出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸末期の流行唄(はやりうた)。文化(ぶんか)(1804~18)のころ伊予国(愛媛県)松山地方の染物が江戸でもてはやされ、その影響で「伊予節」も大流行した。本歌(もとうた)は松山の名物や名所を歌ったものであるが、弘化(こうか)・嘉永(かえい)(1844~54)には各地で替え歌がつくられた。たとえば江戸では「花は上野」、大坂では「堺住吉(さかいすみよし)」といった歌い出しの歌詞がそのまま曲名となり、「伊予節」という名が忘れられた時期もある。なお最盛期には、『はうたいよぶし』という書名の歌本が数多く出版されているから、「はうた」(端唄)の名称は伊予節によって広まったといえよう。今日、東京では端唄、地元松山では民謡として歌い継がれている。
[倉田喜弘]
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