中国,古代に発達した,政戦両略の軍事思想をさす。著名な《孫子》《呉子》や近年出土の《孫臏(そんぴん)兵法》のほか,ひろく《荀子》儀兵,《管子》兵法,《墨子》兵技巧書,《淮南子(えなんじ)》兵略など諸篇の軍略・兵技論や軍礼の《司馬法》など,秦・漢期の儒墨・道法・縦横家の諸思想と重なり合う。兵家の名称で諸子百家に加えたのは,前漢の図書6分類(劉歆(りゆうきん)《七略》)に始まる(四部分類)。しかも九流から独立して〈兵書略〉として分けたのは,国家の軍備を重視した反映である。漢初から戦国期の兵法書が整理され,前漢末の任宏(じんこう)が4分類して,政経・国防の総合戦略論の〈兵権謀〉,情勢に即応しうる用兵術の〈兵形勢〉,気象・地理などを測候する〈兵陰陽〉,兵器や武術(スポーツ)をあつかう〈兵技巧〉,計53家790篇,付図43篇を著録した(《漢書》芸文志)。現存の古い兵書は,魏武(曹操)が再編したものが多く,また北宋に編まれた《武経七書》は日本の戦国期に流行した。
執筆者:戸川 芳郎
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中国の春秋・戦国時代から漢代にかけて活躍した兵法家、軍学者の一群をいう。この時代はまさに弱肉強食の乱世であったので、富国強兵策を掲げて領土拡張に狂奔していた諸侯が、優れた兵家を求めたのは当然の成り行きであった。また戦略戦術を説いた兵書の出現も、時代の要請によるものであった。兵家としては、春秋時代における呉(ご)の孫武(そんぶ)、斉(せい)の大司馬穣苴(しばじょうしょ)、戦国時代における斉の孫臏(そんびん)、魏(ぎ)の呉起(ごき)(呉子)、漢(かん)初の張良(ちょうりょう)、韓信(かんしん)などがとくに有名である。兵書では、『孫子(そんし)』『呉子(ごし)』『司馬法』『尉繚子(うつりょうし)』『三略』『六韜(りくとう)』などがあげられる。宋(そう)代に至って、元豊(げんぽう)年間に、武官の軍事教育用のテキストとして、上記の六書に唐初の将軍李靖(りせい)の『李衛公問対(りえいこうもんたい)』を加えて『武経(ぶけい)七書』が編まれ、武人の経典と目されるようになった。これらのうち『六韜』『三略』『孫子』『司馬法』は早くから日本にも渡来し、平安前期の学者藤原佐世(すけよ)(?―898)の『日本国見在(げんざい)書目録』にその名を記録されている。
[篠田雅雄]
『竹内照夫著『東洋思想3 兵家思想』(1967・東京大学出版会)』▽『金谷治他著『中国古典文学大系4 老子・荘子・列子・孫子・呉子』(1974・平凡社)』
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諸子百家の一つ。用兵の道を講ずるものをいう。孫武(そんぶ),呉起(ごき),尉繚(うつりょう)らがこれに属する。その多くは兵を凶器とみて,兵法は凶器の運用を示すものではなく,これを避ける方法を説くものとした。
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…中国,魏晋南北朝に行われた世襲的兵士。軍戸,兵家,士家ともいう。後漢ころから一般郡県民による徴兵制がすたれ,兵民分離の傾向がみられるが,魏・晋以後の諸政権は,流民や降伏民などを兵籍につけ,軍事労働を世襲させた。…
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