改訂新版 世界大百科事典 「スレイマン1世」の意味・わかりやすい解説
スレイマン[1世]
Süleyman Ⅰ
生没年:1494-1566
オスマン帝国第10代のスルタン。立法者(カーヌーニー)とも呼ばれる。在位1520-66年。彼の時代に帝国は最盛期を謳歌し,その領土はアジア,アフリカ,ヨーロッパ3大陸にまたがり,東地中海一帯を覆う大帝国となった。在位中,13回の親征を行ったが,とりわけ1529年のウィーン包囲攻撃はヨーロッパ諸国の心胆を寒からしめた。ロードス島のヨハネ騎士団を放逐して地中海の制海権を掌握し,インド洋ではポルトガルと覇権を争った。また,フランスのフランソア1世や神聖ローマ帝国のカール5世らとともに当時のヨーロッパ政局に大きな発言力をもった。国内では検地を行い,法制,行政機構,軍制の各制度や公共事業を充実させて,帝国600年の基礎を確立し,トルコ・イスラム文化を領内に広めた。晩年は妃ロクソランの政治介入を許して,宮廷・官僚機構の腐敗の原因をつくり,王位継承争いで王子たちの多くを死に追いやった。
執筆者:永田 雄三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報