ブデンブローク家の人びと(読み)ブデンブロークけのひとびと(英語表記)Buddenbrooks

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ブデンブローク家の人びと (ブデンブロークけのひとびと)
Buddenbrooks

1901年に刊行されたトーマスマンの最初の長編小説。北ドイツのハンザ同盟都市リューベック指折りの豪商で父は市参事会員という有力者の家に生まれた作者は,出版社主S.フィッシャーのすすめをうけて自身の一族をモデルにこの作品を完成したが,20代前半の作者の手になるとは思えない完成度を示し,この作品を対象に1929年のノーベル賞が授与されている。1830年代から80年代にかけてのリューベックを中心舞台に,素封家四代の当主を軸として〈一家族の没落〉(副題)が描かれている。リューベックの社会・経済生活の細密描写から,かつて繁栄を誇った一都市の社会史,市民階級を中心とした時代史と評価される側面もあるが,作者はきわめてたくみな心理分析,心理描写を武器に,精神と生命のバランスの破綻から生まれる人間の存在感の希薄化の描写に力点をおいている。ここにはデカダンスへの共感と,その克服を志向する倫理性とがうかがわれる。
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百科事典マイペディア の解説

ブデンブローク家の人びと【ブデンブロークけのひとびと】

T.マン作の長編。《Buddenbrooks》。1901年刊。彼の出世作となった。リューベックの穀物商ブデンブローク家の初代から4代に至る歴史を描き,初代のたくましい生活力が,3代目トマスでは精神や芸術への関心に席を譲り,音楽にしか興味をもたぬハノー少年の死まで,一家族の没落の過程を克明に写す。

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