フォルマント(英語表記)formant

翻訳|formant

デジタル大辞泉 「フォルマント」の意味・読み・例文・類語

フォルマント(formant)

音声スペクトル分析において、ある音声を特徴づける特定周波数領域。周波数の低い順から第1フォルマント、第2フォルマントと名付けられ、音のエネルギーが集中する。音韻区別に用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「フォルマント」の意味・わかりやすい解説

フォルマント
formant

声道(声門から上の咽頭口腔鼻腔を含む部分)内の空気の共鳴周波数に対応する倍音群。母音鼻音,流音は舌や顎を移動させて声道の形を変えることにより独自の共鳴室をつくる。こうした共鳴室に応じて母音は三つの固有の倍音すなわちフォルマントをもつ。音声分析装置ソナグラフにより図示されたソナグラムには,周波数の縦軸に沿って3本の濃い線が現れる。これを下から第1,第2,第3フォルマントと呼ぶ。重要なのは第1フォルマント(F1)と第2フォルマント(F2)であって,これらが母音の音質を決定する。

 F1は〈イ,エ,ア〉と高くなり,〈ア,オ,ウ〉と低くなる。これは舌の位置が高くなるほど口蓋に近づいた舌の前の部分に形成される共鳴室が小さくなり,低くなるほど共鳴室が大になるからで,共鳴室が大きくなれば周波数は低くなり,共鳴室が小さくなれば周波数は高くなる。

 また,F2は〈イ,エ,ア,オ,ウ〉の順に低くなる。これは盛り上がった舌の後部に咽頭を含めて形成される共鳴室の大きさに対応している。
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百科事典マイペディア 「フォルマント」の意味・わかりやすい解説

フォルマント

母音声帯振動によってできる基本周波数(75〜300Hz)と,その高調波(倍音)の集合からなりたつ音で,調音過程で高調波中のある特定の周波数域にあるものだけが,特に強められて外部に放射される。この強められた成分音をフォルマントといい,各母音に特徴的な強さを示す。音声をソナグラフで分析すると,特有な図形となって現れ,基本振動数の2倍,3倍,4倍の第1,第2,第3フォルマントが言語音の分析上特に重要。→音声学
→関連項目音声合成音声タイプライターボコーダー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォルマント」の意味・わかりやすい解説

フォルマント
formant

音響的にある音の音色を特徴づけ,音色の異なる他の音から区別させる周波数成分,またはその集り。音声などの各周波数帯における強さの分布として表わす。一般に有声音は,75~300サイクルの基本周波数 (基本音,基本波) と無数の高調波 (倍音) に分析されるが,声道の共鳴のために特定の成分だけが強められ,特有の言語音として聞える。音声スペクトログラフにかけるとその共鳴部分が濃い縞紋様として現れる。それを低いものから順に第1フォルマント,第2フォルマント…と呼ぶ。母音の聞き分けには特に第1,第2フォルマントが重要な役割を果している。なお,フォルマントは声のピッチ (高さ) とは独立に,それぞれの音 (特に母音) に一定しているものである。

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世界大百科事典(旧版)内のフォルマントの言及

【音声学】より

…このような声帯振動の早さによる音の高さのほかに母音は2種類の固有の高さをもっている。音声をスペクトログラフ(ソナグラフ)にかけると,これらの高さは横縞となってフィルム(スペクトログラム)に写し出されるが,この縞をフォルマント(略称F)と呼ぶ(図11参照)。そして周波数の低いものから順次,第1,第2,第3フォルマントと名づける。…

【ソナグラフ】より

…図面に4本の横縞が浮き出ているが,これらはそれぞれの周波数で示された付近にその音の特徴をなす強さ,すなわち高い振幅が生じていることを意味する。下から第1,第2,第3,第4フォルマントと名づけられ,重要なのは第1フォルマント(F1)と第2フォルマント(F2)である。前半の[a]では,710Hzと1100Hzあたりに,後半の[]では,400Hzと1900Hzにフォルマントが位置している。…

※「フォルマント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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