写真感光材料が過度の露光を受けたのちに現像されたとき,通常の露光量の場合と黒白の関係が逆転する現象。例えば,カメラを太陽に向けて撮影してからフィルムを現像すると,ネガ像ならば太陽の部分がもっとも黒く現像されるはずであるが,ソラリゼーションが起こるために太陽の部分は周囲よりも薄くなり,これを印画に焼き付けると太陽は黒い像となる。太陽を直接カメラで撮影することは危険であるから避けたいが,一般に露光量が多過ぎると黒白の反転が起こる。図はこの現象を感光材料の特性曲線で示したもので,縦軸に写真像の黒化濃度,横軸に露光量の対数値を目盛ると,感光材料の特性は右上りのS字曲線で示される。ソラリゼーションの場合は露光量が多い領域でS字の右肩から曲線が下降する部分に相当している。
ソラリゼーションが起こる機構は写真感光理論で説明されている。すなわち,写真フィルムの感光物質はハロゲン化銀であるが,露光によってハロゲン化銀は光分解を起こし,ハロゲン化銀結晶表面,あるいは内部に銀原子の集まった潜像を作り,一方,ハロゲンはハロゲン化銀結晶外部に散逸する。露光量が多い場合には生成するハロゲンが多くなって周囲のゼラチンなどに吸収されなくなり,潜像の銀を酸化して銀イオンに変えてしまう。このため,露光が多くなるに従って潜像は破壊され,現像後の濃度が低くなって画像の反転を起こすのである。写真乳剤中にハロゲンを受容する化合物を添加するとソラリゼーションが減少することが認められている。また,ソラリゼーションは低温では起こりにくく,現像液にハロゲン化銀溶解剤を加えても起こりにくくなる。なお,写真作画の場合にソラリゼーションと称する技術が使われるが,この場合は現像処理中に露光を与えて反転させるので,本項の現象とは関係がない。
執筆者:友田 冝忠
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写真フィルムの感光現象の一つで、転じて写真表現の手法としても知られる。フィルムが光に当たると、その露光量が多いところほど現像によって黒さが強くなるのが通常であるが、必要以上(たとえば1万倍以上)に露光量が過大となると、その部分の黒さは限界を超え、逆に黒さが減少していく反転効果を呈するようになる。この現象をソラリゼーションとよぶ。
一方、フィルムは通常の現像処理中にその現像をいったん中止し、拡散した光を当てたのちに現像を再開すると、その仕上がり画像は部分的な反転効果を呈する。この効果は発見した人の名をとってサバチエ効果というが、その画像効果がソラリゼーションに似ているところから、サバチエ効果による写真表現手法をソラリゼーション・フォトとよぶことが多い。写真家マン・レイらによる名作が歴史的に知られている。
[小池恒裕]
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…〈ブローアップ映画〉としては,ほかに,例えば,表現上の方法論として〈東映W106方式〉と名付けられたブローアップ方式による内田吐夢監督《飢餓海峡》(1964)の実験もある。これはドラマの内的世界を粗い画調で表現しようとするもので,硬調と軟調の16ミリフィルムを使い分けてソラリゼーション(現像処理によって濃淡の階調をつぶしてネガ出しのような画調を作ることで,銅版画が動いているように見える効果)を使ったり,マン・レイが初めて使ったといわれる〈サバチエ方式〉(現像過程で意識的に光線を入れてネガフィルムに感光させ,光の波が走っているような画像を作り出す方法)を導入するなど,〈小型映画〉のもつ実験的特性を遺憾なく発揮させた作品である。ほかにも,マーティン・スコセッシ《タクシー・ドライバー》(1976)のイルミネーションがにじむニューヨークの夜景や,羽仁進《不良少年》(1960)の回想シーンに隠し撮りによる16ミリのショットを挿入するなどのブローアップ効果で成功した作品がある。…
※「ソラリゼーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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