兜跋毘沙門天(読み)とばつびしゃもんてん

精選版 日本国語大辞典 「兜跋毘沙門天」の意味・読み・例文・類語

とばつ‐びしゃもんてん【兜跋毘沙門天】

  1. ( 兜跋国に現われた毘沙門天の意とも、「兜跋」は「吐蕃」の訛ともいう ) 毘沙門天の一種。西域に起源をもつとみられる異形の毘沙門天像をいう。北方を守護し、外敵を撃退する力をもつという。宝冠を戴き、異国風な鎧を着し、左手に宝塔を捧げ、右手に戟を持ち、地天(女神)の両掌上に立つ。後世、鉢のような兜をかぶっているところから兜跋を兜鉢の意と解し、また兜跋を「とうばつ」とよんだためか、刀八、刀抜の意と解し、八口の刀を帯びた像がつくられた。兜跋毘沙門
    1. 兜跋毘沙門天〈京都府教王護国寺〉
      兜跋毘沙門天〈京都府教王護国寺〉

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改訂新版 世界大百科事典 「兜跋毘沙門天」の意味・わかりやすい解説

兜跋毘沙門天 (とばつびしゃもんてん)

西域の兜跋国に出現したと伝える,特異な形式の毘沙門天像に対する名称。兜跋国とはトゥルファン(吐魯蕃)であるともいわれるが諸説がある。形像は,左手の掌上に小塔をのせ,右手は地に立てた戟(げき)の長い柄をつかみ,地天と二鬼の上に立つ点に関しては通例の毘沙門天像と大差はないが,胴から膝下まで外套のように包む重厚な鎧の形式や,鎖帷子(くさりかたびら)のように緊密に編んだ鎧の素地に特色がある。この像は,中国唐時代に城門楼上に出現して城を守護した伝説(《毘沙門儀軌》)に見られるように,王城鎮護のために城門に安置された。日本における兜跋毘沙門天像は,平安時代前期に唐から請来した教王護国寺(東寺)像(国宝)を手本にするが,同像は京都の羅城門の上に安置されていたとの伝承がある。京都棲霞(せいか)寺(清凉寺)像,同橋本家像その他数例が現存するが,いずれも平安時代の作例であり,平安時代以外にはほとんど造像されなかったと推測される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「兜跋毘沙門天」の意味・わかりやすい解説

兜跋毘沙門天
とばつびしゃもんてん

仏法を守護する四天王の一つである毘沙門天の一異形。その姿は頭上クジャク標幟を示した冠をかぶり,目を大きく見開き,左手に宝塔,右手に鉾,西域風の甲冑を着け,両足は,左右に邪鬼を配した地天女の掌の上に直立不動の姿勢で立つ。この天王は,西域のトゥルファン (吐魯番) に化現したもので,のち唐に伝わったという。日本では,空海最澄が唐から将来して平安京羅城門上に安置し,今日では教王護国寺毘沙門堂に安置されている同像 (国宝) が古い。その後日本で制作されたものはこの像を手本とし,京都嵯峨の棲霞寺,滋賀の善水寺,福岡の観世音寺などのものがある。

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