付・附(読み)つき

精選版 日本国語大辞典 「付・附」の意味・読み・例文・類語

つき【付・附】

[1] (動詞「つく(付)」の連用形の名詞化)
① 離れないように付着するぐあい。また、調和するぐあい。「つきのいい糊(のり)」「つきの悪いおしろい」
※歪んだ自画像(1963)〈阿川弘之〉「羊日報とロンドン・タイムスはいくら何でもつきが悪すぎるような気が」
② 火の燃え出すぐあい。火つき。「つきの悪いマッチ」
③ ある人のそばに添うこと。つき従うこと。また、その人。おつき。つき添い。
暁月夜(1893)〈樋口一葉〉五「夫々(それそれ)に支度して老実(まめやか)の侍女(ツキ)を撰らみ」
④ てがかりになるもの。とりすがるべきもの。
※古今(905‐914)雑体・一〇三〇「人にあはんつきのなきには思ひおきてむねはしり火に心やけをり〈小野小町〉」
滑稽本浮世風呂(1809‐13)三「何のつきにおなぶり申ませう」
⑤ かっこう、様子。なりふり。また、体形や風貌。
※評判記・難波物語(1655)「目もとおもしろし、額(ひたい)のつき見にくし」
※卍(1928‐30)〈谷崎潤一郎〉五「顔はよう似てるけど、━体のつきがちょっとだけ違ふよってなあ」
⑥ 人との付合いの際の態度。また、それが相手に与える感じ。人づき。
洒落本遊子方言(1770)発端「『ここの女房は、あまり愛相が、よくないじゃござりませぬか』『されば其事ッた。ぜんたい、つきのわるい内だ』」
⑦ 芸事の師匠に弟子がつくぐあい。また、芸者、ホステスなどで、客がつくぐあい。
※落語・汲立て(1897)〈四代目橘家円蔵〉「何(ど)うも女のお師匠さんへ斗(ばか)りお手子(でし)の附きが早う御座いまして」
⑧ (試金石にすりつけて調べるところから) 金銀の品質。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第一六「岩かねのつきかわるくと取てやれ そこか縁つく袖の夕露」
⑨ 好運。「つきに見はなされる」
※ぽんこつ(1959‐60)〈阿川弘之〉まけとし「賭け事でいうつきが廻って来る前兆ではないか」
[2] 〘語素〙
① おもにからだに関係のある名詞について、そのものの様子の意を表わす。「額つき」「口つき」「手つき」「腰つき」など。
② 人を表わす名詞について、そのそばにつき従って世話する役であることを表わす。
※落語・星野屋(1893)〈三代目春風亭柳枝〉「又檀那には檀那付きの者が自然に出来ます」
③ 名詞について、そのもの・ことが付属していることを表わす。「利子付き」「三食付き」など。

つけ【付・附】

[1] (動詞「つける(付)」の連用形の名詞化)
① 帳簿や請求書に書きしるすこと。
(イ) 勘定書き。支払い請求書。書き出し。
※雑俳・一夜泊(1743)「附けを見て・しゃくりのとまる凉み床」
(ロ) その場で払わず、あとでまとめて支払うことにして帳簿にしるしておくこと。また、その支払い方法。
※続百鬼園随筆(1934)〈内田百〉大晦日「実はこの八十幾円の附けに対して、今日五十円だけ預ければ」
セルロイドの塔(1959)〈三浦朱門〉九「ここはね、つけがきくんだ」
② 手紙。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「此中(こんぢう)(ツケ)をよこした女よ〈略〉〈附とは手紙のこと〉」
③ その人についてまわる運。めぐりあわせ。
※洒落本・比翼紫(1801)三「こんなつけのわりいばんはねへぜア」
④ 妓楼などで遊客にきまって出す料理。
※随筆・麓の色(1768)二「客も料理よくする家をばつけのよき家と慕へば」
⑤ 自慢すること。〔譬喩尽(1786)〕
⑥ 理由。
歌舞伎与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)八「勘当受たおれがからだ、どふしてどふして二親が何のつけに逢ふものかへ」
⑦ 歌舞伎で、役者見得(みえ)を切る時、立ち回りや舞台への出入りの時など、その動作を強く印象づけるため、舞台上手(かみて)で、役者の動作に合わせて、板(つけ板)を拍子木様の二つの木でたたくこと。また、その拍子。東京では大道具方上方では狂言方が打つ。つけうち。つけびょうし。かげ。→付を打つ
※滑稽本・八笑人(1820‐49)四「ヲイおはやし爰で一つ付(ツケ)がいるぜ」
⑧ しそこなうこと。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
[2] 〘語素〙 動詞の連用形に付いて、いつもしなれていることの意をそえる。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉八「平生かかりつけの甘木先生を迎へて診察を受け」

ふ‐・する【付・附】

[1] 〘自サ変〙 ふ・す 〘自サ変〙 つく。したがう。付随する。「驥尾に付す」
[2] 〘他サ変〙 ふ・す 〘他サ変〙
① つけ加える。添える。
史記抄(1477)三「述賛で巻々の末に附したぞ」
② 渡す。預ける。与える。交付する。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉八「沙伯に付し、伴なうて家に帰らしむ」
③ まかせる。託す。ゆだねる。かける。
※文明本節用集(室町中)「天宝不於非仁 テンホウハヒジンニフセズ〔医学源流〕」
④ ③から転じて、心をとられる。かまける。
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉日本の社会運動「気分よき時は其の日の支払を許し二日も三日も緩慢に附し」

づけ【付・附】

[1] 〘語素〙 (動詞「つける(付)」の連用形から)
① 名詞について、それで物を付けることを示す。「糊(のり)づけ」「ハンダづけ」など。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「花川さままいる二三よりとうらかきそくゐ付ながら念を入て印判おしたるうへに」
② 敬意を表わす接尾語について、それを付けて呼ぶこと、その程度の待遇であることを示す。「さんづけ」「君(くん)づけ」など。
③ (日付の意) 日を示す数詞について、その日を発行または差し出しの日として記してあるものを示す。「一日づけの新聞」
※おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上「五月二日附(ヅケ)の一通」
[2] 〘名〙 芝居狂言の番付をいう。〔通人語辞典(1922)〕

づき【付・附】

〘語素〙 (動詞「つく(付)」の連用形から)
① 名詞について、そのもの・ことが付属していることを表わす。「条件づき」「注釈づき」など。→付(つき)(二)③。
② 人の地位を表わす名詞や、役職・勤め場所などを表わす名詞について、そこに所属することを表わす。「社長づき」「本部づき」など。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「兄の速男は国府台の砲兵連隊附で」

ふ‐・す【付・附】

[1] 〘自他サ変〙 ⇒ふする(付)
[2] 〘自サ五(四)〙 (サ変動詞から転じたもの) =ふする(付)(一)
[3] 〘他サ五(四)〙 (サ変動詞から転じたもの) =ふする(付)(二)

づ・ける【付・附】

〘語素〙 (動詞「つける(付)」が名詞と熟合して連濁した形) (下一段型活用)
① その物事を、他につけ加える意を表わす。「関係づける」「元気づける」など。
② その物事を、他に与える意を表わす。「位置づける」「性格づける」など。

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