南北朝時代の神道書。北畠親房の編になり,8巻。1337年(延元2・建武4),親房は伊勢国に赴いて後醍醐天皇方の勢力拡大のために奔走したが,同国滞在中に外宮の祠官度会(わたらい)家行に接して,伊勢神道の教説を学んだ。伊勢で《日本書紀》《旧事本紀》《古語拾遺》《新撰姓氏録》《延喜式》などを読み,神道書を読破した親房は,それらの重要な部分を抜書きし,家行の主著《類聚神祇本源》などの構成に倣いながら,39年(延元4・暦応2)ころに《元元集》を編纂した。その内容は,神道と神宮の部からなり,神道の部は天地開闢(かいびやく),本朝造化,神皇紹運,天神化現,地神出生,神器伝受,神籬建立,神国要道の8編に分けられ,神宮の部は内宮鎮座,外宮鎮座,天御量柱,御形文図,神宣禁誡の5編に分けられている。各編の冒頭には,親房の各編についての考えが述べられているが,基本的な資料を抜粋し配列したものである。親房は,この書に集成した神道の知識をもとに,神道の理論化を試みて《東家秘伝》を著し,神々に関する具体的な知識をまとめて《二十一社記》を書いた。その後親房は奥州の南朝軍を組織するために常陸に下ったが,その際《元元集》を携行したらしく,常陸の城中で《神皇正統記》を著すにあたり,本書を資料としたことがわかっている。本書の書名は,《倭姫命世記》に,神道の極致を示すことばとして〈元元入元初,本本任本心〉とあることによっている。
執筆者:大隅 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…他の4部には随所に儒仏老荘の混交がある。従来北畠親房の述作と伝えられている《東家秘伝》と《元元集》の2書も度会家の家説の色が濃い。このように鎌倉時代には有名な著書に仮託が多く行われた。…
※「元元集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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