前脚と後脚を2本の揺り子(ロッカーrocker)で接合し,前後に揺り動かすことができる椅子。アメリカで1760~70年代にB.フランクリンが発明したとみなされている。ロッカーは中世期の揺りかごに使われたが,これを椅子の脚に応用することは,それまで実施されていなかった。ロッキング・チェアにはウィンザー・チェア型とラダー・バック・チェア型の二つがある。1800年ころアメリカのボストンで作られたのは前者のタイプで,笠木に型紙を使って草花模様を施し,シートが湾曲し,しかも座面が低く,安定感と座り心地のよい椅子で,〈ボストン・ロッカーBoston rocker〉と呼ばれ,アメリカで広く愛用された。同じ頃アメリカのシェーカー教団は背もたれが3~4本の横木からなるラダー・バック・チェアにロッカーを取り付けた機能的な〈シェーカー・ロッカーShaker rocker〉と呼ばれるロッキング・チェアを生産した(シェーカー家具)。
イギリスでは鋼鉄またはシンチュウ製で,揺り子,脚,座,背もたれを曲線構成にしたロッキング・チェアが1851年のロンドン万国博覧会に出品されて注目をあびた。60年代にはオーストリアのM.トーネットがブナ材の曲げ木によるロッキング・チェアを生産し人気を博した。また97年にはグラスゴーの家具メーカー,アレクサンダー商会は〈スウィング・ロッキング・チェア〉と呼ぶ,台座の上に固定されて揺れる書斎専用の椅子を製作した。
執筆者:鍵和田 務
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