フランスの数学者。モンベリアールの生まれ。1946年パリの高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)を卒業(この間、一時ドイツ軍に捕らえられたとも伝えられる)、さらにストラスブール大学で幾何学、とくにトポロジーを教授エーレスマンCharles Ehresmann(1905―1979)について研究した。1951年パリ大学より「球面上のファイバー空間とスティンロート積」の論文によって学位を得た。この結果を用いて、1954年にコボルディズム理論を確立し、その業績によって、1958年フィールズ賞を受賞した。1960年代からトポロジーとくに写像の特異点の理論、およびその数学以外の対象(とくに生物)への応用を目ざしてカタストロフィー理論を構築し、1972年に大著『構造安定性と形態形成』を刊行、学界を驚かせた。この著は、従来の数学的な著作とはいいがたいが、彼の自然哲学が、彼の数学を基礎として縦横に展開されている。ストラスブール大学教授を経て、パリの高等科学研究所教授を務めた。
[野口 廣]
『弥永昌吉、宇敷重広訳『構造安定性と形態理論』(1980・岩波書店)』
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…カタストロフィー理論はカタストロフ理論ともいい,不連続現象を扱う数学的な理論である。1960年代にフランスのトムRené Thomは,微分位相幾何学の一分野である特異点の理論を深く研究し,この理論が数学以外の科学の分野,とくに生物の形態形成に応用できるのではないかとのアイデアを得た。トムはイギリスの生物学者ウォディントンC.H.Waddingtonらと協力してこの理論を発展させ,《構造安定性と形態形成stabilité structurelle et morphogénèse》(1972)を著して,カタストロフィー理論を発表した。…
…それは,生体の各部位の細胞はその位置を示す座標をもっており,再生や修復は座標の連続性と挿入細胞数の最少性の原理に従って実行されるとするものである。また,トムR.Thomは生物を一つの連続力学系とみなして,これにカタストロフィー理論を適用して形態形成の壮大な定性論を展開している。ただし,形態形成は各生物種にきわめて固有で,したがって多様な過程であるので,これらの理論のごとく,いくつかの原理で形態形成を説明することの意義について意見が分かれている。…
…カタストロフィー理論はカタストロフ理論ともいい,不連続現象を扱う数学的な理論である。1960年代にフランスのトムRené Thomは,微分位相幾何学の一分野である特異点の理論を深く研究し,この理論が数学以外の科学の分野,とくに生物の形態形成に応用できるのではないかとのアイデアを得た。トムはイギリスの生物学者ウォディントンC.H.Waddingtonらと協力してこの理論を発展させ,《構造安定性と形態形成stabilité structurelle et morphogénèse》(1972)を著して,カタストロフィー理論を発表した。…
…それは,生体の各部位の細胞はその位置を示す座標をもっており,再生や修復は座標の連続性と挿入細胞数の最少性の原理に従って実行されるとするものである。また,トムR.Thomは生物を一つの連続力学系とみなして,これにカタストロフィー理論を適用して形態形成の壮大な定性論を展開している。ただし,形態形成は各生物種にきわめて固有で,したがって多様な過程であるので,これらの理論のごとく,いくつかの原理で形態形成を説明することの意義について意見が分かれている。…
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