翻訳|rayon
植物繊維セルロースを化学的に変化させて溶解させた溶液を紡糸口金を通して紡糸後,元のセルロースに戻した化学繊維をいい,ビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨン(キュプラ)が製造されている。通常,レーヨンは前者をさす。最初にかなりの量で作られたレーヨン(フランス語で〈光る〉の意)はフランスのC.H.B.deシャルドンネが硝酸セルロースから作り,1889年のパリ万国博覧会に出品した〈シャルドンネの絹〉である。イギリスのクロスC.F.CrossとベバンE.J.Bevanが91年に発明したビスコースレーヨンは品質が優れ価格も最も安いため,世界の工業国で大量生産されている。セルロース原料の木材パルプは苛性ソーダと反応させると,アルカリセルロースになる。
アルカリセルロースは二硫化炭素と反応させると,セルロースキサントゲン酸ナトリウムが得られる。
セルロースキサントゲン酸ナトリウムは希薄なアルカリ水溶液に溶解し,ビスコースとして知られる粘稠な溶液を作る。ビスコースを紡糸口金から希硫酸中へ押し出すと繊維状のセルロースが再生される。
これがビスコースレーヨン(人造絹糸)である。銅アンモニアレーヨンの場合は,セルロースをアンモニア水溶液,塩基性硫酸銅および苛性ソーダから成る溶液に溶かす。アセテートと合わせてレーヨンは世界の全化学繊維のうち約12%を占める衣料用繊維である。
→銅アンモニアレーヨン →ビスコースレーヨン
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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日本では,ビスコース法により製造された再生セルロースを主成分とする繊維をいう.アメリカでは,再生セルロースからなる人造繊維,およびヒドロキシ基の水素の15% 未満が置換された再生セルロースからなる人造繊維をいう.[別用語参照]ビスコースレーヨン
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…ニトロセルロースがフランスのブラコネH.Braconnetによって1832年セルロースと硝酸から合成されたので,スイスのC.F.シェーンバインが46年にこれをエーテルとアルコールに溶かして糸に引いたのが始まりである。85年にC.H.B.deシャルドンネはニトロセルロースを紡糸後に脱ニトロ化してシャルドンネの絹と呼ばれる最初の実用になるレーヨンを作り,一時期広く使用された。ビスコースレーヨンは91年にイギリスの化学者C.F.クロスとベバンE.J.Bevanによって発明された。…
…遊離の酸の状態は不安定で存在せず,多くナトリウム塩となっている。これを希薄水酸化ナトリウムに溶かした粘稠な液体がビスコースであり,ビスコースを硫酸浴へ押し出して紡糸すると再生セルロースすなわちレーヨンになる。セルロース源は木材パルプが使われる。…
…ブザンソンに生まれ,はじめL.パスツールのもとでカイコの伝染病の研究に従事したことから繊維に関心を深め,さらに綿火薬(ニトロセルロース)の研究にも携わった。こうした背景から,コロジオン(ニトロセルロースのアルコールとエーテルの混合溶液)を小孔に吐出し溶媒を蒸発させて,後に〈レーヨン〉と呼ばれた人造絹糸を得る方法を発見,1884年特許を得て,新繊維を89年のパリ博覧会で初めて公開し好評を博した。91年ブザンソンに世界最初の人造絹糸工場を設立,商品価値のある人工繊維をつくった最初の一人となった。…
※「レーヨン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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