亀甲船(読み)キッコウブネ

デジタル大辞泉 「亀甲船」の意味・読み・例文・類語

きっこう‐ぶね〔キツカフ‐〕【亀甲船】

李朝時代の朝鮮軍船。矢や敵の侵入を防ぐため、船体上面を厚板亀甲状に装甲した船。
日本近世前期の小型軍船で1のように装甲したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「亀甲船」の意味・読み・例文・類語

きっこう‐ぶねキッカフ‥【亀甲船】

  1. 〘 名詞 〙 近世初期、水軍の軍船の一形式。船体上面を亀甲状に楠板で装甲した百石積み以下の小型船。強行偵察、奇襲を目的とする。船首尾に鎖網を張った物見窓があり、前進後退を自由にするため船首尾に舵を設け、櫓、櫂の代わりに船体内に推進用車輪を装着して人力で回転させる。朝鮮戦役で相手の船に悩まされた日本水軍が模倣したものと伝えられるが、それよりはずっと小型で、またあまり実用化されず、江戸時代の諸大名の水軍ではほとんど採用していない。亀の子船。きっこうせん。〔全流舟軍之巻(1646)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「亀甲船」の意味・わかりやすい解説

亀甲船
きっこうせん

朝鮮、李朝(りちょう)時代の軍船。亀船(きせん)ともいう。矢や敵の侵入を防ぐため、上部を厚板(亀甲板)で覆い、亀甲状の形態をしている。亀甲船は15世紀初め倭寇(わこう)撃退用に考案されたが、倭寇鎮静後は忘れられていた。1592年(文禄1)、日本軍の侵入時(壬辰(じんしん)の乱=文禄(ぶんろく)の役)に、全羅(ぜんら)左道水軍節度使(せつどし)(司令官)李舜臣(りしゅんしん)が、接近戦に優れた亀甲船の特性に着目し、改良して海戦に使い、大勝利を収めた。李舜臣の改良船は長さ27~28メートル、幅8~9メートルで、亀甲板に薄い鉄板をかぶせて鉄釘(くぎ)で留めてあり、一面錐刀(すいとう)を植え、船首に竜頭、船尾亀尾を取り付けてその陰に銃眼を備えている。これ以後も亀甲船は改良を重ね、全土の水軍に配置された。

[吉田光男]

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改訂新版 世界大百科事典 「亀甲船」の意味・わかりやすい解説

亀甲船 (きっこうせん)

朝鮮,李朝時代の軍船。伏した亀のような外形をもち,木造だが表面をかたいふた板でおおった船。斬り込みを得意とする倭寇に対抗するため15世紀初に朝鮮で創案され,16世紀末に李舜臣が発展,完成させて壬辰・丁酉倭乱文禄・慶長の役)の実戦に用いた。船上には人の通る細い十字形の道と銃座を除く全面に槍と刀を上に向けてさしこみ,左右両舷やへさきに砲口,船首に煙幕の吹出口を備えていた。帆走のほか,左右の船腹から櫂を出してこぐこともできた。豊臣秀吉派遣の日本水軍に壊滅的な打撃を与え,戦局の転換をもたらすのに大きな役割を果たした。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「亀甲船」の解説

亀甲船(きっこうせん)

朝鮮王朝時代の軍船。船上を亀甲のように厚板で覆った形にちなんで名づけられた。船への斬り込みを得意とした倭寇(わこう)に対処するために15世紀に考案され,李舜臣(りしゅんしん)が改良して,壬辰(じんしん)・丁酉(ていゆう)の倭乱(文禄・慶長の役)の際に用いられた。船上の厚板には刀などをうえつけて斬り込みを防ぐようになっており,豊臣軍を大いに苦しめた。

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世界大百科事典(旧版)内の亀甲船の言及

【文禄・慶長の役】より

… 緒戦における日本軍の勝因としては,(1)当初,朝鮮の地方長官や軍隊の指揮官の多くが日本軍に抵抗せず,戦争を回避したり逃亡したこと,(2)日本軍は戦国時代を経て戦争になれていたうえ,朝鮮側にない鉄砲(鳥銃)を使用したこと,(3)朝鮮政府の封建的支配に不満を抱く民衆や軍卒の間に,朝鮮の支配層に対する反抗や日本軍への協力(附倭)が現れ,当初,民族的結集に困難が生じたこと,などがあった。しかし海上では,92年5月から李舜臣の率いる朝鮮海軍が活躍し,5月末には亀甲船(きつこうせん)も登場,92年7月の海戦で日本海軍は大敗北をこうむった。以後,日本軍は海上補給路をおびやかされるようになる。…

※「亀甲船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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