出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
東京都台東(たいとう)区浅草(あさくさ)に鎮座する浅草神社の祭礼をいう。当社は観音(かんのん)信仰で名高い金龍山(きんりゅうざん)浅草寺(せんそうじ)の境内に隣接し、社伝によれば、推古(すいこ)天皇36年(628)3月18日に宮戸川(隅田(すみだ)川)へ出漁した2人の漁師が同寺本尊の観音像を海中から得、これを地元の長者が供養したという縁起によって、この3人を同寺の鎮守神に祀(まつ)ったのが始まり。そこで別名、三社明神、三所大権現(ごんげん)ともよばれ、三社祭の名が生まれた。江戸時代は、観音感得の旧暦3月18日を祭日としたが、明治時代から新暦5月18日を中心に執行された。浅草一円の総鎮守として氏子区域45か町から100余基の町神輿(みこし)が宵宮(よいみや)の日に連合渡御し、当日は3基の宮神輿が全町内を巡行する。現在では5月第3金・土・日曜日が祭日。また古式の拍板舞(びんざさらまい)(東京都無形民俗文化財)も神事として奉納されるなど、江戸下町を代表する伝統の祭礼である。
[薗田 稔]
歌舞伎(かぶき)舞踊。清元(きよもと)。別称「善玉悪玉(ぜんだまあくだま)」。本名題(ほんなだい)『弥生(やよい)の花浅草祭(はなあさくさまつり)』。2世瀬川如皐(じょこう)作。初世清元斎兵衛(さいべえ)作曲。2世藤間勘十郎・松本五郎市振付け。1832年(天保3)3月江戸・中村座で、4世坂東三津五郎(ばんどうみつごろう)の善玉、2世中村芝翫(しかん)(4世歌右衛門(うたえもん))の悪玉により初演。浅草三社祭の祭神である浜成(はまなり)・武成(たけなり)を暗示する漁師2人が、大空から降(くだ)った善玉・悪玉に魅入られ、善悪を象徴する振(ふり)をみせる。当時流行の心学思想に基づく山東京伝(さんとうきょうでん)の黄表紙『心学早染草(しんがくはやそめぐさ)』の挿絵からとった趣向で、日本舞踊には珍しく軽快なテンポと跳躍味に富んだ振が特色。初演のときは、山車(だし)人形の神功皇后と武内宿禰(たけしうちのすくね)が引き抜いて漁師2人になる構成であった。
[松井俊諭]
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