容。
→関連項目絵因果経説話画

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世界大百科事典 第2版の解説

ジャータカ【Jātaka】

広くインドの民話に題材を求めた,釈迦の過去世物語。説話文学としても価値が高い。ジャータカとは,サンスクリットで〈生まれたことに関する〉というほどの意味であるが,仏教聖典で用いられるときは特に今の生を引き起こした過去世の善行物語を意味する。ジャータカが生まれた前4~前3世紀のインドでは,輪廻転生(りんねてんしよう),善悪応報の思想が支配的であり,人は生と死を繰り返すが,その際生まれかわる境涯を決定するのは,その人の前世の行為のよしあしであると考えられていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ジャータカ
じゃーたか
Jtaka

パーリ語で書かれた古代インドの仏教説話集。『本生話(ほんしょうわ)』と訳される。仏陀(ぶっだ)がサーキヤ人の王子としてこの世に生まれる以前、菩薩(ぼさつ)として幾多の生を重ねる間、天人、国王、大臣、長者、庶民、盗賊、あるいは象、猿、孔雀(くじゃく)、兎(うさぎ)、魚などの動物として生を受け、種々の善行功徳を行ったという物語547話を集めたもの。
『ジャータカ』はパーリ語の仏典、すなわち三蔵のなかの小部経典に含まれ、各話は現世物語と過去世物語と、この両話を結び付ける結合部の3部からなり、過去世の物語が各本生話の中心をなし、散文に短い詩句を交えている。これらの物語は、紀元前3世紀ごろから民間に語り伝えられていた伝説や説話を集め、これに仏教的色彩を加えたもので、1人の作者によってつくられたものではなく、成立は1世紀ごろと推測される。『本生話』のなかには二大叙事詩や他のサンスクリットの説話集『パンチャタントラ』『カターサリットサーガラ』などと共通の話も多く、また『千夜一夜物語』や『イソップ物語』などと同工異曲のものもあり、世界文学としても重要な地位を占め、伝説、説話、寓話(ぐうわ)、童話、逸話、道徳的格言を含み、文学的価値も高い。しかも、同時にその教訓、機知、諧謔(かいぎゃく)、皮肉に富んだ物語のなかには、古代インドの社会生活や文化状態を伝える多くの資料を包含している。
 パーリ語『ジャータカ』の全訳は現存の漢訳仏典中にはないが、多くの物語は『生経(しょうきょう)』『仏本行集経(ぶつほんぎょうじっきょう)』『菩薩本生鬘論(ぼさつほんしょうまんろん)』などの漢訳仏典のなかに含まれ、これらによって日本にも伝えられている。『猿の生き肝(いきぎも)』(くらげ骨なし)や『月の兎』の説話は、いずれもその源流を『ジャータカ』に探ることができ、『今昔物語集』のなかにもジャータカ起源の話は多く、日本の説話や文学に与えた影響は大きい。[田中於莵弥]
『『南伝大蔵経28~32』(1972・大蔵出版) ▽中村元監修『ジャータカ全集』全10巻(1982~91・春秋社)』

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世界大百科事典内のジャータカの言及

【インド文学】より

…初期の仏教文学はプラークリット語の古形たるパーリ語を用い,根本仏典の三蔵(ティピタカ)の中には文学的価値の高いものがある。仏陀前生の物語として集録された説話集〈ジャータカ〉は,サンスクリット文学における《パンチャタントラ》とともに東西説話文学上重要である。仏教文学はパーリ語仏典のほかにサンスクリット語による文学的価値の高い経典も多く,またアシュバゴーシャやアーリヤシューラ(聖勇,6世紀)などすぐれた仏教詩人が出ている。…

【説話文学】より

…しかし《千夜一夜物語》や《デカメロン》などにみられる,いわゆる枠(わく)物語の中に多数の説話を包含する形式は,インドを起源とするといわれる。仏教の説話文学として有名な〈ジャータカ(本生譚)〉や〈アバダーナ(譬喩譚)〉は,当時の民間説話を仏教化したもので,同じ内容をもつ説話はバラモン教系統の説話集にも多く見いだされる。 サンスクリットの説話集《パンチャタントラ》は,東西説話文学交流の上から最も重要な作品で,原本は散逸して作者,年代ともに不明であるが,多数の支本を生じ,多くの異本が伝わっている。…

【占星術】より

… 占星術の第2の部門〈ホーラー〉は,この言葉そのものがギリシア語hōraからの借用語であることが示すように,ヘレニズム世界において天文学の発達とともに急速に発展したホロスコープ占星術である。初めてインドに伝えられたのは2世紀の半ばにギリシア語からサンスクリットに翻訳された《ヤバナ・ジャータカ》によってである。現在伝わっているのは3世紀に韻文化されたもので,かなりインド化されてはいるが,黄道十二宮をはじめとする基本要素はすべてヘレニズムの占星術と同じであり,借用語も多い。…

【仏教文学】より

…これは律蔵の〈大品〉や経蔵の《大般涅槃経》などに古いものがみられる。次に,ジャータカ(本生話)は,釈迦が釈迦族の王子としてこの世に生をうける以前,天人,国王,大臣,長者,盗賊,あるいは兎,猿,象,孔雀などの姿で菩薩のすぐれた自己犠牲の行為を行ったことを物語る教訓説話で,その中には多くの民間説話,寓話,伝説がおさめられている。これは,経蔵中の〈クッダカ・ニカーヤ〉におさめられているが,他のインド文学の作品や《イソップ物語》《千夜一夜物語》にも共通する説話を保有する点で,世界文学史上においても重要な文献である。…

※「ジャータカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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