三峰川(読み)ミブガワ

デジタル大辞泉 「三峰川」の意味・読み・例文・類語

みぶ‐がわ〔‐がは〕【三峰川】

長野県南東部を流れる川。天竜川最大の支流赤石山脈仙丈せんじょうヶ岳南西斜面に源を発し南流し、荒川を合わせてほぼ中央構造線に沿って北流。さらに西に転じて伊那山地を横切り、伊那市の西部で天竜川に合流する。長さ57キロ。中央構造線に沿う川沿いの道は、伊那山地から駿河に抜ける重要な古道だった。

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日本歴史地名大系 「三峰川」の解説

三峰川
みぶがわ

源を赤石あかいし山脈(南アルプス)仙丈せんじようヶ岳(三〇三三メートル)塩見しおみ(三〇四六メートル)に発し、東からのくろ川を合して北流し、北からの山室やまむろ藤沢ふじさわの二支流を合しながら伊那山脈を横切って西流し天竜川に注ぐ。全長五九・九キロ。本流・支流ともに流路が複雑で、赤石山脈と伊那山脈の間を北流する本流も、藤沢の谷を南流する藤沢川も、ともに中央構造線に沿って直線状に流れている。この中央構造線に沿った川筋諏訪から高遠たかとお・下伊那、更に遠州(現静岡県)に通ずる古道であった。しかし文献上の史料は乏しく、天正末年頃の見聞記といわれる「岩岡家記」に「ミぶ川」とみえるのが初見である。また伊那地方の古図といわれる正保(一六四四―四八)の伊奈郡之絵図(飯田市立図書館蔵)には「見ふ川」とみえる。

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改訂新版 世界大百科事典 「三峰川」の意味・わかりやすい解説

三峰川 (みぶがわ)

天竜川の支流。幹川流路延長73km。長野・静岡県境をなす赤石山脈の仙丈ヶ岳および塩見岳付近に源を発し,長野県伊那市で天竜川に合流する。最上流部は地質構造にしたがって南流したあと北流し,市野瀬から中央構造線に沿ってさらに北流する。途中で山室川や藤沢川を合流して高遠(たかとお)付近から西流に転じ,広い扇状地を形成しつつ伊那市北西部で天竜川に合する。上流域にあたる伊那市の旧長谷村のうち中央構造線の谷へ流入するまでは外帯を流れ,古生層や中生層を下刻するため浸食谷を形成し,山地崩壊とそれに伴う林野荒廃もみられる。中央構造線に沿う中流域には市野瀬,美和などの集落がある。この一帯から東部の山地は近世には木の伐採や狩猟が禁じられた御立山で,黒河内には木改役所が置かれた。御立山は明治になって御料林となり,現在は国有林となっている。またこの谷は北部の諏訪との間は杖突(つえつき)峠,南部とは分杭(ぶんぐい)峠で結ばれ,伊那谷の間道として古くから開けた。1959年には県営の多目的ダムである美和ダム高遠ダムが完成し,三峰川水系県立自然公園に指定されたが,100戸余の水没移住者を出した。高遠はこの地域の中心で,内藤氏3万3000石の城下町として,また渓谷集落の商業中心地として栄えた。しかし明治の後半に伊那谷に伊那電気鉄道(現,JR飯田線)が開通すると,上伊那地方の中心は伊那谷へ移り,高遠は取り残された。下流では段丘も発達し,水田のほか畑や桑園が広がっているが,三峰川総合農業水利事業によって開田や畑地灌漑がすすみ,2500haが恩恵を受けている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三峰川」の意味・わかりやすい解説

三峰川
みぶがわ

長野県南東部を流れる川。天竜川の支流。全長 60km。赤石山脈仙丈ヶ岳に発して南流するが,伊那市南部の樺山北方で向きを変えて北流,高遠で藤沢川を合わせて西流し,中心市街地の南方で天竜川に合する。中流部は赤石山脈と伊那山地に挟まれた中央構造線に沿い,藤沢川や南方の分杭峠を隔てた小渋川の上流とともに南北方向の直線状の谷を形成している。高遠ダム,美和ダム,鹿嶺高原などがあり,三峰川水系県立自然公園に属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三峰川」の意味・わかりやすい解説

三峰川
みぶがわ

長野・山梨・静岡県境の赤石山脈に発し、赤石構造谷を北流して長野県伊那(いな)市高遠(たかとお)町地区で山室川、藤沢川と合流したのち、西折して伊那山地を横切り、伊那市東春近(ひがしはるちか)で天竜川に注ぐ。延長約70キロメートル。流路は複雑で、本流は塩見岳に発し、仙丈ヶ岳に発する戸台川や小黒(おぐろ)川などと合流する。荒れ川で1952年(昭和27)から三峰川総合開発が進められ、県営の多目的の高遠、美和両ダムがつくられ、周辺は三峰川水系県立自然公園になっている。上流部はヒノキ、モミ、サワラなどが多く、近世には木地屋(きじや)が点在していた。また平家の落人(おちゅうど)集落といわれる隔絶集落もある。

[小林寛義]

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