日本民法上で単に〈無能力者〉というときは行為能力のない者をさし(例外として,民法714条には〈責任無能力者〉についての規定がある),未成年者,禁治産者,準禁治産者の3者を含む。第2次大戦後に民法が改正されるまでは,家族秩序維持のため妻も無能力者とされていたが,これは両性の本質的平等に反するので廃止された。そこで今日では,この制度の目的が,継続して意思能力の不完全なものを財産取引上で保護する点にのみあることが明確になっている。このように,無能力者本人の保護がその目的だから,無能力者が他人の代理人として行為することには,すなわち,その行為の効果がすべて代理される者に帰属し,代理人となった無能力者には不利益の及ぶ可能性が全くない形で行為することには,なんの支障もないのが原則である(102条)。ただし,代理のなかでも法定代理(法定代理人)においては,代理される者が代理人を選択できないから,代理される者を保護するための特別規定,たとえば無能力者は後見人になれないという規定(846条など)が存在することも少なくない。また,意思能力が継続して不完全であることに基づき,他人からの高度の信頼を前提とする法的地位に立つことの資格,たとえば遺言の証人・立会人,あるいは公証人になること,を否定されることもありうる(974条,公証人法12条1項1号,14条3号など)。
執筆者:須永 醇
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1999年(平成11)の民法改正(2000年4月1日施行)で導入された制限能力者制度(成年後見制度)の前に設けられていた行為無能力者制度(禁治産・準禁治産制度)の下で、単独で完全な法律行為をなしえない者をさす。新制度導入に伴い、差別的な印象を与えるとして「制限能力者」に改められ、さらに2004年には「制限行為能力者」に改められた。
[淡路剛久]
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…小商人はあまりに小規模な商人であるため,商業登記(商業登記を前提とする支配人の制度も同様),商号および商業帳簿に関する規定は適用されない。自然人は無制限の権利能力を有するので,無能力者(未成年者,準禁治産者,禁治産者)をも含めてだれでも商人となる資格がある。もっとも,無能力者はみずから営業活動をする能力(営業能力)は制限されている。…
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