バナジウム(英語表記)vanadium

翻訳|vanadium

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

元素記号V,原子番号 23,原子量 50.9415。周期表5族元素。天然にはカルノー石,パトロナイトなどとして産出する。岩石中に広く分布し,地殻における存在量は 135ppm,海水中の平均濃度は 2μg/l海洋生物,特にホヤ類中に著しく濃縮されていることが知られている。単体銀白色の金属で,高品位のものは展延性がある。単独で用いられることはほとんどなく,特殊や強力チタン合金などの添加元素として用いられ,合金の性質を改善する効果が大きい。融点約 1700℃,比重 5.98。塩酸,冷硫酸に不溶,熱硫酸,フッ化水素酸,硝酸に可溶。酸化数4,5の化合物が安定である。モリブデン-バナジウム鋼,クロム-バナジウム鋼などの高張力鋼の製造に用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

元素記号はV。原子番号23,原子量50.9415。融点1917℃,沸点3420℃。元素の一つ。1830年セフストレームが確認。鋼灰色の金属。空気中で安定。酸には侵され難いが,硝酸,フッ化水素酸などに溶ける。合金とするほか,酸化物は接触式硫酸製造の触媒として用いられる。堆積岩中に広く少量分布。主要鉱石はバナジン石,カルノー石など。酸化物を金属カルシウムなどで還元して金属を得る。
→関連項目耐熱鋼チタン合金レアアース

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

周期表元素記号=V 原子番号=23原子量=50.9415地殻中の存在度=135ppm(18位)安定核種存在比 50V=0.25%,51V=99.75%融点=1890℃ 沸点=約3000℃比重=5.98(18℃)電子配置=[Ar]3d34s2おもな酸化数=II,III,IV,V周期表第VA族に属するバナジウム元素の一つ。ドイツ語から俗にバナジンVanadinということもある。1830年スウェーデンのセフストレームN.G.Sefström(1787‐1845)がスウェーデン産の鉄鉱石中から新元素を発見し,これを北欧神話の美の女神Vanadis(フレイヤFreyjaの別名)にちなんでバナジウムと命名した。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

周期表第5族に属し、バナジウム族元素の一つ。原子番号23、元素記号V。1801年メキシコの鉱物学者デル・リオAndrés Manuel del Rio(1764―1849)は鉛鉱石から新元素を発見し、エリスロニウムerythronium(赤い元素の意)と命名したが、のちに誤認であるとして取り消した。1830年スウェーデンのセフストレームNils Gabriel Sefström(1787―1845)はスウェーデン産鉄鉱石から化合物がさまざまな色を呈する新元素を発見し、スカンジナビアの愛と美の女神バナディスVanadisからバナジウムと命名した。同年ドイツのウェーラーはエリスロニウムとバナジウムが同一元素であることを確認した。

 バナジウムは堆積(たいせき)岩に広く分布し、地殻中の存在度は比較的高いが、富化鉱床は少ない。石炭、石油に含まれ、ホヤ類の血液細胞にも存在する。バナジウム酸塩を還元して得られる単体金属は銀白色であるが、不純物の除去が困難であり、性質も不純物によって大きく影響を受ける。フッ化水素酸以外の非酸化性酸には侵されないが、酸化性酸、アルカリには溶ける。空気中で加熱すると、褐色、灰色、黒色、暗青色、橙赤(とうせき)色と変化して酸化バナジウム(Ⅴ) V2O5にまで酸化される。延伸性、機械的強度を増加させる合金鋼材料として利用される。酸化数+Ⅱから+Ⅴまでの化合物が多数知られているが、酸化状態および結合状態によってさまざまな色調を呈する。

[岩本振武]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (vanadium) 金属元素の一つ。元素記号V 原子番号二三。原子量五〇・九四一五。鋼灰色で、空気中で安定、鋼に添加すると強さを増すので特殊鋼の材料として用いられる。バナジン。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

化学辞典 第2版の解説

V.原子番号23の元素.電子配置[Ar]3d34s2の周期表5族遷移金属元素.旧元素名バナジン.1830年,スウェーデンのN.G.SefströmとJ. Berzelius(ベルセリウス)が同国産の鉄鉱石を分析して発見し,北欧神話の愛と美の女神Freyja Vanadisから命名したが,じつは1801年にメキシコのA.Manuel del Rioがすでに見いだしていたものであることがわかった.原子量50.9415(1).天然には唯一の安定同位体.質量数51(99.750(4)%)と50(0.250(4)%)(半減期1.4×1017 y,β,EC)が存在する.このほか,40~65の放射性同位体がある.
バナジウムの地殻中の存在度は230 ppm で,堆積岩中にかなり広く分布しているが,単独の鉱床として存在することはまれである.主要鉱物はパトロン石(patronite,複雑な硫化物),褐鉛鉱(vanadinite,Pb5(VO4)3Cl),カルノー石(carnotite,K(UO2)VO4(3/2)H2O)などがある.資源として利用されるものは,チタン磁鉄鉱,カルノー石(ウラン鉱石),リン鉱石,鉛・亜鉛鉱石,原油などの副成分で,チタン磁鉄鉱自身,または主要目的物を得る際の鉱さい,重油ボイラーの煙灰や使用済み石油精製用脱硫触媒を原料としてV2O5が得られる.金属はV2O5のAlによる還元(テルミット法)や,塩化物のカルシウムによる還元による.超高純度( > 99.95%)のものは,ヨウ化物VI2の熱分解(van Arkel-deBoer法)や,塩化物VCl2の溶融塩電解で得られる.世界の可掘埋蔵量の38% ずつがロシアと中国,ついで南アフリカ(23%)で,おもにチタン磁鉄鉱である.わが国は,ほぼ全量を南アフリカ(49%),中国(25%),ロシア(8%)などから輸入している(2005年).超高純度のバナジウムは,腐食されにくい硬い鋼色の金属である.密度6.11 g cm-3(19 ℃).融点1887 ℃,沸点3377 ℃.5.40 K 以下で超伝導を示す.通常の酸化数2~5.水,塩酸,アルカリ水溶液に不溶,硝酸,熱濃硫酸,王水,フッ化水素酸,過塩素酸に可溶.高温ではたいていの非金属と反応し,塩素とはVCl4,窒素とは侵入型化合物VNをつくる.As,C,Si,Bなどとも反応して,多くは侵入型,非化学量論的化合物をつくる.空気中で熱すると,灰色VO,黒色V2O3,暗青色V2O4,橙赤色と順次変化し,V2O5まで酸化される.
バナジウムを鉄鋼に添加するとすぐれた高抗張力性,耐熱性,靭性,耐摩耗性などを示すので,高抗張力鋼,構造用鋼,高速度鋼製造用に大量に使用される.チタン,アルミニウム,ジルコニウムとの合金材料としても広く用いられる.Ti-Al-V合金は航空機・宇宙用材料,ゴルフクラブ用材料.鉄鋼分野の需要が約90% を占めるが,触媒,顔料用としても使われる.産業にとって欠くことのできない重要なレアメタルの一つで,国家備蓄制度の対象となっている.「バナジウム及びその化合物」は大気汚染防止法・有害大気汚染物質である.[CAS 7440-62-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

マラドーナ

[生]1960.10.30. ブエノスアイレスアルゼンチンのサッカー選手。アルゼンチンリーグ 1部に史上最年少の 15歳でデビュー。代表チームにも 16歳4ヵ月の最年少デビューを果たした。1979年,...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

バナジウムの関連情報