五重塔(仏塔)(読み)ごじゅうのとう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「五重塔(仏塔)」の意味・わかりやすい解説

五重塔(仏塔)
ごじゅうのとう

五重の仏塔の総称。木造、石造などある。仏塔はストゥーパを音訳した卒塔婆(そとば)、塔婆(とうば)の略称で、本来は仏陀(ぶっだ)の廟(びょう)であった。ストゥーパは墳墓の形を示し、円筒形の台基の上に墳丘をかたどった半球状の伏鉢(ふくばち)があり、その頂上に平頭(へいとう)と傘蓋(さんがい)を受ける傘竿(さんかん)が立てられる。仏教がインドから中国に伝えられて、その祠堂(しどう)は、浮屠祠(ふとのし)(仏陀の祠(ほこら))とよばれたが、この祠の中央には相輪(そうりん)をのせた重楼があったという。ストゥーパの台基が楼閣に変わり、伏鉢・平頭・傘竿が相輪に発展した。この建物はそれ自体が浮屠または浮図(ふと)の名で代表されるようになり、楼閣も三重あるいは五重でつくられるようになった。わが国で現存する最古の五重塔は奈良・法隆寺五重塔で、中心に立つ心柱(しんばしら)は根元が地中に掘り立てられている。心柱は奈良時代からは基壇上に立てられる。各重の大きさの縮減率は古代のものほど大きいので安定性に富む。もともと塔は内部が土間であったが、平安時代からは板敷きになり、周囲に縁が巡らされるようになる。京都東寺の五重塔は55.7メートルの高さで、最大の五重塔として著名である。

[工藤圭章]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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