ベクトル(英語表記)vector

翻訳|vector

デジタル大辞泉 「ベクトル」の意味・読み・例文・類語

ベクトル(〈ドイツ〉Vektor)

大きさと向きをもつ量。有向線分で表す。→スカラー
ベクトル空間要素であるげん
1から転じて)方向性をもつ力。物事の向かう方向勢い。「各省庁間のベクトル大小を比較する」「彼とはベクトルが合う」「組織内の各人がばらばらにベクトルを立てる」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ベクトル」の意味・読み・例文・類語

ベクトル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Vektor [英語] vector )
  2. 速度・力など大きさ、方向によって決まる量。スカラーに対していう。平面または空間の有向線分で表わし、向きと大きさの等しいものは等しいと考える。〔自然科学的世界像(1938)〕
  3. ベクトル空間の要素。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ベクトル」の意味・わかりやすい解説

ベクトル
vector

力を働かせて物を動かしてみると,同じ大きさの力でも,押すのと引くのではその効果はまったく違う。力は大きさだけでなく向きももつ。速度,加速度なども大きさと向きをもっている。このように大きさと向きをもった量のことをベクトルという。ベクトルは空間の向きをもった線分で表すことができる。線分の長さが大きさを表し,線分の向きがベクトルの向きを表す。線分の端点をP,Qとし,向きがPからQへ向かっているときPQと記す。このとき,Pを始点,Qを終点という。力のベクトルの場合は始点を作用点とも呼ぶ。

 数学では,始点を固定して考えると不便な場合が多く,P,Q,P′,Q′が同じ平面の上にあり,線分PQPQ平行で,かつPQを平行移動してPとP′を一致させ,QとQ′が一致するとき,PQPQとは同じベクトルを表すと考えるほうがつごうがよい。すなわち,PQPQの向き,方向,大きさが同じときは同じものと考えるのである(図1)。PQで表されるベクトルaの大きさは線分PQの長さと定め,これを|a|で示し,aの長さ,大きさ,絶対値などと呼ぶ。空間のかってな点Pを取ると,各ベクトルaについて点Qが存在して,aPQで表される。このときa=[PQ]と書くことにする。a=[PQ]と実数αとの積を,直線PQ上のPからみて,α≧0ならばQ側,α<0ならQと反対側の点Q′で,線分PQの長さが|α|となるものを取り,PQが表すベクトルと定める。これをaのα倍といい,αaで表す。aの実数倍の形のベクトルをaのスカラー倍という。二つのベクトルabが与えられ,aPQbQRで表したとき,PRが定めるベクトルをabの和といい,abで表す。このabはPの取り方によらない。この和の定め方を平行四辺形の法則という(図2)。abba,(ab)+ca+(bc),実数α,βについて,α(ab)=αa+αb,(α+β)a=αa+βaなどが成り立つ。PPで表されるベクトルを零ベクトル(ゼロベクトル)という。零ベクトルを0で表せば,a+0=a,0a=0が成り立つ。

 最初に述べた力のベクトルのように,始点が違うものは違うと考えるベクトルを束縛ベクトルといい,上記の平行移動で移りうるものは同じと考えるベクトルを自由ベクトルという。始点が同じ束縛ベクトルの和も平行四辺形の法則を使って定める。力のベクトルの場合,この和は力の合成にほかならない。

 空間の直交座標系xyzを与えたとき,x軸上の正方向のOPOPの長さが1のものが表すベクトルiをx軸上の単位ベクトルという。同様に,y軸上,z軸上の単位ベクトルj,kが定まる。これらを座標単位ベクトルという。各ベクトルaa=α1i+α2j+α3kと書けるが,この(α1,α2,α3)をaの座標成分という。aの長さはであり,αaの座標成分は(αα1,αα2,αα3)である。bの座標成分が(β1,β2,β3)ならば,abの座標成分は(α1+β1,α2+β2,α3+β3)である。

 ベクトルについて,P,Q,Rが同一直線上にあれば,abは共線であるという。これは,ともには0でない実数α,βが存在して,αa+βb=0となることと同じである。が共平面であるとは,P,Q,R,Sが同一平面上にあることである。共線のときと同様に,全部は0でない実数α,β,γがあって,αa+βb+γc=0となることと同値である。共平面でないベクトルabcは一次独立であるという。abcが一次独立であることと,[αa+βb+γc=0⇒α=β=γ=0]は同値である。例えば,座標単位ベクトルi,j,kは一次独立である。一次独立なベクトルabcが与えられれば,かってなベクトルはαa+βb+γcと書ける。

 ベクトルの内積を|a||b|cos(∠QPR)と定め,(ab)またはabで表す。(ab)=(ba),(abc)=(ac)+(bc),実数αについて,(αab)=α(ab)が成立する。(ab)=0となるとき,abは互いに直交するという。abの座標成分がそれぞれ(α1,α2,α3),(β1,β2,β3)ならば,(ab)=α1β1+α2β2+α3β3である。

 二つのベクトルが定める平行四辺形の面積は,|a||b|sin(∠QPR)である。P,Q,Rが定める平面に垂直で,長さがこの面積であるベクトルをabベクトル積といい,a×bで表す(図3)。ただし,a×bの向きは,aからbへ180度以内の角度でまわるとき,右ねじの進む方向と決める。a×b=-(b×a),(αa)×b=α(a×b),a×(bc)=a×ba×cが成り立つ。右手系の座標xyzを取り,座標単位ベクトルをi,j,kとすれば,a×b=(α2β3-α3β2)i+(α3β1-α1β3)j+(α1β2-α2β1kとなる。ここで,(α1,α2,α3),(β1,β2,β3)はそれぞれabの座標成分である。

 n次元ユークリッド空間の有向線分をベクトルと定めれば,空間のベクトルについて上に述べたことと同様のことがベクトル積を除いて考えられる。ベクトル積は三次元固有のものである。ベクトルの性質抽象化して得られるものが線形空間であり,線形空間の性質を調べるのが線形代数学である。
線形代数学
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ベクトル」の意味・わかりやすい解説

ベクトル

一般にはあるベクトル空間の元をいう。幾何学的には空間に2点P,Qがあるとき,PからQに向かう有向線分をベクトルといい,記号(式1)で表す。速度・加速度・力や電場・磁場の強さ等はベクトルで表され,これらをベクトル量または単にベクトルともいう。二つのベクトルA,Bに関し,向きと長さが同じならA=B,同一点からA,Bを引きそれらを2辺とする平行四辺形を作ったとき対角線の表すベクトルがA+B,Aと方向が同じで長さがa倍のベクトルはaAと定義される。ベクトルの積には内積外積があり,またベクトルの微分演算に勾配(こうばい),発散回転がある。
→関連項目加速度スカラー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本の企業がわかる事典2014-2015 「ベクトル」の解説

ベクトル

正式社名「株式会社ベクトル」。英文社名「VECTOR INC.」。サービス業。平成5年(1993)「株式会社デビアス」設立。同年現在の社名に変更。本社は東京都港区赤坂。企業の戦略的広報活動の支援事業。各種PR事業を受注し、広報、マーケティング、テレビ番組・ウェブ動画などの企画制作を子会社に発注。全体の統括および経営企画を行う。東京マザーズ上場。証券コード6058。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

栄養・生化学辞典 「ベクトル」の解説

ベクトル

 大きさと方向を併せもつ量.力,速さなどを示すために用いられる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベクトルの言及

【スピノル】より

…電子のように1/2のスピンをもつ状態,さらに一般に任意のスピンをもつ状態を表すために導入された量で,スピノルの名もスピンに由来している。三次元空間を回転させたとき,その中の量は回転に伴って変化するが,その変化のしかたによってスカラー,ベクトル,テンソルなどに区別される。変化しないものをスカラーといい,空間内の変位を表す矢印と同じようにふるまうのがベクトルであり,数個のベクトルの積と同じように変化するのが高階のテンソルである。…

【力】より

… 物理学での力forceの定義は普通ニュートンの運動方程式を用いて次のようになされる。すなわち力というのは平行四辺形の合成則にしたがうベクトル量であって,物体の運動量pmv(mは物体の(慣性)質量,vは速度)を変化させる働きをもつ。このとき,小さな時間⊿tの間にpに⊿pだけの変化を生ずるとすると,pの瞬間的変化率,と,働いている力Fの間に,という関係(ニュートンの運動方程式)がある。…

※「ベクトル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

一粒万倍日

一粒の種子をまけば万倍になって実るという意味から,種まき,貸付け,仕入れ,投資などを行えば利益が多いとされる日。正月は丑(うし),午(うま)の日,2月は寅(とら),酉(とり)の日というように月によって...

一粒万倍日の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android