ハーモニカ(読み)はーもにか(英語表記)harmonica 英語

精選版 日本国語大辞典 「ハーモニカ」の意味・読み・例文・類語

ハーモニカ

〘名〙 (harmonica)⸨ハモニカリードオルガン属の楽器一つ。木のわく組内に音列をなす金属小片の簧(こう)(=した)を、吹奏または吸奏して演奏する。簧の音列の仕組みによって、単音、複音、オクターブ半音階のほか種々の調性のものがある。
※如是放語(1898)〈内田魯庵〉「裏店の悪太郎ハーモニカを翫弄(おもちゃ)にす」

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デジタル大辞泉 「ハーモニカ」の意味・読み・例文・類語

ハーモニカ(harmonica)

リード楽器の一。平らな小箱型で、穴の並んだ側面に口を当て、息を吸ったり吐いたりして内部の金属製リードを振動させて音を出す。ハモニカ。
[補説]米口語でmouth harpまたはharpとすることから、ハープともいう。→ブルースハープ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーモニカ」の意味・わかりやすい解説

ハーモニカ
はーもにか
harmonica 英語
Mundharmonika ドイツ語
harmonica à bouche フランス語

気鳴楽器一種マウス・オルガンmouth organ、マウス・ハープmouth harpなどともよばれる。基本的な形は、フリーリードを1列に並べ、個々に呼気・吸気を通す穴を設けて箱形のケースに収めたものである。普通、呼気で振動するリードと吸気で振動するリードを交互に並べ、隣接の2音が同時に鳴らないようにしている。これを唇の間にもってきて、左右に動かして必要な音を得、不必要な穴は舌でふさぐなどして演奏する。口腔(こうこう)の形や舌の位置を変えて音色を変化させたり音高を変化させることができる。また、楽器を手で覆うとくぐもった音になり、この変化を急速につけると音を細かく揺らすこともできる。

 ハーモニカは複音型と単音型に大別することができる。複音型は一つの音に対して2枚のリードが用いられるような構造になっているもので、この2枚のリードは完全に同一の音高ではなく、微妙にずらせてある。そのためにうなりが生じ、独特の音色が得られる。日本でよく用いられるトレモロ・ハーモニカはこのタイプである。単音型は一つの音に対してリード1枚で、うなりは生じない。合奏においても純粋な響きを得やすいことから、欧米では単音型が主流となっている。

 音の配列は、各音高のリードを取り付ける場所をかえることで簡単に変更できるので、さまざまな種類がある。一般的には全音階を基本とし、長調の楽器であれば吹くと鳴る音がド、ミ、ソ、吸うと鳴る音がそれ以外となっていて、主和音を簡単に出せるようになっている。また、半音階ハーモニカは半音異なる二つの全音階ハーモニカをなんらかの形で組み合わせたもので(たとえばハ長調と嬰(えい)ハ長調)、上下2列に並べたものや、レバーを押すことで半音上の調に移行できるようにしたもの(スライド式クロマティック)などがある。

 ハーモニカが日本に伝えられたのは1890年代(明治20年代中ごろ)といわれる。第一次世界大戦でドイツ製品の輸入が止まった1916~1917年(大正5~6)ごろ日本でも製造が始められ、安価で手軽に音の出せる楽器として、昭和の初めにかけ一般大衆の間に広まり、演奏活動も盛んに行われた。演奏家としては川口章五(しょうご)、宮田東峰(とうほう)らの名があげられる。第二次世界大戦後はかつての華々しさはないが、教育楽器としての需要もあり、製造面では日本のハーモニカは世界的な品質を誇っている。

[卜田隆嗣]


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百科事典マイペディア 「ハーモニカ」の意味・わかりやすい解説

ハーモニカ

楽器の名称。(1)グラス・ハーモニカglass harmonica。ガラスのコップの縁をぬれた指でこすると音が出ることを原理とした体鳴楽器(楽器参照)。大小のガラスの皿を軸にとりつけ,ペダルで回転させる機械仕掛のものも18世紀後半に作られた。モーツァルトやベートーベンもこの楽器のための作品を残している。(2)ハーモニカharmonica。息で鳴らすフリー・リードの楽器の一種で,口にくわえて演奏する。東洋の(しょう)からフリー・リードの原理を採用した楽器とされ,19世紀初頭からアコーディオンハルモニウムなどと併行してオーストリアやドイツで開発,発展。各種あるが,一般的なものは複音ハーモニカで,半音なしの約3オクターブ21穴が2列に並び,1音について2穴・2リードを使用,2つのリードの音律をわずかにずらすことによって音色の単調さを避ける。ハ・ホ・ト音は吹くと鳴り,他は吸うと鳴るので,舌の操作による重音が容易。日本では音楽教育の上でポピュラーだがビラ・ロボスの協奏曲(1955年)なども知られ,アコーディオンとともに,近年は独奏楽器としても注目を集めている。→リード

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世界大百科事典 第2版 「ハーモニカ」の意味・わかりやすい解説

ハーモニカ【harmonica】

多数のリード(振動体)を収めた箱状の楽器で,奏者の息によって鳴らす。マウス・オーガン,マウス・ハープ,ときには単にハープともいう。本来の形は,箱の一側面に息の通路の穴が並び,直接そこに口をつけるが,初等教育用に急成長した鍵盤ハーモニカは,吹込口が1ヵ所だけで,ピアノやアコーディオンと同形式の鍵盤で音を選ぶ。日本では1音に対しリード2個を用いる複音型,それも両者の調律に微差をつけてうならせるトレモロ・ハーモニカが好まれるが,欧米では1音1リードの単音型が中心である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハーモニカ」の意味・わかりやすい解説

ハーモニカ
harmonica

楽器の一種。口にくわえて吹奏するフリー・リード楽器。 1821年にベルリンの F.ブッシュマンによって,ムンデオリーネと名づけられて発表された。小型の木箱にあけた穴に金属製のフリー・リードをはめこみ,全体を金属板でおおったもので,2~4オクターブの音域のもののほか,低音用もある。

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