Eu.原子番号63の元素.電子配置[Xe]4f 76s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素の一つで,ランタノイドの中間に位置するので,イットリウム族,セリウム族の両者にに含まれることがある.62Sm~66Dyを中希土類ともいう.原子量151.964(1).質量数151(47.81(6)%),153(52.19(6)%)の2種の安定同位体と,質量数130~167の放射性同位体が知られている.1896年,E-A. DemarçayがSmから分離し(スペクトル中の発見は,1889年,W. Crookes),ヨーロッパ大陸にちなんでeuropiumと命名した.
地殻中の存在度1.1 ppm.存在度の低い希土類元素の一つ.微量に含まれるモナズ石,バストネス石などを原料に,溶媒抽出法で希土類相互分離後,溶融塩電解により金属が得られる.銀白色,体心立方格子構造.融点822 ℃,沸点1597 ℃.密度5.243 g cm-3(25 ℃).第一イオン化エネルギー5.670 eV.標準電極電位C/Eu-1.99 V,Eu3+/Eu2+-0.35 V.熱水,酸に溶けて水素を発生する.酸化数2,3.イオン半径 Eu2+0.131 nm,Eu3+0.109 nm.Eu3+ は淡紅色,Eu2+ は無色.150 ℃ 以上では空気中で発火してEu2O3となる.電子配置が4f殻半分充満(4f 7)の EuⅡは希土類元素の酸化状態(Ⅱ)中でもっとも安定である.Eu2+ のイオン半径は Sr2+(0.132 nm)と非常に近いので,EuⅡ化合物はSr化合物と似た性質を示す.硫酸ユウロピウム(Ⅱ)は,Srの硫酸塩と同様に水に難溶.Eu2+ による Sr2+ の同形置換もよく見られる.EuⅢ化合物はほかの希土類元素と同様に,炭酸塩,シュウ酸塩,フッ化物が水に不溶.
用途は,Eu3+ はブラウン管用赤色蛍光体の賦活材.YVO4Eu3+,Y2O2S:Eu3+,Y2O3:Eu3+ など.Eu2+ は青色蛍光体の賦活材.YSr5Cl(PO4)3:Eu2+ など.中性子捕獲断面積が大きいところから原子炉制御棒にも利用される.[CAS 7440-53-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族に属する希土類元素のうちのランタノイドの一つ。1896年フランスのドマルセーEugène Anatole Demarçay(1852-1904)によって酸化サマリウムから新元素として分離され,ヨーロッパにちなんで命名された。希土類元素中,プロメチウムに次ぐ希産元素で,おもな鉱石はゼノタイム,バストネサイトなど。銀白色の金属(体心立方格子)。化合物は3価化合物が普通で,多く淡紅色。2価化合物はふつう無色で,ランタノイド中最も安定である。金属は,原料鉱石を処理し,他のランタノイドとともに硫酸塩などとし,イオン交換法などによって分離する。これを酸化物に変え,1000~1300℃に熱してランタンなどで還元し,昇華精製する。カラーテレビ,照明などの赤色用の蛍光体のほか,熱中性子吸収断面積が大きいことから原子炉制御棒などに用いられる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
周期表第3族、希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1901年フランスのドマルセーEugène Anatole Demarçay(1852―1904)によって発見され、ヨーロッパにちなんで命名された。希土類元素のうちプロメチウムに次いで希産のものの一つ。塩化物の溶融塩電解、またはアルカリ金属で還元すると、銀白色の金属を得る。酸化数ⅢとⅡの化合物をつくる。高温に熱すると淡紅色のEu2O3となる。水とは徐々に、熱水および酸では速やかに反応して水素を発生する。EuIII化合物は多くが無色、EuII化合物は多くが淡紅色。カラーテレビ用赤色蛍光体のほか、蛍光ガラス、高圧水銀灯の発光体として用いられる。また熱中性子吸収断面積が大きく、原子炉制御棒用金属に用いられる。
[守永健一・中原勝儼]
ユウロピウム
元素記号 Eu
原子番号 63
原子量 151.96
融点 822℃
沸点 1597℃
比重 5.243
結晶系 立方
元素存在度 宇宙 0.091(第75位)
(Si106個当りの原子数)
地殻 1.2ppm(第55位)
海水 0.12×10-3μg/dm3
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