非行少年(犯罪少年、触法少年、虞犯(ぐはん)少年)に対して行われる少年法上の処分。18歳未満の非行少年に対しては、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致の3種からなる(少年法24条)。少年審判では、福祉処分や刑事処分が相当な場合を除き、少年の非行事実(犯罪、触法、または虞犯の事実)と要保護性(非行性とその除去の可能性)が認められる場合に保護処分が決定される。結果として社会防衛的な機能も果たしているが、あくまでも少年の健全な育成を目的とした教育的・福祉的な処分であり、保安処分とは異なる。また、自由の制限が伴われることもあり、不利益処分としての性格も一部有しているが、非行のある少年に対する法的な非難として与えられるものではないので、刑罰と同様の制裁でもない。
保護観察は、保護観察官と保護司が主体となり、社会のなかで通常の生活を営ませながら、更生を促進しようとする社会内処遇の一形態である。保護処分として保護観察に付された少年は、遵守すべき事項を守らないなどの一定の要件を満たした場合、少年院や児童自立支援施設などに収容する保護処分に変更されることがある。児童自立支援施設または児童養護施設送致では、児童(18歳未満の者)を対象とした開放型の施設である児童福祉施設において、自立に向けた援助が行われる。これらの児童福祉施設では、保護処分によって送致された少年も、児童相談所を通じて措置された被虐待児童などとともに生活をすることになる。少年院送致では、施設内処遇の一形態として、閉鎖型の施設である少年院において矯正教育を受ける。
特定少年(18歳・19歳の少年)に対する保護処分は、6か月の保護観察、2年の保護観察、少年院送致の3種からなる(少年法64条)。2年の保護観察は、少年の行状が悪化した場合に、保護処分時に定めた1年以下の期間で少年院に収容することができる。また、少年院送致は、3年以下の期間で収容する期間を定めなければならない。これらの保護処分の種類および少年院収容期間は、「犯情の軽重を考慮して」定めるものとされる。
[小西暁和 2022年6月22日]
『近畿弁護士会連合会少年問題対策委員会編『非行少年の処遇――少年院・児童自立支援施設を中心とする少年法処遇の現状と課題』(1999・明石書店)』▽『猪瀬愼一郎・森田明・佐伯仁志編『少年法のあらたな展開――理論・手続・処遇』(2001・有斐閣)』
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… 調査の結果,家庭裁判所が,事件を審判に付することができず,または審判に付するのが相当でないと認めるときは,少年審判を開始しない旨の決定により手続を打ち切る(19条1項)。この中には,調査の過程で公式の〈保護処分〉に付するまでもなくすでに少年本人の自覚や周囲の状況からふたたび非行におちいる可能性がないと認められた事案や,保護的措置により再非行の防止が図られていると認められた事案が少なからず含まれており,この場合審判不開始の決定は単なる手続の打切りではなく,公式の処分を回避しつつ少年を早期に社会復帰させるという積極的な機能を果たしている。このほか調査の結果,児童福祉法の規定による措置が相当と認められた場合は,事件を知事または児童相談所長に送致する決定(18条)が,また16歳以上の犯罪少年につき,罪質および情状に照らして刑事処分が相当と認められた場合は,事件を検察官に送致する(これを〈逆送〉という)決定(20条)がなされて,事件は少年審判の手続から離脱されることになる。…
…少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正および環境の調整に関する保護処分を行うための〈少年審判〉の手続を定めるとともに,少年の刑事事件および少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とした法律(1948公布)。このうち,少年および成人の刑事事件に関する規定は,刑法・刑事訴訟法を補充,修正するためのものにとどまり,少年法の中核をなしているのは,少年審判すなわち少年の保護事件に関する定めである(その手続の概要は〈少年審判〉の項参照)。…
※「保護処分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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