家庭医学館 の解説
めーぷるしろっぷにょうしょうかえでとうにょうびょう【メープルシロップ尿症(楓糖尿病) Maple Syrup Urine Disease】
ロイシン、イソロイシン、バリンという3種類のアミノ酸は、分枝側鎖(ぶんしそくさ)アミノ酸(さん)と呼ばれています。この3つのアミノ酸は、アミノ基がとれて分枝鎖(ぶんしさ)ケト酸(さん)という酸に変わった後、脱炭酸酵素(だつたんさんこうそ)のはたらきで分解されます。
この脱炭酸酵素が生まれつき欠けているために、分枝鎖アミノ酸とケト酸の血液中の量が増えてくる病気です。尿や汗などがメープルシロップのような甘いにおいを発するので、この病名がついています。
[症状]
症状の現われる時期や経過、薬に対する反応のちがいなどから、つぎのように分類されています。
●古典型
哺乳(ほにゅう)を開始すると、ミルクの飲みが悪くなり、嘔吐(おうと)、けいれんなどが現われます。これは、分枝鎖ケト酸が増えて血液が酸性になるアシドーシス(酸血症(さんけっしょう))の症状です。
進行すると、意識が薄れて昏睡(こんすい)におちいり、生命にかかわることがあるので、早期の治療が必要です。
●間欠型(かんけつがた)
新生児期は何事もなくすぎますが、感染症にかかったり、たんぱく質の多い食事をしたりすると、急激にアシドーシスの症状が現われます。
発作(ほっさ)のおこっていないときは、血液中の分枝鎖アミノ酸は増えていません。
●中間型
ゆっくりとした経過をたどりますが、知能の低下や急なアシドーシスの発作がおこったりすることもあります。ふだんから、血液中の分枝鎖アミノ酸が増えています。
●サイアミン反応型
ビタミンB1剤で治療すると、血液中の分枝鎖アミノ酸の値が下がり、症状も改善します。
[検査と診断]
新生児スクリーニングで血液中のロイシンの量が4mgを超えたら、精度の高いアミノ酸分析計を用いて、血液や尿の分枝鎖アミノ酸の増加を調べます。
[治療]
アシドーシスの発作がおこっていれば、血液透析や交換輸血を行なって、体内に蓄積した分枝鎖アミノ酸とケト酸を取り除きます。
発作が治まったら、分枝鎖アミノ酸を制限した食事療法を行ない、血液中のロイシンの量を2~4mgに保つように調節します。
目標はフェニルケトン尿症と同じですが(「フェニルケトン尿症」)、感染症などで状態が悪化するので、慎重な育児が必要です。