レッサ(読み)れっさ(英語表記)Maria Angelita Ressa

日本大百科全書(ニッポニカ)「レッサ」の解説

レッサ
れっさ
Maria Angelita Ressa
(1963― )

フィリピンのジャーナリスト。マニラ生まれ。マルコス政権による戒厳令布告を受けて10代で家族とともに渡米し、プリンストン大学を卒業。フィリピンとアメリカ、両方の国籍をもつ。マルコス政権が崩壊した1986年に帰国し、CNN支局などで報道に携わった後、2012年、マニラで調査報道のための独立系ニュースサイト「ラップラーRappler」を共同で創設。CEO(最高経営責任者)につき、麻薬取締りのため「戦争に匹敵するほど」(ノーベル賞選考委員会)多数の殺害をいとわないドゥテルテRodrigo Duterte(1945― )政権の権力濫用、暴力行使、増長する権威主義などを公然と批判。並行して、ソーシャルメディアによるフェイクニュースの拡散や世論操作にも警鐘を鳴らし続けた。この間、報道に対する報復とみられる逮捕を二度経験し、記事による名誉毀損(きそん)罪で有罪判決を受け、また、脱税容疑などで繰り返し訴追されている。

 2021年、逮捕や訴追にひるまず、フィリピンの強権的ドゥテルテ政権を一貫して批判し続けた功績で、ノーベル平和賞を受賞した。世界で毎年多くのジャーナリストが弾圧・殺害されるなか、ノーベル賞選考委員会は授賞理由として「民主主義と恒久平和の前提である表現の自由を守るための努力」をあげた。ジャーナリスト活動でノーベル平和賞を受けるのは1935年のオシエツキ以来で、フィリピン人初のノーベル賞受賞者である。ノーベル平和賞受賞はロシアのドミトリー・ムラートフとの共同受賞で、ノーベル賞選考委員会は二人を「民主主義と報道の自由が逆境に直面する世界で、理想のために立ち上がるすべてのジャーナリストの代表」とたたえた。レッサは2018年にアメリカの『タイム』誌「今年の人Person of the Year」に選ばれ、世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の「自由のための金ペン賞Golden Pen of Freedom」も授与されている。著書に『Seeds of Terror:An Eyewitness Account of Al-Qaeda's Newest Center of operations in Southeast Asia(2003)』『From Bin Laden to Facebook:10 Days of Abduction,10 Years of Terrorism(2013)』がある。

[矢野 武 2022年3月23日]

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