翻訳|blind
建築開口部の日よけ,調光,目隠しなどのための建具,造作。古くからのものでは,葭簀(よしず),すだれ,明り障子,格子,鎧(よろい)戸,ベネチアン(ベネシャン)・ブラインドVenetian blindなどがあり,近代になると,スプリングを利用して巻き上げるローラー・シェードroller shade,ベネチアン・ブラインドを二重ガラスの間にはさんだものなど,さまざまな新形式が考案されている。このような撤去・移動の可能なものではなく,恒久的に建築本体に組みこんだ日よけ装置のほうは,ブリーズ・ソレイユbrise-soleil(建築家ル・コルビュジエの命名)と呼んでいる。建築にはこうした外界からの影響を遮断する働きが多少ともそなわっているはずであるが,ブラインドは,より快適な室内環境を追求する努力や,それと同時に建築の装置としての特質をさらに際だたせようとする表現的意図を,端的に示すものといえる。現代におけるブラインドへの関心には,他に,冷房の普及により,外部からの熱負荷を軽減したいという経済的観点が働いている。
ブラインドに要求される性能は,直射光や外部視線を遮断しながら,通風や間接光,内側からのある程度の視野の確保を可能にし,しかも不要時には容易に撤去・移動しうることなどであるが,西欧ではこれに見合う考案はあまりなされず,ほとんどは東方起源であった。鎧戸の先駆的な形が初めて西欧に現れたのは十字軍以後の教会堂鐘楼で,角度をもたせた巨大なルーバー(羽根板)を鐘架の開口にとりつけ,これによって風よけと音響の拡散をはかったとみられるが,おそらくこれはイスラムの軍事施設などにみられた同様な装置を取り入れたものであろう。やがて鐘楼のルーバーを小型化したものが他の建物の越屋根や屋根窓の通気装置に用いられ,さらにこれが窓の外側にとりつける鎧戸となった。しかし近世初期までの住居の日よけ・目隠しの建具としては,突上げ板戸やガラス窓内側にとりつけた板戸などのほうが一般的で,鎧戸がひろく西欧に普及するのは,17世紀から18世紀にかけて,植民地の建築様式が逆輸入されたためであった。
現在もっともひろく用いられているベネチアン・ブラインドは,鎖や紐でルーバーの角度調節を行い,軽量化してすだれと同様に上方にたたみこめるようにしたもので,ベネチアを中心に用いられ始めたことから,この名がある。しかしイタリアでは,〈ペルシアーナpersiana〉あるいは〈ペルシアーナ・ア・サラチネスカpersiana a saracinesca〉(〈サラチネスカ〉は巻上げの機構をいうが,本来は〈サラセン風〉の意)などと呼ばれ,これもまた,東方起源のものであることを示している。
執筆者:福田 晴虔
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