ミクロ経済学(読み)ミクロけいざいがく(英語表記)microeconomics

翻訳|microeconomics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ミクロ経済学
ミクロけいざいがく
microeconomics

個々の経済主体,たとえば家計や企業の行動原理に基づいてさまざまな財をどのくらい生産し,個々の経済主体にどのように配分するかという,資源の最適配分メカニズムを分析する,経済学の基礎分野。マクロ経済学と対をなす。社会的に望ましい資源配分はパレート効率的配分(→パレート最適)であり,パレート効率的配分は完全競争市場の価格メカニズムによって達成される。しかしこの価格メカニズムをそこなう外部性,規模の経済性,公共財,情報の不完全性などの要因があり,これら市場の失敗は,公共部門の政策によって解決される。ミクロ経済学は,以上のことを明らかにした「価格理論」から発展している。公共経済学,都市経済学,環境経済学,情報経済学,国際経済学その他のさまざまな分野に応用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵の解説

ミクロ経済学

19世紀末に英国ジェボンズマーシャル、欧州のワルラスメンガー等が同時期に発見した限界効用や限界費用を中核とする極大原理を用いた消費者、企業の分析。20世紀前半は一般均衡論的な観点から完全競争を分析するのが主流であり、英国のヒックスや米国のアローは経済学の精緻化に多大な貢献を残した(一般均衡理論/完全競争参照)。他方、不完全競争や寡占競争に対する関心も当初からあったが、それらを分析する数学的ツールがなかったため精緻な分析は困難であった。この状況が一変したのはゲーム理論の登場によってであり、以後ミクロ経済学の分析対象は、寡占企業間の戦略的相互依存関係や消費者の情報の不完全の分析へと移った。こうしたミクロ経済学の静かな革命は、新しい産業組織論などいくつもの応用ミクロ経済学分野を生み出し、今日もなお脈々と続いている。

(依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディアの解説

ミクロ経済学【ミクロけいざいがく】

経済における資源配分の問題を消費者や企業などの経済主体の行動から分析し,理論を構築しようとするもの。価格分析とも。すべての価格体系が与えられているとき,消費者行動や企業行動を分析し,さらにこの価格体系は全体としての需要供給によって決定されると論じる。フランスの経済学者ワルラス限界革命以後,極大原理に基づく一般均衡理論として発展した。市場経済は効率的な資源配分を達成する,という厚生経済学の基本定理に代表される。→マクロ経済学

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ミクロけいざいがく【ミクロ経済学 micro‐economics】

微視的経済分析ともいう。現代の経済理論は大別してミクロ経済学とマクロ経済学とに分かれる。後者が,国民所得などの集計量,物価指数などの平均値のあいだの関係を分析するのに対して,ミクロ経済学はまず,(1)消費者の家計,企業などの個々の経済主体の行動を分析し,(2)これら経済主体間の市場を通じての相互依存関係を重視しながら,経済全体の動きを解明する。経済主体間の市場を通じての相互依存関係とは,生産物,生産要素の交換の関係であるから,それを分析するには交換の比率である価格の体系を分析しなければならない。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

ミクロけいざいがく【ミクロ経済学】

家計・企業など個々の経済主体の行動およびそれらが相互に調節される市場機構の働きを分析する経済学。価格の作用を重視し、資源配分と所得分配を細かく分析する。微視的経済学。 ⇔ マクロ経済学

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ミクロ経済学
みくろけいざいがく
microeconomics

個々の消費者(家計)や企業(生産者)などの経済主体の動きを微視的(ミクロ)に分析し、市場を通じて財(モノやサービス)の配分や価格決定がどのように調整されているかを考察する学問。とくに、市場原理を重視するシカゴ学派などではミクロ経済学を「価格理論price theory」とよぶ。経済主体を巨視的に分析するマクロ経済学と並び、経済学の大きな柱である。
 W・S・ジェボンズらによって提唱された効用(満足度)価値説と、L・ワルラスらが基礎を築いた完全競争下での一般均衡理論を基に、ミクロ経済活動を数学的に分析する手法が整った。A・マーシャルが『経済学原理』Principles of Economicsを著し、これが現在のミクロ経済学の原型となった。J・R・ヒックスは財を含む多くの市場の同時需給均衡が時間的にどのように変化するかを分析。消費者の満足度に注目して市場分析する厚生経済学welfare economicsにも道を開き、ミクロ経済学の父とよばれている。
 さらに、フォン・ノイマンとO・モルゲンシュテルンらは利潤を最大化しようとする経済行動を予測する「ゲームの理論」を導入。現在、完全競争とゲームの理論はミクロ経済学の主たる分析手法として発展している。
 G・S・ベッカーの『人的資本』Human CapitalやJ・F・ナッシュらの「ナッシュ均衡」(Nash equilibrium)など最近のノーベル経済学賞の多くがミクロ経済分野の受賞である。こうしたミクロ経済学の分析手法は財政学、公共経済学、産業組織論などに幅広く応用され、最新のマクロ経済学の理論的な礎(いしずえ)となっている。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

ミクロ‐けいざいがく【ミクロ経済学】

〘名〙 家計・企業・市場が、希少な資源を、競合する目的のためにどのように選択・配分するかを研究する経済学。⇔マクロ経済学

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内のミクロ経済学の言及

【経済学】より

…主としてその分析対象によって数多くの分野に分類される。まず経済理論はミクロ経済学マクロ経済学に分けられる。ミクロ経済学は,経済を構成する個別的な経済主体,つまり個人,企業がどのような経済行動を選択するかという問題を分析したり,個別的な産業について,生産技術,生産規模がどのようにして決定されるかということを論じ,さまざまな財貨・サービスの相対価格を分析する。…

【メンガー】より

オーストリア学派の限界分析の創始者。いわゆるミクロ経済学を現在の体系にまとめ上げたのは,メンガーとその弟子たちであるといえる。ケンブリッジ学派の創始者A.マーシャルにも理論面で大きな影響を与えた。…

※「ミクロ経済学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

グリンパティック系

脳内でリンパ系と同様のはたらきをもつ循環システム。グリア細胞(神経膠細胞)が血管周囲に形成したパイプ状の構造に脳脊髄液を循環させ、脳内に蓄積した老廃物を除去する。覚醒時より睡眠時の方がより活動的である...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

ミクロ経済学の関連情報