導線に電流が流れると熱が発生する。これをジュール熱Joule’s heatといい,単位時間当りの発熱量は,電流の2乗と導線の電気抵抗の積に等しい。これがジュールの法則で,1840年にJ.ジュールが確立した。発熱量をW(W)(すなわちW(J/s)),電流をI(A),電気抵抗をR(Ω)とすれば,ジュールの法則はW=I2Rと表され,交流については電流の実効値をIとすればこの式が成り立つ。直流の場合,導線の両端の電圧Vはオームの法則によりV=IRで与えられるから,上の関係はW=VIとも書ける。電圧V(V)をかけて電流I(A)を流すとき,起電力の仕事率(1秒間にする仕事)はVI(W)であるから,ジュールの法則は,発熱量が起電力の仕事率に等しいことを述べている。これはエネルギー保存則にほかならない(ジュールはエネルギー保存則の発見者の一人である)。電熱器や電球はジュール熱の利用の例である。一方,モーターなど一般の電力利用の場合には,ジュール熱は電力の損失であり,さらに冷却の必要性を引き起こす場合も多い。
執筆者:加藤 正昭
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電気抵抗Rの導線に電流Iを流すとき、導線に発生する単位時間当りの熱量Qは、Q=I2Rで表されるという法則。ジュールが実験の結果みいだしたのでこの名がある。また、ジュール‐トムソンの実験により、理想気体では、内部エネルギーが温度だけで決まるということが明らかになった。これもジュールの法則という。この法則は理想気体の特質をもっとも明確に示すものである。
微視的にいうと、ある物質の気体状態は、その物質に特有な分子(たとえば酸素ではO2分子)が、この気体が入っている容器内の全空間をほとんど不規則に活発に飛び回っている状態である。分子が活発に飛び回っているのは、分子が現在の温度に相当する熱エネルギーを運動エネルギーとしてもっているからである。一方、実在の気体では、分子は有限の大きさをもっており、また分子間には相互作用があって、これらのことから、各分子の行動は互いに独立ではない。このことは、分子間に位置のエネルギー(ポテンシャル・エネルギー)が存在するということであり、また、気体の内部エネルギーが温度だけではなく体積にもよるということでもある。逆にいえば、理想気体とは、分子を大きさをもたない質点と考えることができ、かつ分子間に相互作用がなくて、各分子は互いにまったく独立に行動しているということである。
[沢田正三]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…科学実験に興味をもち,大学の教職には一生つかなかったが,自宅の研究室で余暇に多くの研究をした。ジュールのもっとも有名な業績は熱の仕事当量を精密に測定したことであるが,このほかにも電流の熱作用に関するジュールの法則の発見,空気の自由拡散の際の温度効果や空気の自由膨張についての実験などの業績がある。 ジュールの研究の始まりは,発明されたばかりの電磁石に関心をもち,電気を動力とする実用的な機械モーターが可能だとの考えで,より効率のよい電磁モーターをつくろうという試みに取り組んだことであった。…
※「ジュールの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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