日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トマス(William Isaac Thomas)
とます
William Isaac Thomas
(1863―1947)
アメリカの社会学者、社会心理学者。シンボリック相互作用論者の一人。バージニア生まれ。テネシー大学で言語学などを学び、ドイツに留学。帰国してシカゴ大学の大学院で社会学を修め、1896年に学位を取得。同年からシカゴ大学の教壇に立ったが、1918年に同大学を辞し、その後はニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチNew School for Social Researchとハーバード大学でそれぞれ数年間、教職を務めた。アメリカ社会学会会長にも就任。四つの願望(応答、承認、新しい経験、安全)説、トマスの定理ともよばれる状況規定論、態度―価値の図式などで知られる。社会統制と社会変動過程、社会組織・文化とパーソナリティーなどをめぐる考察、社会調査に対する関心とその成果などが今日に至るまで注目されてきている。ズナニエツキとの共著『ヨーロッパおよびアメリカにおけるポーランド農民』5巻(1918~1920)が有名だが、ほかにも『不適応の少女』(1923)などがある。
[山岸 健]
『W・I・トーマス、F・ズナニエツキ著、桜井厚訳『生活史の社会学』(1983・御茶の水書房)』