翻訳|propylene
脂肪族鎖式不飽和炭化水素(アルケン)の一つ。化学式CH2=CH-CH3。ナフサの高温熱分解反応によって生産されるほか,石油の接触分解の副産物として得られる。実験室では,イソプロピルアルコールCH3CH(OH)CH3を固体酸触媒上に通し,脱水反応を行わせて製造することができる。エチレンとならんで重要な有機合成化学原料である。
常温・常圧下では気体であり,無色だが,やや臭気をもっている。沸点-47.0℃。引火性で,空気中で2.0~11.1%(容量)の範囲で爆発的に燃焼する。二重結合をもつので,重合反応,付加反応,酸化反応などの化学反応性に富み,この性質を利用して有機合成原料として使われる。
日本では石油化学工業において,ナフサを原料とし750~850℃の高温熱分解を行い,エチレン,ブチレンなどのオレフィン類とともに生産されている(ナフサ分解)。収率は原料ナフサの約15%(重量)。そのほか,石油精製工業において,ガソリン生産を主目的とする減圧軽油の接触分解プロセスから,その副産ガスの一部として生産される。アメリカでは,もっぱらこの方法によってプロピレンが生産されている。また,エチレンと2-ブテンから,次式に示す不均化反応によってプロピレンを生産することが可能であるが,工業的にはむしろこの逆反応を利用してエチレンと2-ブテンの製造を行っている。
触媒としては,モリブデン,タングステン,レニウムなどの酸化物が用いられる。
1980年における日本のプロピレン生産量は約260万tであり,これから最大の用途ポリプロピレンが90万t,アクリロニトリル47万t,プロピレンオキシド20万t,そのほかにアセトン,ブチルアルコール,オクチルアルコール(2-エチルヘキサノール)などの各種の誘導体が生産された(1995年の生産量は約350万t)。主要な誘導体を図に示す。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
炭素数3個の不飽和炭化水素(アルケンの一種)。プロペンpropeneともいう。合成化学工業ではエチレンとともに重要な化合物である。日本では年間約550万トン生産されている。天然ガス、石油精製の排ガス、ナフサや軽油の熱分解によりエチレンとともに得られる。エチレンと同様に、重合、酸化などの反応を受け、反応活性はエチレンよりも大きい。
常温では弱い刺激臭の引火性の気体。ポリプロピレン(合成繊維、合成樹脂)をはじめ多くの物質の合成原料として利用される。
[徳丸克己]
プロピレン
CH3CH=CH2
分子式 C3H6
分子量 42.1
融点 -185.25℃
沸点 -47.0℃
密度 1.5526(測定温度15.6℃,
1気圧,空気に対して)
引火点 -107.8℃
発熱量 492.0kcal/mol
爆発範囲 2.4~10.3容量%
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