中人(読み)チュウジン

デジタル大辞泉 「中人」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐じん【中人】

才能能力などが中くらいの人。並の人。普通の人。
才気―にえずといえども」〈中村訳・西国立志編
身分地位財産などが中程度の人。
「此国に在ては―以上の地位にある者なり」〈福沢学問のすゝめ
仲立ち仲人。ちゅうにん。
「佐殿うちゑみ給ひて、千手に、―は面白うしたるものを、とのたまへば」〈高野本平家・一〇〉

ちゅう‐にん【中人】

大人だいにん小人しょうにんとの中間の者。小・中学生などをいう。入場券の料金区分などに用いる。→大人小人

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「中人」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐じん【中人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 才能や能力などが中位である人。人並の人。尋常の人。
    1. [初出の実例]「天魔はよく憍慢をたよりとす。たとへば盗賊の中人(チウジン)を用ゆるが如し」(出典:発心集(1216頃か)八)
    2. [その他の文献]〔論語‐雍也〕
  3. 身分や地位、財産が中程度の人。中産の人。中流の生活をしている人。
    1. [初出の実例]「たとひ壱両の金をもて、二両の金に換て、半減の損失ありといふとも、これらの損失あらむは、中人より以上の事なるべし」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)下)
    2. [その他の文献]〔漢書‐文帝紀賛〕
  4. さまざまなことの仲介をする人。特に、なこうど。媒酌人。ちゅうにん。
    1. [初出の実例]「僧都来云〈略〉如此事、中人所申自被信用者也」(出典:小右記‐寛仁二年(1018)四月六日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「中人」の意味・わかりやすい解説

中人 (ちゅうじん)

朝鮮両班ヤンバン)と常民の中間に位置する身分。科挙の雑科に合格し,雑職という官職についている人およびその家系の人をさす。首都の中央部に多く居住していたので,そこから彼らを中人とよぶようになった。中央官庁通訳(中国語,モンゴル語,女真語,日本語など),陰陽学(天文地理),医学,法律,算学,音楽,絵画などの技術系官職に従事し,その職は世襲された。中人は一般には従六品までしか昇進できず,常民よりは上だが,両班からは差別された。庶孽しよげつ)(両班の庶子)も中人身分に属した。しかし中人は実務に明るく,経済的実力をもつものも多かった。開化思想を広めた劉大致,呉慶錫も中人であった。なお,広くは実務担当の下級官吏(胥吏(しより)・軍校)も中人とよばれた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中人」の意味・わかりやすい解説

中人
ちゅうじん
chung-in

朝鮮,朝鮮王朝 (李朝) 時代の身分。ヤンバン (両班)と平民の間の身分で,その名称は彼らの居住地域がソウルの中央部にあった関係から生じた。中人という身分ができたのは宣祖 (在位 1567~1608) 以後のことといわれる。科挙の雑科に応試し合格すれば官職につくことができるが,医術,天文,地理,通訳などの技術職 (実学 ) に限られ,位も制限されていた。彼らはその職を世襲し,結婚は必ず同一身分間で行なった。また中央および地方官庁の胥吏,軍校も広い意味で中人身分とみなされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の中人の言及

【噯∥扱】より

…中世・近世において紛争解決のために行われた仲裁・調停。
[中世]
 日本の中世社会の紛争解決手段として,一般的に行われたのは,紛争当事者が,中人(仲人)(ちゆうにん),扱衆,異見衆,立入衆,批判衆などと呼ばれた第三者(単数または複数)に解決をゆだね,その調停によって和解する噯(中人制)であった。この噯は,庶民,領主,大名など階層をとわず行われ,またその調停対象も,貸借・売買・土地あらそいなどの民事紛争,刃傷・殺人などの刑事事件,さらには合戦にまで適用されるものとして存在した。…

【和与】より

…和解の条件もしくは結果として,自発的な無償贈与が含まれていたために,この言葉が用いられるようになったとされている。公権力の行う裁判と無関係に行われる和与は,中人(ちゆうにん)などとよばれた第三者の調停によって成立するものが多く,この場合和与の効力は中人を含む地域社会の強制力によって保証されていたと考えられる。なお,いったん裁判所に提訴された紛争で,判決以前の段階で和与が成立するものも多かった。…

※「中人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android