ビーコ(その他表記)Giambattista Vico

デジタル大辞泉 「ビーコ」の意味・読み・例文・類語

ビーコ(Giambattista Vico)

[1668~1744]イタリア哲学者デカルト合理主義を批判し、歴史こそ人間精神を反映する鏡であるとし、歴史主義への道を開いた。著「諸民族の共通性質についての新科学原理」など。ビコ

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精選版 日本国語大辞典 「ビーコ」の意味・読み・例文・類語

ビーコ

  1. ( Giambattista Vico ジャンバチスタ━ ) イタリアの哲学者。デカルトの分析的な考え方に反対し、哲学および歴史の統一、知識の総合を主張し、独自の社会哲学歴史哲学を展開した。主著「諸民族の共通性質についての新科学原理」。(一六六八‐一七四四

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改訂新版 世界大百科事典 「ビーコ」の意味・わかりやすい解説

ビーコ
Giambattista Vico
生没年:1668-1744

イタリアの哲学者。貧しい本屋の三男としてナポリに生まれ,半ば独学で勉強をつづけて,1694年ナポリ大学で法学学位を受け,99年から同大学で修辞学を教え続けた。生涯経済的にも名声の点でも恵まれなかったが,独創的な研究を残した。彼の初期の著述としては,《今日の研究法について》(1709)と,《イタリア最古の知恵》(1710)がある。当時はデカルトの勢力が圧倒的で,ナポリも例外ではなかった。ビーコもその影響を強く受けたが,やがて反旗を翻す。数学もとづくデカルト流の探究方法では,具体的な人間世界は解明できない。蓋然的知識はデカルトによって峻拒されるが,人間の歴史は蓋然的に知られるのみ。こうして,明晰判明というデカルト的原理に対抗して,〈真なるものverumは作られたものfactumである〉とするビーコ的原理を立て,自然科学に対する歴史科学の独自な方法論を強調した。すなわち人間は自分が作ったもの以外には確実に認識できないという独創的認識論であり,この立場からビーコは,人間の作りあげた社会すなわち歴史を,その起源にまでさかのぼって究明し,歴史的洞察を介して人間性の本質を明らかにしようとした。

 前2著はビーコが,この独自の着想によって歴史的追究を続けながら,新しい学問方法を確立してゆく行程を示している。具体的個別的歴史のなかに普遍的本質が見いだされるという信念は,やがて《万民法の原理》全3部(1720-22)となって表明される。これはさらに彼の新しい学問方法を全面的に陳述しようとする《新しい学》へと発展する。1725年第1版出版。しかし反響はきわめて小さかった。ビーコは弁明を書いたり,改訂を施したりして第2版を出したが(1730),冷遇は変わらなかった。彼はその後も改訂をつづけて,第3版が刊行されたのは死後6ヵ月のことであった。

 《新しい学》は独創にみちた著述である。世界の歴史は,神々と英雄と人間との時代に三分され,循環回帰しつつ発展するとされる。その点で世界史の展開は合理的であるが,その展開は神の摂理によって導かれ,永遠の理念史に裏打ちされているとされる。また言語を記号としてとらえ,神話を英雄時代の人々の詩的象徴として理解するなど,斬新な着想にあふれている。《新しい学》はむしろその独創性のゆえに,長い間注目されることなく忘れられてきたが,ヘルダーを介して近代歴史哲学に重要な影響を及ぼしていることは明らかで,20世紀になってから新たに関心を引き,最近ではビーコ復興の声が叫ばれている。ほかに1725年ころ執筆した《自伝》も自伝文学を代表するものとして名高い。
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百科事典マイペディア 「ビーコ」の意味・わかりやすい解説

ビーコ

イタリアの歴史哲学者,法学者。ナポリ大学修辞学教授。デカルト主義全盛の当時にあって,〈真なるものは作られたもの〉とする独創的認識論のもと,漸新な学問論,歴史哲学を提唱するとともに,自然法思想の発展にも寄与した。ヘルダークローチェを経て,現代にあっても再評価の機運が高い。著書《イタリア人の太古の知恵》(1710年),《万民法の原理》(1720年―1722年),《新しい学》(1725年)。
→関連項目社会科学

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世界大百科事典(旧版)内のビーコの言及

【メッツォジョルノ】より

… 一方,17世紀後半に,デカルトの合理主義思想とガリレイの科学的探究の精神が結びついた形でナポリにもたらされると,新たに形成されつつあった市民層は,教会と世俗権力との結びつきを嫌って,これを受け入れた。この傾向をまっこうから批判したのが,G.ビーコである。彼は,歴史を神々の時代,英雄の時代,人間の時代に分け,それぞれが原始的感覚,詩的想像力,人間的理性に対応しつつ永遠に回帰する,と主張した。…

※「ビーコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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