(1)Mendes D, Correia M, Barbedo M, et al. Behcet's disease--a contemporary review. J Autoimmun. 2009 ;32:178-88.
(2)Yurdakul S, Mat C, Tuzun Y, et al. A double-blind trial of colchicine in Behcet's syndrome. Arthritis Rheum. 2001;44:2686-2692.
(3)Saenz A, Ausejo M, Shea B, et al. Pharmacotherapy for Behcet's syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD001084.
(4)Hatemi G, Silman A, Bang D, et al. European League Against Rheumatism (EULAR) Expert Committee. EULAR recommendations for the management of Behcet disease. Ann Rheum Dis. 2008 ;67:1656-62.
(5)Yazici H, Pazarli H, Barnes CG, et al. A controlled trial of azathioprine in Behcet's syndrome. N Engl J Med. 1990;322:281-285.
(6)Masuda K, Nakajima A, Urayama A, Nakae K, Kogure M, Inaba G. Double-masked trial of cyclosporin versus colchicine and long-term open study of cyclosporin in Behçet's disease. Lancet. 1989 May 20;1(8647):1093-6.
(7)Hamuryudan V, Er T, Seyahi E, Akman C, Tüzün H, Fresko I, Yurdakul S, Numan F, Yazici H. Pulmonary artery aneurysms in Behçet syndrome. Am J Med. 2004 Dec 1;117(11):867-70.
(8)Benezra D, Cohen E, Chajek T, et al. Evaluation of conventional therapy versus cyclosporine A in Behcet's syndrome. Transplant Proc. 1988;20(3 Suppl 4):136-143.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
べーチェット病は主に眼、皮膚粘膜に急性の炎症発作を繰り返す原因不明の病気です。世界的には、シルクロード沿いの地域に患者数が多く、日本では北日本に患者が多く分布します。患者数は2万人弱で、男女比は1対1、好発年齢は20~40歳です。
原因は不明ですが、遺伝的な要因(体質)と環境因子の両者が関係しています。遺伝的要因で重要なのはHLAB51です。ヒト白血球抗原(組織適応抗原)であるHLAのうちB51をもっている日本人の一般的割合は10~15%ですが、べーチェット病患者では50~60%と非常に高い割合になっています。
環境因子では細菌抗原である熱ショック蛋白に対する異常な免疫応答により、TNF
口腔内アフタ、皮膚・眼症状、陰部潰瘍が発作的に起き、繰り返しますが、発作と発作の間欠期は無症状です。口腔内アフタは初発症状であることが多く、
皮膚症状としては、
また、針反応といって、採血後など針の刺入部が24~48時間後に発赤や毛嚢炎様発疹を示す皮膚の過敏反応がみられる場合があります。陰部の潰瘍は、男性では
眼の病変は前部ぶどう膜炎が特徴で、典型例は
関節炎は急性、亜急性の発症で、膝、足関節に多く変形を来すことはありません。まれに持続性関節炎を合併します。男性ではまれに
特殊型として、①腸管型、②血管型、③神経型があります。
①腸管の病変は
②血管の病変では、動脈や静脈の血栓性閉塞や
③神経の病変としては、発熱や頭痛で
皮膚粘膜症状がひどい時や、腸管、神経の病変を伴う場合には、発熱などの全身症状が認められます。
診断のための特殊な検査はありませんが、発作期は赤沈、CRPの高値、白血球、好中球の増多がみられます。また、IgDが上昇する場合があります。診断は、主症状(口腔内アフタ、眼・皮膚症状、陰部潰瘍)や副症状(関節炎、副睾丸炎、腸管・血管・神経症状)から総合的に行います。HLAB51陽性や針反応は診断の参考になります。
軽症の皮膚・粘膜病変には局所ステロイド外用薬を使いますが、頻繁に症状が現れる場合は、コルヒチンを使用します。コルヒチンは諸症状に有効で、投与開始後1~2カ月で症状の軽症化や出現頻度の減少がみられます。
眼症状のうち、虹彩毛様体などの病変が全眼部にとどまる場合は、局所的にステロイド点眼薬と散瞳薬を使用します。網膜脈絡膜炎では、急性眼底発作にはステロイドのテノン
神経、血管、腸管病変に対しては、早期からの積極的治療で発病後数年間の活動期に臓器障害が残らないように注意します。
血管病変のうち炎症を伴う動脈病変には、高用量ステロイドにアザチオプリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制薬を併用します。血栓性病変には抗血小板薬・抗凝固薬を併用することがよくあります。動脈瘤は、術後に縫合部の仮性動脈瘤形成など局所の再発が多いので、手術は慎重に考えます。
腸管病変には、ステロイドとともにサラゾスルファピリジン、メサラジンを併用します。
髄膜炎や脳炎症状を示す急性型中枢神経病変には、パルス療法を含む高用量ステロイドを使用します。慢性進行性の精神・人格障害は難治性ですが、メトトレキサートが有効な場合があります。
非ステロイド抗炎症薬は関節炎、結節性紅斑、外陰部潰瘍に有効です。
主症状が2つ以上あれば専門医(リウマチ・
日常生活上の注意として、上気道感染、歯の治療、寒冷などの
鈴木 康夫
トルコの眼科医ベーチェットが1937年に発見した疾患です。
原因は不明です。遺伝的素因が関係して、何らかの外因によって発症すると考えられています。外因としてウイルス感染説、口腔病巣感染説、農薬中毒説など多くの仮説があります。白血球の一部の
口腔粘膜と陰部の潰瘍が特徴的です。口腔粘膜では舌、口唇粘膜、
四肢には急性の結節性紅斑(鶏卵大までの鮮紅色で圧痛のある紅斑)、下肢の血栓性静脈炎(有痛性の
また採血部位や注射部位に一致して、紅暈を伴う
眼の症状としては
特殊な病型として消化管障害、血管障害、神経障害を主症状とする亜型があり、それぞれ消化管ベーチェット、血管ベーチェット、神経ベーチェットと呼ばれ、いずれも重症型です。これらのタイプでは精神神経症状、急性腹症(突然の腹痛を主症状とする)で発症することもあります。
白血球増多、CRP上昇、赤血球沈降速度の亢進がみられますが、自己抗体は陰性です。白血球の型分類でHLAB51が高頻度に認められ、遺伝的素因の関与が示唆されます。眼科的には前房蓄膿の確認、
好中球の機能を抑制するコルヒチンをまず使います。全体の病勢が強い場合には、必要に応じてステロイド薬や免疫抑制薬のシクロスポリンなどを使います。そのほか、抗生剤やスルホン剤も使われます。
皮膚症状では皮膚科、眼の症状では眼科、内臓症状ではそれぞれ担当の科、あるいはリウマチ膠原病の専門医を受診してください。
衛藤 光
日本ではいちばん多いぶどう膜炎として知られています。15~40歳の男性に好発し、青壮年期における失明の原因疾患として恐れられています。世界的には、シルクロード沿いに多いという特徴があります。
粘膜を中心に、体のいくつかの部位に炎症を来す疾患で、そのなかのひとつの症状としてぶどう膜炎が起こります。
免疫反応が自分の体に対して起こると考えられ、自己免疫疾患に近い疾患とみられていますが、詳細は不明です。何らかの感染症がきっかけになることがあるという説もあり、原因として連鎖球菌の感染が注目されています。
遺伝的素因も関係しているとされており、白血球の血液型ともいうべき組織適合抗原(HLA)のなかのB51が発症に関係しているといわれています。急に寒くなった時や、気象の急変に伴い、突然発症することが多いようです。
ぶどう膜炎の型として、
前部ぶどう膜炎としては、眼のなかにうみがたまる(
こうした眼の症状が発作的に繰り返し現れて、次第に視力が低下してゆきます。重症の場合は
多くの場合、これらの眼の症状よりも先に眼以外の症状が現れます。眼外症状として直径数㎜の円形白色の浅い有痛性
特定の組織適合抗原(B51)が陽性になることが多く、診断の参考になります。皮膚の針反応が陽性になり、血液検査では炎症性の所見がみられます。口腔の再発性アフタ、皮膚症状、ぶどう膜炎、
前部ぶどう膜炎については、消炎のためのステロイド薬と、虹彩の
失明の危険性の高い疾患であり、すみやかに適切な検査・治療を受けることが必要です。
河本 知栄, 喜多 美穂里
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
青壮年のおもに口腔(こうくう)粘膜、皮膚、眼(め)、外陰部を侵し、ほかにも関節、消化器、血管、神経系などに多くの病変が反復出現する原因不明の病気である。各種の症状をまとめて1937年に報告したトルコの皮膚科医ベーチェットHulusi Behçet(1889―1948)にちなんでよばれ、ベーチェット症候群ともいう。中近東や地中海沿岸地方で注目されていたが、第二次世界大戦後に日本で急増し、今日では諸外国よりも多発しており、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。
[小暮美津子]
眼症状は男性に出現率が高く、再発性前房蓄膿(ちくのう)性虹彩(こうさい)炎を特徴とする両眼性のぶどう膜炎で、失明率が高い。虹彩毛様体炎のみが再発する前眼部型と、眼底にも病変のおこる眼底型に分けられる。前眼部型は女性に多く予後はよいが、眼底型は失明率が高く男性に多い。前眼部型の治療は虹彩毛様体炎と同じであるが、眼底型には再発を抑制する特別な療法が必要である。眼再発時にステロイド剤の内服はよくない。
[小暮美津子]
有痛性口腔内アフタで発症するものは約80%で、経過中に必発する症状とみてよい。口腔粘膜に生じるエンドウ大までの境界鮮明な小潰瘍(かいよう)で、周囲が赤く充血し、白色の偽膜が付着している。1回に1~4個生じ、一般に瘢痕(はんこん)を残さずに1週間ほどで治癒するが、何回も再発する。単なる慢性再発性アフタとは、アフタの症状だけからは区別がつけられない。陰部潰瘍は67%にみられ、外陰部に周囲が充血して紅潮した小膿疱(のうほう)として発生し、ただちに有痛性の深い潰瘍となり、1~2週間で瘢痕を残して治癒する。
皮膚症状は84%にみられる。結節性紅斑(こうはん)様皮疹(ひしん)は、下腿(かたい)を中心に圧痛のある紅色硬結として出没を繰り返すが、普通の結節性紅斑に比べて消褪(しょうたい)が比較的早く(4~6日)、組織学的にも特徴がある。血栓性静脈炎も下腿を中心に有痛性索状硬結として出没を繰り返す。毛嚢(もうのう)炎や痤瘡(ざそう)(にきび)様皮疹は身体各所にみられるが、注射刺入部位に1~2日後に生じる紅色小硬結、無菌性膿疱は「針反応陽性」として、診断上重要な所見である。
[土田哲也]
1937年にトルコの皮膚科医ベーチェットHulusi Behçet(1889-1948)が報告した疾患で,前房蓄膿性虹彩炎,口腔アフタ,陰部潰瘍を主徴とする。欧米では症候群syndromeとして扱われるが,日本では独立疾患として扱われている。自己免疫疾患の一つで,上記の3主要病変だけでなく,全身に多彩な病変が反復して表れ,慢性の経過をたどる。このうち,口腔と陰部のアフタ性潰瘍,結節性紅斑様皮疹などの皮膚症状,血栓性静脈炎,前房蓄膿性虹彩炎などの眼症状の4主要病変のあるものを完全型,1~2の病変を欠くものを不完全型という。このほか,関節炎などの関節症状,消化器症状,運動麻痺や構語障害などの神経症状も伴うことがある。原因としては,ウイルス感染,遺伝などが考えられるが,不明である。20~30歳代の青壮年に多く,男女比は2対1で男に多い。治療は主として副腎皮質ホルモン,抗炎症剤などの薬物療法による。この病気によって死に至ることは少ないが,ぶどう膜炎,網膜炎など,反復する眼症状によって失明に至ることがある。
執筆者:菊池 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…また乾燥症候群を示すシェーグレン症候群も膠原病の一つとして扱われることが多く,全身性エリテマトーデスや全身性進行性硬化症あるいは多発性筋炎などの入りまじった症状を示す混合性結合織病mixed connective tissue disease(略してMCTD)も膠原病の中に含まれる。そのほかベーチェット病なども膠原病の中に入れる学者もいるが,これに異論を唱える学者も多く,膠原病には含まれないことが多い。 膠原病の代表的な症状は,発熱,関節痛,羸瘦(るいそう)(主として脂肪の減少のためにやせること)などの一般的な症状のほかに,個々の疾患に特有な症状,すなわち発疹,レイノー症状,皮膚硬化などの皮膚症状,呼吸器症状,消化器症状などがみられ,膠原病が多臓器を侵す炎症性疾患であることから,症状は一般に多彩である。…
…
[各種のぶどう膜炎]
ぶどう膜炎では,特徴的な経過あるいは特異的検査結果などを組み合わせて臨床診断がされる。日本におけるぶどう膜炎の代表は,ベーチェット病,サルコイドーシス,原田病である。 ベーチェット病は,眼症状,口腔再発性アフタ,皮膚症状,外陰潰瘍を主要症状とする全身疾患である。…
※「ベーチェット病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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