翻訳|heroin
ジアセチルモルヒネの通称。麻薬。塩酸塩は白色の結晶性粉末で、水に溶けやすい。生体内で急速に加水分解され、モノアセチルモルヒネからさらにモルヒネとなって作用する。作用はモルヒネの2~5倍強く、持続時間は約2分の1である。すなわち、モルヒネよりさらに強力な鎮痛作用を有するが、依存性の発現も早く、反復投与により高度の精神的ならびに身体的依存を生じ、禁断現象がおこりやすい。ヘロインを注射すると緊張感が著しく低下し、眠気のあとに短い陶酔のときがくる。また、においに対する障害、皮膚のかゆみ、便秘、縮瞳(しゅくどう)がみられる。長期連用により禁断現象のほか、歯が抜けたり貧血をおこすなど慢性中毒症状もみられる。モルヒネの致死的な副作用は呼吸抑制で、大量投与時にみられるが、ヘロインも同様である。国際的に製造、販売、所持、使用が厳禁されている。医療用に使用することも禁止されている。用量が少なくて効くところから、密輸や不正使用される麻薬の中心的薬物となっており、世界的に取締りの対象となっている。
[幸保文治]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
diacetylmorphine.C21H23NO5(369.41).モルヒネのジアセチル誘導体.融点173 ℃,沸点272~274 ℃(5.6 kPa).-166°(エタノール).クロロホルム,エタノールに可溶,エーテル,水に難溶.本来,その塩酸塩が商品名ヘロインであった.塩酸塩は白色の結晶.融点229~232 ℃.水,エタノールに易溶.鎮痛,呼吸抑制作用はモルヒネより強いが,依存性を起こしやすく,いわゆる麻薬中毒にかかりやすい.現在では臨床的にも用いられず,麻薬取締法により,製造,所持,使用が禁止されている.[CAS 651-27-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…薬理学的には,アヘン総アルカロイドと,これから分離して得られるモルヒネ,コデイン,これらの半合成体(ヘロイン,オキシコドンなど),およびモルヒネ類似の薬理作用と依存性を有する合成薬物(ペチジンなど)をさす。英語はギリシア語のnarkē(麻酔,麻痺)に由来し,これらの薬物を摂取すると,意識が混濁したり,感覚が麻痺状態になることから,麻酔様状態を起こす薬物の意でつけられた。…
…58年には検挙人員が271人にまで減少して,覚醒剤犯罪はほぼ鎮静化した。 第2は,覚醒剤乱用が減少したのと相前後して顕著になってくるヘロインを中心とした麻薬乱用の増加であり,1963年には麻薬取締法違反による検挙人員が2571人に達している。この第2次薬物乱用期にも,63年の麻薬取締法改正による罰則の大幅な強化と麻薬中毒者の措置入院制度の新設,さらに不正供給組織の強力な摘発などが行われ,麻薬犯罪は64年以降急速に減少し,現在まで少数で推移している。…
※「ヘロイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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