翻訳|histamine
β-イミダゾールエチルアミンともいう。血液や多くの組織に存在する生理活性物質。組織中ではマスト細胞,血液中では白血球の好塩基球の顆粒(かりゆう)中に見いだされる。血管拡張や膜透過性の増大,平滑筋の収縮を引き起こす。大量に体内に存在するとアナフィラキシー(アレルギーの一種。即時型過敏症)を起こす。アナフィラキシーの原因は,IgE免疫抗体がマスト細胞や好塩基球を破壊し,ヒスタミンやヘパリンなどを放出することにある。その結果,発疹や吐き気,くしゃみ,痙攣(けいれん),下痢,呼吸困難などの症状を呈する。これらの症状は,ジフェンヒドラミンなどをはじめとする多くの抗ヒスタミン薬によって抑えられる。これらの薬剤は,ヒスタミンの作用に対して拮抗作用があることが知られている。また動物組織中には,ヒスタミンの酸化分解を触媒するジアミンオキシダーゼが存在する。また細菌はタンパク質の腐敗に際してヒスチジンからヒスタミンをつくる。そのため,食中毒においてアナフィラキシー症状を呈することがある。
執筆者:柳田 充弘
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1H-imidazole-4-ethanamine.C5H9N3(111.15).肉などの腐敗に際し,ヒスチジンの脱炭酸によって生成するが,種々の動物,植物組織に広く分布している.1,4-ジアミノ-2-ブタノンをチオシアン化カリウムで環化したのち,塩化鉄(Ⅲ)で処理して合成する.針状結晶.融点83~84 ℃,沸点209~210 ℃.水,エタノールに可溶,エーテルに難溶.中枢神経にも局在し,神経伝達に関与している.毛細血管を拡張する.組織内で多量に生成するとアレルギーやアナフィラキシー症状を起こす.胃液分泌促進剤.[CAS 51-45-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…これらの抗体のうち,免疫グロブリンであるIg E抗体(レアギンreaginともいう)は組織固着性があり,結合組織中に存在するマスト細胞の表面に固着する。そこに病因となる抗原が再び侵入してくると抗原抗体反応がマスト細胞の表面で起こり,その結果,マスト細胞に含まれている顆粒が脱顆粒現象を起こし,顆粒の中に含まれているヒスタミン,SRS‐A(slow reactive substance of anaphylaxis),ECF(eosinophile chemotactic factor)などの化学伝達物質を細胞外に遊離する。すると,これらの化学伝達物質の作用によって,血管の透過性の亢進,平滑筋の収縮,腺分泌の亢進,好酸球の遊走などの反応が起こり,その結果,アレルギー疾患が起こると考えられている。…
…これらの皮膚病によるかゆみは,いずれもかゆみをおこす発痒物質が作られたために生ずる。蕁麻疹はアレルギー性疾患で,体に入ったアレルゲンつまり抗体が血液中の抗体と反応してヒスタミンを遊離するためにおこる。ヒスタミンは体の中で作られる強力な発痒物質である。…
…IgEクラスの抗体は,肥満細胞や好塩基性白血球のIgE‐Fcレセプターに強く結合する。これに抗原が結合すると,細胞は刺激を受け,細胞内のヒスタミン顆粒からヒスタミンが細胞外へ放出される。また,SRS‐A(slow‐reactive substance of anaphylaxisの略)とよばれる物質も生成し放出される。…
…通常は,1~数時間の経過をたどる,かゆみを伴った境界のはっきりした皮膚の浮腫をいう。浮腫は真皮の上層にみられるが,それは肥満細胞からヒスタミンが遊離され,その作用によって血管の透過性が増すため血漿が組織内へ流出して生じたものである。この肥満細胞からのヒスタミン遊離はIgE抗体(レアギン)と抗原とによるI型アレルギーによってひき起こされるが,これとは別にヒスタミン遊離物質が直接肥満細胞に作用してもヒスタミンの遊離が生じる。…
…毛やとげ,針が機械的な刺激を与える例として,コンフリーの葉,ムギの穂,イラクサ,サボテン,バラのとげなどがある。イラクサは折れて皮膚内に残った刺毛からアセチルコリンやヒスタミンが放出されるため,はれやかゆみをひきおこす。ヤマノイモ,サトイモ,カラスビシャク,マムシグサなどの根茎にはシュウ酸カルシウムの鋭くとがった針状結晶が存在し,皮膚を刺激し炎症をおこす。…
※「ヒスタミン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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