(読み)ひと

精選版 日本国語大辞典「一」の解説

ひと【一】

[1] 〘名〙 物の数を、声に出して順に唱えながらえるときの一(いち)。ひい。ひ。
※年中行事秘抄(12C末)鎮魂祭歌「一(ヒト)(ふた)(み)(よ)
[2] 〘語素〙 (名詞・助数詞または動詞の連用形の上に付けて用いる)
① 物事の数がひとつであること、または一回分であることを表わす。「ひと足」「ひと冬」「ひと勝負」「ひと浜」など。
※古事記(712)上・歌謡「山処(やまと)の比登(ヒト)本薄(すすき)、うなかぶし汝が泣かさまく」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「ひとさ折りてまゐれ」
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
※枕(10C終)八二「日ひとひ下(しも)に居くらしてまゐりたれば」
③ 不特定のある一点を漠然とさして表わす。ある。
※枕(10C終)一三六「ひとひの文に、ありし事など語り給ふ」
※平家(13C前)二「一とせ山門の訴訟によってながされしを」
④ 一応その範疇にはいる意、またちょっとしたものである意を表わす。ひとかどの。いちおうの。
※太平記(14C後)一五「一(ヒト)面目に備んと攻(せめ)戦ふ」
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※万葉(8C後)一八・四〇七七「わが背子が古き垣内(かきつ)の桜花いまだ含(ふふ)めり比等(ヒト)目見に来ね」
※太平記(14C後)一七「其矢〈略〉本堂の艮(うしとら)の柱に一ゆりゆりて、くつまき過てぞ立たりける」
⑥ (「ひと…に…する」の形で) その動作が一回だけで終わる、一回だけで完全に行なわれる意を表わす。一回だけの。一度だけの。また、いっきの。ひといきの。「ひと筆に書く」「ひと打ちに打ちのめす」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※伊勢物語(10C前)六「おにはやひとくちに食ひてけり」

ひ【一】

〘名〙 (「ひと(一)」の頭の音を符丁のようにしたもの) 物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一。実際に唱えるときには普通は「ヒーフーミーヨー」のように長く発音する。ひい。→ひい(一)
※名語記(1275)四「一二三四五六七八九十をひふとて、手に石ふたつをもちてかはりがはりたまにとるに、ひふよいむなやこと、といへるは」

イー【一】

〘名〙 「一」の中国音。いち。ひとつ。江戸時代には(けん)の用語として用いられ、現代ではマージャン用語として用いられる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「真(ほんとう)の拳(けん)と云ふ物は一(イイ)(りゃん)(さん)(すう)(うう)(りう)(ちい)(ぱま)(くゎい)といふものだっサ」

いっち【一】

〙 (「いち(一)」を強めていった語) ものの程度や状態が、最もはなはだしいさま。第一。最も。いちばん。
※百丈清規抄(1462)二「極遅六十劫とて一(イッ)ちをそいぞ」
※六物図抄(1508)「最も居下故とは三衣の中にて位がいっちの下也」

ひい【一】

〘名〙 「ひ(一)」の変化した語。物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一。ひ。ひと。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)何鞠「君か代は長の数よむひいふうみい〈西鶴〉 たはね木をつむ高き屋の内〈西吟〉」

いいち【一】

〘副〙 第一に。一番に。最上の。いっち。いち。
狂言記・法師物狂(1660)「いいちひとの見めのよきは」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「一」の解説

いち【一】[漢字項目]

[音]イチ(呉) イツ(漢) [訓]ひと ひとつ
学習漢字]1年
〈イチ〉
数の名。ひとつ。「一一一枚逐一万一
物事の最初。一番目。「一位第一
ひとたび。「一応一巡
最上のもの。「随一天下一日本一
ひとまとまり。「一概一軍一座一同一様
他をまじえず、それ一つだけ。もっぱら。「一意一途いちず一念
ある一つの。もう一つの。「一案一時一部一名
ほんのわずか。ちょっと。「一瞥いちべつ一抹一縷いちる
〈イツ〉
ひとつ。「択一唯一
一番目。「一階一等
一つにまとまる。ひとまとまり。「一致一般画一帰一均一単一統一不一
もっぱら。「純一専一
ある一つの。他の。「一説一方
わずか。「一顧一瞬
〈ひと〉「一息一際一癖一口一筋一昔
[補説]「弌」は異体字。
[名のり]おさむ・か・かず・かた・かつ・くに・すすむ・ただ・ち・のぶ・はじむ・はじめ・ひ・ひじ・ひで・ひとし・まこと・まさし・もと
[難読]一昨日おととい一昨年おととし三一サンピン一寸ちょっと都都一どどいつ一向ひたすら一入ひとしお一十ひとそじ

いち【一/壱】

[名]
数の名。自然数で最初の数。ひとつ。
いちばん初め。1番目。「—の鳥居」
物事の最初。「—から出直す」
最もすぐれていること。最上。最高。「—の子分」「世界—」
三味線などで、いちばん音の低い太い糸。一の糸。
島田髷まげなどの後ろに張り出た部分。
「菊千代は潰島田つぶしの—を気にしながら色気のない大欠おおあくび」〈荷風腕くらべ
[副]いちばん。最も。いっち。
ねりと申して、—うまい柿でござる」〈虎寛狂・合柿
[補説]「壱」は、主に証書などに金額を記すときまちがいを防ぐために、「一」の代わりに特に用いる。
[類語]じゅうゼロ一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ九つとお

ひと【一】

ひとつ。いち。
(名詞や動詞の連用形の上に付いて)
㋐一つ、または1回の意を表す。「包み」「勝負」
㋑不特定の一時期や大体の範囲などを表す。「ころ」「わたり」「通り」
㋒ちょっとしたものであることを表す。「かど」「くせ」
㋓全体に及ぶさまを表す。全部。…じゅう。「皿たいらげる」「夏を山荘で過ごす」
㋔(「ひと…する」の形で)軽くある動作を行う、あることをひととおりする意を表す。「眠りする」「風呂浴びる」

いつ【一/壱】

ひとつ。
「ここに—の秘法を案出致しそろ」〈漱石吾輩は猫である
同じこと。まとまっていること。「軌を—にする」「心を—にする」
一方。あるもの。別なもの。「—は甘く、—は苦い」
(「いつに」の形で副詞的に用いて)もっぱら。ひとえに。「成否は—に現在の努力にかかっている」

ひ【一】

いち。ひとつ。声に出して数をかぞえるときの語。ひい。「、ふ、み、よ」

イー【一】

《〈中国語〉》数のいち。ひとつ。

いつ【一/壱】[漢字項目]

〈一〉⇒いち
〈壱〉⇒いち

ひい【一】

ひ(一)」の音変化。「、ふう、みい」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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