ダウン症候群(読み)ダウンしょうこうぐん(英語表記)Down's syndrome

  • (子どもの病気)
  • (遺伝的要因による疾患)
  • Down&apos
  • s syndrome
  • ダウンしょうこうぐん ‥シャウコウグン
  • ダウンしょうこうぐん〔シヤウコウグン〕
  • ダウン症候群 Down Syndrome
  • ダウン症候群 Down’s syndrome

翻訳|Down's syndrome

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

21番染色体トリソミー(通常 1対〈2本〉の相同染色体が 1本過剰に染色体を有すること)となる染色体異常によって引き起こされる先天性疾患。21トリソミーともいう。かつては蒙古症とも呼ばれた。患者の総染色体数は非患者より 1本多い 47本となる。1866年に疾患の特徴を初めて発表したイギリスの医師ジョン・ラングドン・ダウンの名にちなんでつけられた。患者の症状は軽度から重度まで幅があるが,一般的所見として,短頭,平坦な顔面,短頸,眼瞼裂斜上(目尻がつり上がっている状態),耳介低位,肥大した舌・唇などの特徴が認められる。そのほか筋緊張低下,心奇形,腎奇形(→奇形),皮膚紋理(→掌紋指紋足紋)の異常もみられる。すべての患者に知的障害があるが,通常軽度である。また,40~60%に先天性心疾患が認められる。ダウン症候群は生児出生 700~1000に 1例の割合で発生するといわれ,母親が 35歳を過ぎるとその確率は著しく高まる。40歳を過ぎた母親の場合,発生率は 1/100から 1/30となる。また再発率は 1%である。11週から 14週の妊婦に対して行なわれる超音波診断羊水診断によって診断される(→出生前診断)。

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デジタル大辞泉の解説

Down's syndrome染色体の異常により、知能障害と特異な顔貌(がんぼう)を示す疾患。1866年に英国の医師ダウンが報告。蒙古(もうこ)症。ダウン症。

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百科事典マイペディアの解説

染色体異常による病気。1866年に英国のジョン・ラングドン・ダウン医師が発見したことから,この名がついた。1959年,21番染色体が1本多いことが原因だということがわかり,その後,21トリソミー症候群とも呼ばれる。この病気特有の顔貌(がんぼう)を示す。全身の筋肉弛緩,心臓の形態異常,ヘルニア,てんかん,乾燥肌,精神発達遅延などを伴うことが多いが,その程度には個人差がある。出生800〜1100人に1人の割合で生まれる。出生前診断着床前診断でダウン症の有無を調べることが多い。
→関連項目遺伝病奇形小人精神発達遅滞早老症モンゴリズム

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 21番染色体(せんしょくたい)(図「染色体の構造」)に、1本過剰な染色体が存在することでおこります。
 発生頻度は、出生1000人に1人といわれています。大部分は遺伝することのない散発性のものですが、21番染色体の一部が他の染色体に付着している転座(てんざ)例では、血のつながった家族のなかにも同じ病気の人がいて、遺伝することがあります。
 かつては蒙古症(もうこしょう)と呼ばれていましたが、現在では、この病気を最初に報告したダウン博士の名にちなみ、ダウン症候群と呼ばれています。
[症状]
 目と目の間隔が開き、目じりがつりあがった特有の顔貌(がんぼう)(顔つき)をしており、短い頭、幅広く扁平(へんぺい)な鼻根(びこん)、低い鼻すじ、長い舌、変形した耳介(じかい)、太く短いくび、幅の広い手、太く短い指などの特徴がみられます。全身の筋肉の緊張が低下し、精神発達遅滞(せいしんはったつちたい)もみられます。
 そのほか、心臓の形態異常、食道閉鎖症(へいさしょう)、先天性幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)、十二指腸閉鎖症、巨大結腸症(けっちょうしょう)、鎖肛(さこう)などの内臓の形態異常をともなうことも少なくありません。
[治療]
 内臓の形態異常があればその治療を行ない、精神発達遅滞の程度に応じて、社会生活がいとなめるよう訓練します。

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世界大百科事典 第2版の解説

常染色体異常に起因する症候群の一つ。1866年,J.L.H.ダウンが特異な顔貌をもつ精神遅滞として記載し,この名がある。かつては蒙古症(モンゴリズムmongolism)とも呼ばれたが,これは人種的偏見に基づく不適切な表現であるため,今日では用いられない。21番めの染色体の異常が原因で,出生約700人に1人の割合でみられるが,母親の出産年齢が高いほどその頻度は大きくなる。染色体の異常のほとんどは21番染色体が3本ある21トリソミー(90~95%)で,そのほか,転座型(5~6%),モザイク型(1~3%)がある。

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大辞林 第三版の解説

1866年ダウン(J. Langdon Down1826~1896)が報告したことからの名
染色体異常の一。多くは二一染色体の過剰による。一般に精神発達や発育が障害され、先天性の心疾患を伴うこともある。俗に蒙古症ともいわれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

特有な顔貌(がんぼう)と精神遅滞を特徴とする、常染色体異常による疾患である。650~700人に1人の割合で出生する。
 イギリスの医師ダウンLangdon Downが1866年に、特殊な精神遅滞の一群を「蒙古人型白痴(もうこじんがたはくち)」と報告したので、蒙古症(モンゴリズムMongolism)ともよばれてきたが、1959年にレジャンJ. Lejeuneらによって病因が染色体異常であることが究明され、疾患単位として確立して以来、ダウン症候群とよばれるようになった。
 臨床像としては、体型は低身長で肥満傾向がみられ、筋緊張が低下するので、乳児期の首の座りや寝返りなどの運動発達が遅滞する。知能は種々の程度の精神遅滞を示す。性格は温順である。顔貌が特徴的で、頭は幅が広い短頭、顔は平坦(へいたん)、目は目じりが外上方につり上がり、目頭は瞼(まぶた)が垂れ下がって覆われ、鼻根部は幅広くて扁平(へんぺい)で、鼻梁(びりょう)(鼻すじ)が低く、いわゆる鞍鼻(あんび)を示す。また、口を開いて舌を出していることが多く、歯や耳の変形を認めることがある。手では、指、とくに第5指(小指)が短く、内方に彎曲(わんきょく)し、斜指症を示す。手掌では猿線(さるせん)(手掌を横断する線)が半数近くにみられる。
 ダウン症候群は、先天性心疾患、消化管の形態異常、白血病の合併頻度が高い。
 診断は、臨床的特徴と皮膚紋理(掌紋)から比較的容易であるが、染色体検査によって確定する。
 染色体異常は常染色体21番目のトリソミーtrisomy(三染色体性)で、通常は1対2本の染色体が減数分裂時の不分離によって3本あり、ダウン症候群では90~95%にみられる。このほか、過剰の21番目の染色体が他の染色体に転座している転座型トリソミーや、21番目のトリソミーと核型正常細胞が混在しているモザイク型トリソミーなどが、わずかながらみられ、混在の度合いによって臨床症状が著しく異なる。[山口規容子]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (Down's syndrome の訳語) 染色体異常による先天性疾患。頭部、耳、指などが小さく、顔面が平らで、眼がつり上がるなどの外的特徴をもつ。心臓病や知的障害を伴うことが多い。一八六六年イギリスの医師J=L=H=ダウンが発見し、その顔貌から蒙古症とも呼ばれた。〔うそつき食品(1969)〕

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 21番染色体が3本あることにより、精神発達の遅れ、特徴的な顔貌(がんぼう)、多発奇形を示す症候群です。日本では新生児1000人に1人の割合でみられます。母親の年齢が高くなるほど出生頻度も高くなり、近年の高齢出産の増加に伴い頻度は高くなりつつあります。

原因は何か

 卵子や精子がつくられる過程で、染色体がうまく分かれないことによります。まれに21番染色体が別の染色体に結合しているために起こることもあります(転座型(てんざがた))。また、受精後の初期の細胞分裂の際に染色体の不分離が起こるモザイク型も、ごく少数ですがあります。

症状の現れ方

 つり上がった眼、幅広く扁平な鼻、内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)(目頭をおおうひだ状の皮膚)などからなる特有の顔をしています。指が短いなどの小奇形を伴います。乳児期には体の筋肉が軟らかく、体重の増えもよくないことがあります。

 半数に心臓の異常がみられ、その他、腸の奇形や白血病(はっけつびょう)などがみられることがあります。知能や運動の発達は遅れ、通常の子どもの2倍くらいの時間がかかります。年長児でも知能指数は30~50くらいです。ただし、成人では就業している人も少なくありません。

検査と診断

 特徴的な症状から診断されます。確定診断は染色体検査によります。

治療の方法

 根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行います。合併症の早期発見や健康管理のため、定期的な健診が大切です。平均寿命は約50歳といわれています。

 重い合併症のないダウン症候群の子は元来健康な子どもなので、訓練・教育的な対応が重要です。最近は早期からの集団保育・教育が望ましいといわれています。家族の会などから情報を得ることも役立ちます。

 遺伝カウンセリングも重要です。とくに転座型の場合は、次の子どもの再発率を知るためには両親の染色体検査が必須です。

小林 武弘

 21番染色体のトリソミーによる疾患です。目じりが少しつり上がり両目の間隔が広く、鼻筋が低く舌がやや大きい顔つきが共通で、手足が小さく筋肉の緊張が弱いなどの症状があります。先天性の心疾患、食道や十二指腸の狭窄(きょうさく)あるいは閉鎖、鎖肛(さこう)、血液細胞の異常増加を伴うこともあります。

 心疾患が重症であれば発達が進みにくいこともあり、手術がすすめられることもあります。発達が遅れやすいので注意が必要ですが、医療機関の受診や遺伝カウンセリングの際、あるいは保健所、親の会などで積極的に情報を得ることが助けになります。

 適切な赤ちゃん体操や訓練に早期から取り組むとともに、保育所・幼稚園で集団の一員として過ごすことによって、著しい進歩がみられる場合が多く、社会の各方面での活躍が注目されている方も少なくありません。

 出生の頻度は新生児800人に1人で、多くの両親の染色体構成は正常ですが、数%に親の染色体転座(てんざ)が原因となる家族性の場合があります。

 21番染色体が1本過剰になるのは、卵子形成時の減数分裂に伴う染色体分配の異常によることが多く、このことが高齢出産でダウン症候群の出生の確率が上昇する原因とされています。

古山 順一, 玉置 知子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内のダウン症候群の言及

【遺伝病】より

…(a)染色体異常 染色体の数もしくは構造上の変化によって異常がでる場合,これを染色体異常と呼ぶ。染色体の数が47になるものとしては,たとえばダウン症候群(蒙古症ともいう。21番目の常染色体が1個余分にある),クラインフェルター症候群(性染色体がXXYの構成となる)などがある。…

【癌】より

…両側性の網膜芽細胞腫がその例で,染色体の13qに欠損がある。メンデル式遺伝ではないが,先天的に常染色体の異常があり,癌を発生しやすい病気として,ダウン症候群(白血病),クラインフェルター症候群(乳癌)その他がある。また常染色体劣性遺伝病として,癌を多発するものとして,色素性乾皮症(皮膚癌),毛細血管拡張性失調症(悪性リンパ腫や白血病),ブルーム症候群(白血病)などがある。…

【染色体異常】より

…ただし,モノソミーの場合は生存が困難になるところから比較的例が少なく,異数体としてよく知られているものにはトリソミーが多い。ダウン症候群(21トリソミー),18トリソミーなどがある。なお,異数体ではないが,受精後第1分裂に際し染色体の不分離が起こると,同一個体内に2種類以上の遺伝子型の異なる細胞群が混在することになるが,これをモザイクmosaicという。…

【先天性心疾患】より

… 多因子性遺伝による場合のほかに,ヌーナン症候群やマルファン症候群などのような単一遺伝子による遺伝性疾患において,心臓病を合併しやすいことが知られている。また染色体異常であるダウン症候群(21トリソミー)では約50%の頻度で先天性心疾患を合併し,とくに心内膜床欠損を伴いやすい。13トリソミーや18トリソミーではさらに高率に心臓奇形を伴っている。…

【羊水診断】より

…後述の先天代謝異常の検査の場合に比べて,一定の検査によって多数の疾患を診断できること,治療不可能な対象疾患の頻度がはるかに高いなどの理由から,早期に実用化され,威力を発揮している。主として転座型ダウン症候群の子をもつ妊婦,21‐トリソミー 21‐trisomy(21番目の染色体が3本ある異常)の出生頻度の高い高年妊婦(一般妊婦では胎児600人に1人であるが,45歳以上では50人に1人の率となる)や放射線大量暴露の場合,LSDなど特殊薬剤使用の場合など,異常の存在する危険度の高い妊婦の場合に行われる。
先天性代謝異常の診断]
 羊水上澄み成分中の物質の異常増加,羊水細胞成分の組織化学的検査(異常物質の細胞内蓄積),培養細胞による酵素活性測定など,対象疾患によって異なる種々の方法により診断する。…

※「ダウン症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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