漢字の書体8種をいう。一つは〈説文解字序〉に見える〈秦書八体〉で,大篆(だいてん),小篆,刻符,虫書,摹印(ぼいん),署書,殳書(しゆしよ),隷書(れいしよ)をいう(秦書)。一つは唐の張懐瓘(ちようかいかん)の《書断》に見える〈八体〉の語。たとえば,欧陽詢(おうようじゆん)を評して〈八体ことごとく能(よ)くす〉などの例がある。その細目については,とくに記述はないが,彼のあげる十体書の目の中から,古文と大篆を除いた籀文(ちゆうぶん),小篆,八分(はつぷん),隷書,章草,行書,飛白(ひはく),草書の八体を指すようである。籀文は石鼓文に見える書体。小篆は泰山刻石などに見える書体。八分については定説はないが,ここでは漢隷を指す。隷書は今でいう楷書。章草は史游の《急就篇》などに見える書体。行書は王羲之の《蘭亭序》などに見える書体。飛白はやや疑問であるが則天武后の《昇仙太子碑》の題額に見える書体。草書は現存する名品が多いが,ここでは偽帖といわれる《冠軍帖》をあげておく。
→書体
執筆者:辻本 春彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[書体分類の沿革]
(1)漢魏六朝 書体の分類が中国で最初に試みられるのは後漢時代で,80年ころ成立の《漢書》芸文志で,古文,奇字,篆書,隷書,繆篆(びゆうてん),虫書の六体をあげる。次に,100年ころの成立とされる許慎《説文解字》叙には,秦の八体として,大篆,小篆,刻符,虫書,摹印(ぼいん),署書,殳(しゆ)書,隷書をあげ,新(しん)の六書として,古文,奇字,篆書,佐書,繆篆,鳥虫書をあげている。およそ書体を分類することは,それを試みる時点にみられる文字資料を形態,新旧,記録素材,用途等によって分類したもので,その分け方の基準や呼称もこのころはまだ統一されていない。…
※「八体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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